組合員が働く協同組合で課題解決を ワーカーズコープ連合会の古村伸宏理事長が講演 JA全中のアカデミー②2024年12月5日
JA全中教育部主催の第4回オンラインJAアカデミーが11月22日に東京都内で開かれ、ワーカーズコープ連合会の古村伸宏理事長が「組合員が働く協同組合」をテーマに講演した。アカデミーはJA内外の優れた経営者らの講演・報告を柱に、JA・中央会・連合会の役員や職員がJAの将来ビジョンを考える機会としている。今回は会場参加20人、オンラインで40人が参加した。
組合員が働く協同組合で課題解決を ワーカーズコープ連合会の古村伸宏理事長が講演 JA全中のアカデミー①
アカデミーには約60人が参加
具体的な取り組みとして、広島市の協同労働モデル事業を例示した。広島市では10年以上前から「ワークショップなどを立ち上げ、スタートアップの資金も助成」してきた。担い手にはJA組合員の有志で作る「アグリアシストとも」も参加し「自営の仲間が農家の困りごとを積極的に解決」している。
京都府京丹後市は「協同労働促進事業として支え合い活動のソーシャルビジネス化の推進」を4年前に開始。「地域創生を住民が主体となって実現することを一番大事なエンジンとし、ビジネスにもしていく」ことを目指している。
今後の重要課題では、閣議決定された「高齢社会対策大綱」を挙げ「高齢期のニーズに応じた多様な就業などの機会の提供」を重視する。
移住者や地域おこし隊が活躍
協同労働による多種・多彩な実践事例も類型化して紹介した。一つ目は「(福祉や介護など)ケア領域。二つ目が「放置された山林や田畑、空き家を積極的に地域資源として活用する仕事」。三つ目に「形骸化された自治会の仕事を切り出し、自治会や地域の人と仕事をつなぐ」。四つ目が「本業を持ちながら労働者協同組合を作り、副業から始める人が多い」と見ている。最後に「移住者や地域おこし隊」による事業化だ。
古村理事長は「一人一人がバラバラな存在ではなく、一つのチームになる。何かをしてもらう組合員ではなくて、組合員同士がつながり、自分たちが何かをする。それを協同組合が組織的にバックアップするきっかけ作り」が最も重要な点だと指摘し、JAでも積極的な取り組みを呼び掛けた。
協同組合年契機に新たな地域課題解決を
JCA阿高あや基礎研究部主任研究員がコメント
阿高あや日本協同組合連携機構基礎研究部主任研究員
古村理事長の講演を受けて、日本協同組合連携機構(JCA)の阿高あや基礎研究部主任研究員が協同労働とJAの連携を深める立場からコメントを述べた。
最初に、古村理事長が第43回農協人文化賞特別賞を受賞し「自ら働く協同組合にJA側が立ち返る必要があるという(受賞)コメントにエンパワーされた」と紹介。講演について「経営に置き換えられた意見反映など強いこだわりを持ってスタートし、その後もマインドを忘れないことが非常に重要」とした。
JA全国大会決議との関係では「組合活動や助け合いの精神が労働者協同組合の共益と公益を結び付ける理念と強く一致している」とする一方、「労働者協同組合には福祉やSDGs(持続可能な開発目標)で弱者救済や脱貧困などをお願いしがち」と指摘した。
そのうえで、農業系の大学や学部に入学する学生が「農の包摂力や福祉力にも興味を持つ人が増えているのでは」と予想し、労働者協同組合が「若者の気運に受け皿として非常にマッチしている」のではないかとした。
また、阿高氏が在住する地元の福島市で、支店統廃合で使われていない事務所を学童保育で活用し、自治体も加わって「仕事おこしによる遊休施設の活用で連絡を取り合える関係に発展している」事例などを紹介。地域課題の農業経営支援や地域コミュニティーの再生に向けた期待を述べた。
最後に、前回のIYC(国際協同組合年)について触れた。福島での事例も、ワーカーズコープが2012IYC福島県実行委員会に入ったことが10数年後に「学童や保育園がJAと連携する契機となった」ことを紹介。最後に「JAの総合事業でやれることはたくさんあるが、連携が下手な局面をよく見る。労働者協同組合には地域密着型の取り組みや実働のノウハウ、インキュベートだけでなく、伴走支援も担っていただける機能が備わっている。IYCを契機に地域課題の新たな解決の道を切り開いてほしい」と結んだ。
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