JAの活動:新世紀JA研究会 課題別セミナー
【覚醒】受け皿は超党派で2017年7月24日
協同組合と政治
自民党安倍内閣の支持率が急落しています。内閣存続の危険水域である30%台に落ち、不支持が支持を上回りました。これを象徴するように、都議選で自民党は予想を上回る大惨敗を喫しました。背景には、自民党議員の資質を問われる問題のほか森友問題、加計学園問題等がクローズアップされました。 後者の問題は、国会審議を通じて多くの国民は官邸筋からいろいろな形での働きかけがあったものと思っていますが、安倍総理や菅官房長官は知らぬ存ぜぬを貫き、あげくは森友問題について、すべての問題・責任は籠池側あると問題をすり替えました。この対応に業を煮やした籠池夫妻は裏切られたと、都議選で安倍首相に罵声を浴びせかけました。
また法案審議でも安保関連法案や、近くは共謀罪法案の強行採決など、民主主義に反する目に余る強引な国会運営が行われました。農業関連でも、戦後のコメなどの優良品種の開発・普及に貢献した「主要農産物種子法」の廃止などの重要法案について、ろくに審議もなく採決が強行されました。農協改革も、周知のような協同組合否定の一方的な制度・法改正が強行されています。
このような事情から、今選挙を行えば自民党が惨敗することは必定であり、内閣支持率が急落した2009年の総選挙では、あっさり民主党に政権が移りました。しかし今回は、自民党政権はもう勘弁して欲しいという声が巷にあふれているものの、自民党に代わる政権の受け皿がないという悲劇的な実情があります。
ではなぜ野党が政権の受け皿になれないのか、かつて政権を取った民主党の対応にその答えがあります。民主党政権で最初の鳩山首相は沖縄の普天間基地移転の問題で、最低でも県外移転の腹案があると記者発表で大見えを切りましたが、半年以上経った挙句の会見で、やはり県外はないと実にあっけらかんと前言を撤回しました。
この一件に対して多くの国民は、国を守るという重要問題に対して一体民主党はどのような心構えを持っているのか強い疑念を持つことになりました。この疑問は次の菅首相の東日本大震災の原発事故対応で増幅されました。
すでにこの「覚醒」欄で指摘したように、現存する行政組織、会社組織、協同組合組織の三大組織は、人々の自己保全・競争・助け合いという人間の本性によってつくられているという認識に立てば、およそあらゆる政党は、人々の自己保全=国を守るということに対して確固たる信念と戦略・具体策を持ち合わせていることがその成立要件になります。
この点、先の民主党はその要件を満たしていないということが明らかとなり、国民は「ノー」のサインを下しました。したがって、今後自民党に代わる受け皿になる政党もしくはその政治勢力は、国を守るということに対して、現実的でしっかりした考え方を持っていなければならず、このことについて野党の猛省が求められます。
自民党がからくも政権を維持しているのは、他の政党に比べて国を守るということに対して執着心と現実的な考えを強く持っているからでしょう。このように考えれば、受け皿政党もしくはその政治勢力はこの問題に正面から向き合って行くことが求められます。
協同組合陣営に立つわれわれも国を守り安全を守るという、国のあり方に無関心であることは許されません。しかし、ここで注意すべきは、だからといって国を守るために軍備を強化せよというのではありません。国を守るためには、安倍首相のいうように憲法改正ではなく今の平和憲法を守るべきだと主張することは当然の意見です。国を守る気持ちは大切ですが、その方法は人それぞれに考え方が違います。
国を守ることと、どの政党を支持するかは全く別の問題です。そこで考えたいのは、協同組合と政治とのかかわりです。人々の自己保全・競争・助け合いという本性は、人間に備わっているものであり、本来的に政治に左右されるものではありません。
現在の協同組合原則の第4原則で、協同組合の「自主・自立」が謳われているのもこうした事情が背景にあるからと考えられます。協同組合にとって、政治は等距離のものでなくてはならず、特定政党に肩入れするのは協同組合としてとるべき姿ではありません。とくに安倍一強体制になってからの自民党の農業・農協つぶしの政策には目に余るものがあります。
時には協同組合として非自民・反自民の旗を掲げることは大変重要なことです。この点、JAは政治力の発揮が稚拙で、もっとうまく立ち回るべきではないでしょうか。民主党政権に懲りて自民党支持に回るのは良いとしても、何でもかんでも自民党頼みという姿勢は大変危険です。
これまでのTPP反対運動の抑制や中央会制度の廃止など、農業・JA潰しの政策遂行のお先棒を担がされたのは他ならぬわれわれが選んだ自民党の国会議員であったことを考えれば、今後のJAの政党・政治戦略は超党派の姿勢が重要と考えられ、候補者選びは政党だけではなく人物重視ということになります。
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