JA営農経済事業支援を加速化 全中・全農・農林中金2025年12月17日
全中、全農、農林中金は12月16日、全国3連が一体となってJAの営農経済事業を支援する取り組み成果を取りまとめた。JA支援全国サポートチームによるJAと生産者による生産振興策の実現に向けた後押しや、業務量調査による課題の見える化で1万5000時間超の削減計画の策定などで成果が出ており、サポートチームは「農業とJAグループが抱える構造的な問題の解決に向け、取り組みの加速化を図っていきたい」と意気込みを話している。
11月28日に開かれたJA営農経済事業支援に関する意見交換会のグループディスカッション
全農と農林中金は、これまでそれぞれが行ってきたJA支援の取り組みを2025年4月から融合し、東京・大手町のJAビル内のワンフロア化し事務室で互い強みとノウハウを持ち寄って新たなJA支援を実践している。全中はこうした一体的なJA支援について県域での連携強化を促進するなど総合調整機能を発揮している。
具体的な取り組みは①業務効率化、②施設最適化、③生産振興支援の3つとこれまでに全国連の支援プログラムを導入していないJA向けに営農経済事業の課題を見える化し、改善策の策定支援を行う④JA営農経済事業活性化プログラムがある。

2024年度下期から試行導入を開始し2025年度上期までに業務効率化で2JA、施設最適化で2JA、生産振興支援で2JA、活性化プログラムで1JAの計7JAに支援を行った。現在は2025年度下期分の5JAに対する支援と来年度分の募集を行っている。
組合員との接点づくり-業務効率化
業務効率化は、業務量を調査を実施したうえでJA職員の余力創出に向けた効率化施策の検討と、創出した余力を伸ばしたい業務につなげるための成長施策の2点を検討する。
JAで今も紙やファクスによる業務も多く、職員数が減少するなかで一人当たりの業務量が増加、そのため組合員との接点が減少している。その結果、JAの事業量にも影響が出ている。
全国サポートチームは業務効率化の視点に「なくす」、「まとめる」、「やり方を見直す」、「簡単な方法を導入する」などを挙げる。たとえば、本店と支店で同じ業務を行っている場合は「なくす」ことを検討したり、配送ルートなど見直して「まとめる」ことも課題となる。また、会議もオンラインで開催するなど簡単な方法に切り替えるなどだ。
これまでに試行的に導入したJAではすでに目標として「営農指導員の業務割合の50%以上を農家訪問にあてる」ことを掲げていたが、業務量調査で実際には訪問活動は20%にとどまっていることが確認された。
そこで営農指導員の持つ業務を分類し他の職員に再配分することで営農経済部門全体で訪問割合30%不足に相当する1万5000時間を削減する計画を策定した。
試行したJAのなかには業務量調査データを活用して、JAの機構改革の検討材料とした事例や、業務効率化の取り組みを通じて集計、分析ノウハウをJAや県域にも伝えるため、県内での横展開、JA単独での再調査も可能となるなどのメリットも生まれる。
組織決定までの道筋整備-施設最適化
施設最適化の取り組みは米麦共同乾燥施設が対象だ。施設の老朽化にともなう維持・更新費用が増加する一方、生産量の減少にともなう稼働率低下で収支が悪化している。
全国サポートチームは、これを解決し、産地が将来の目標とする姿を実現するために施設最適化案の策定支援を行う。
とくに組織決定までのプロセス支援と施設整備による定量的な効果の算出などに力を入れている。
試行した西日本の広域JAでは、25施設のうち廃止は1施設にとどめ、3分の1から半分程度は荷受け拠点化して乾燥を行うCEへはJA負担で運搬するというサテライト方式として再編することにした。
これによって10年後の稼働率は現在の50%台から80~90%台へと上昇が見込まれると試算した。また、投資適正化効果として11億円の見込み、再編終了後には2000万円の事業利益改善も見込まれている。
具体的な行動を重視-生産振興支援
全国のJAでは地域農業振興計画を作成し地域の生産目標を設定している。しかし、目標を実現するまでの道筋は明らかでなく具体的な行動に結びついていないという課題がある。
そこで生産振興支援の取り組みでは具体的な施策とアクションプランを策定することに力を入れている。また、農家組合員に向き合う際にJA内で営農指導と資材、販売など各部門の連携が取れていないというJAも少なくない。そこで本店、拠点、各部課の役割を明確化するとともに、連合会と行政も参画してもらい、JAだけでは解決できない課題に対応する体制としたなどの事例がある。
いずれの支援策もいうまでもなく計画策定後の実践と進捗管理が重要で計画には進捗確認のための体制も盛り込まれている。
11月28日にはJA営農経済事業支援の取り組みをテーマに意見交換会を開催した。23県域から53名が出席し、事例発表と全国3連がJAの営農経済事業の課題に対してどのように役割発揮ができるかをグループディスカッションした。
事例発表したJAからは、生産振興支援の導入を通じて、目的の共有、情報交換、役割分担によってJA内の部門間連携が進んだことが報告され、JAグループの各連合会段階でも連携を進める必要性が強調された。
4つの取り組みについては独立したものではなく関連性が強い。施設最適化は産地の将来像を描く生産振興支援策が不可欠であり、業務の効率化によって生まれた余力は、組合員への出向く活動など接点の強化に活かすことが必要だ。農業生産基盤の維持と生産者の所得向上に向けてJA営農経済事業支援の取り組みがさらに各地で進むことが期待される。
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