JAの活動:新世紀JA研究会 課題別セミナー
生産基点の事業次々 新しい視点でJAに新基軸【JA東西しらかわ前組合長 鈴木 昭雄 氏】2017年9月29日
課題別セミナーでは、JAのブランド、植物工場、レストラン付き直売所、繁殖牛牧場と、次々に新事業を打ち出した福島県JA東西しらかわの前組合長、鈴木昭雄氏が、新しい事業に取り組む意義と心がまえについて話しました。
◆ ◇
農協が、地域の産業である農業について提案し、どこまでリードできるか。農業の新しい形、企業的経営への転換、中・長期的な将来像の構築、そこに向かうための実行性とスピード感を持って実現するため、JA出資型法人の存在は必要だと考えています。
そのためには農協が直接農業経営することもあり、そもそも、企業が参入するというのに農協が農業できないというのはおかしな話で、農水省に抗議したことがあります。しかし、38歳で合併前の農協の役員になったとき、農業のことを知らない役職員が多く、それでよく農協の経営ができるものだと思ったこともあります。
農協の役目は、生産者からいかに農産物を高く買って、消費者にいかに安く売るかにあると考えています。この考えで米の全量買い取りを行ないました。当時、全農や経済連から総スカンを食いましたが、生産者の手取りを増やし農協の経営を安定させるには、その年とれた物は、その年に売る。これが商売の基本です。その代わり、販売先確保のための営業を徹底して行いました。
(写真)鈴木昭雄・JA東西しらかわ前組合長
つつましくても自分の生活が維持できて、安く消費者に食料をとどけると必ず見返りがきます。安く売るとお客さんが集まり、高く買うと荷物が集まって競って高く買ってくれます。こうして全国に販路が広がりました。しかし、そのとき大事なことは、取引先を1社にしないことです。トラブルがあったときのリスクヘッジです。そうした前提を考えながら農協を経営しなければならず、JA出資法人もこれを頭に入れて運営する必要があります。
東日本大震災、東京電力福島第一原発事故による放射能被害、風評被害から地域農業を復興させるのだという強い意志のもとで立ち上げたのが〝3本の矢〟、つまり植物工場と肉用牛繁殖モデル農場、それにレストランを備えた直売所です。
農業は自然が相手で、環境によって所得も変わります。これを克服できれば計画生産ができると考え、導入しました。植物工場は企業の多くが失敗していますが、それは農業を知らない者のこと。農業のプロであるわれわれがやってだめなら、国の政策としてやめたほうがいいと農水省と交渉し、震災復興補助事業等によって建設することができました。当初、マーケッティングの出遅れなどで赤字でしたが、いまは1か月に3000株生産のフル運転しています。工場の運営はJA出資型法人がその要となっています。
農協は地域の農業経営のモデルになるべきだという考えでつくったのが肉用牛繁殖モデル農場です。農協には営農指導員がいますが、自分で儲けたことのない者が儲かる方法を教えるというのはおかしなことです。特に畜産経営は難しい。いまなぜ、こんなに子牛が不足するのか。それは旧来の飼養方法が大規模経営になじんでいないからです。問題は畜舎の構造にあると考え、そのモデル的畜舎を建て、また経営・繁殖技術のモデルとして、みんなに真似をしてもらおうということです。現在100頭の母牛で24頭販売しました。平成28年に事業開始し、今年度から黒字になる見込みです。
また大規模畜産は、臭い、水の汚染などで地域の人の同意が得にくいという問題があります。そこで、JA出資のほか、地域住民や地権者、畜産に無関係の農家にも出資を呼びかけました。これはドイツ、オーストリアで見た風力発電を参考にしました。そこでは地域住民を出資者として、発電で出たお湯を販売しているのです。「これだ」と思いました。
農産物直売所「みりょく満点物語」は、東日本大震災後、農産物の安全性の発信と、地域活性化などを目的にオープンさせたものです。特徴は東京の銀座にあってもおかしくない雰囲気と創作料理、隣接する直売所の野菜を使うので、新鮮でおいしいことです。店の命名や、メニューなど運営の中心は女性です。農協の新しい事業には女性の感性を取り入れることが大事です。
直売所は農産物の販売に加え、牛乳加工所も設置。管内指定酪農家の原乳をつかったミルクスタンド、ソフトクリーム、プリンなどを開発し販売しています。「バージンミルク」もつくりました。3産前に限った牛乳で、「おいしい」と評判でした。ちょっとしたアイデア、思いつきが事業につながる事が多くあります。
思いつきはガソリンスタンドの運営にもあります。農協の6か所のスタンド全てが赤字だったので、全農に相談すると、1か所に絞るよう指導されました。しかし、地域では民間でちゃんとやっているところもある。そこで農協でプロジェクトをつくって検討し、当番制による週3日営業にしました。労働組合の説得が大変でしたが、コスト削減で黒字にすることができました。いまでは農協のスタンドが、地域のガソリン価格を抑え、プライスリーダーの役目を果たしています。
また、組合長になった当初、職員の質を高めるため、全員で富士登山を行いました。登る前、職員は不満を言っていましたが、8号目を過ぎたころから文句が聞かれなくなりました。職員の仲間意識を高めるとともに、常日ごろ仕事に懸命ですが、それ以上に「何のために生きているか」を、体でとらえて欲しいとの思いでした。その中での仕事です。これは組織体を運営する上での第一歩だと思います。
※このページは新世紀JA研究会の責任で編集しています。
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