JAの活動:新世紀JA研究会 課題別セミナー
信用リスクを軽減 運転資金は借り入れに【広岡隆明・農林中央金庫JAバンク経営指導部部長】2017年12月14日
・代理店化の鍵は営農経済事業
・選択はJAの判断で
・他事業へ人員シフト
JA信用事業の代理店化(信用事業分離)について、農林中金では平成31年5月を目途に組織討議を行い、この問題に対する態度を明らかにしたいとしています。そこで今回は、農林中金から全国的な取り組み状況の報告を発表してもらいます。
信用事業代理店については、「農林水産業・地域の活力創造プラン」(平成26年6月改定)のなかで、「農林中金・信連は単位農協の金融事業の負担を軽くする事業方式を提供することとし、単位農協から農林中金・信連への事業譲渡を行い、単位農協に農林中金・信連の支店・代理店を設置する場合の事業のやり方及び単位農協に支払う手数料等の水準(単位農協が自ら信用事業をやる場合の収益を考慮して設定すること)を早急に示す」と記載されています。
◆選択はJAの判断で
JAバンクとしては、信用事業代理店を「ブランド力のある地域農業を展開する等、独自性を持って持続的な営農経済事業の確立を図るJA、信用事業のリスク・負担を一層軽減し、営農経済事業を、より重点的に展開することを志向する場合の選択肢」として位置付けています。
JAは総合事業体を主体とすることが基本であり、代理店はあくまで選択肢と考えています。営農・経済事業の強化に向けた経営の在り方は、各地域それぞれの農協の置かれた立場で異なっており、代理店化は、農協が最適な組織体制を考える上での、事業の再編や合併等と同じ手段・選択肢のひとつであり、判断はあくまで個別のJAで行うものと考えます。代理店化を選択するJAがあれば、円滑な移行に向けて、サポートをしていく方針です。
改めて、信用事業譲渡と代理店の概要について説明します。信用事業譲渡とは、JAの信用事業資産である預け金や貸出金等と、信用事業負債である貯金等を連合会(信連または農林中金)に譲渡するものです。譲渡する資産よりも負債が上回る場合は、差額を連合会に支払うこととなり、逆の場合は連合会から差額を受け取ります。
信用事業譲渡後の事業運営については、JAが連合会の代理店となるか、連合会が自ら支店を出店するかの2つの方法があります。代理店はJAが連合会からの委託を受けて、JAの店舗でJA職員が利用者との間で連合会の貯金・貸出等の取引を行います。一方、連合会支店は、連合会が自ら店舗をJA店舗とは別に出店し、連合会職員が利用者と直接取引を行います。連合会支店の場合、JAは信用事業運営を連合会に委ねて営農経済事業に専念することになります。そのため、営農経済事業で全体収支の確保が必要となります。
職員についても、代理店の場合は一定の制約のもと、JA職員が代理店業務とJAの他事業を兼務することが可能ですが、連合会支店の場合はJAと連合会は別法人となるため、JA職員は連合会支店には関与しません。
代理店と連合会支店のどちらを選択するかについては、信用事業譲渡を行うJAにおける今後の事業の考え方や経営資源の配分等を勘案し、連合会と調整することになります。
◆他事業へ人員シフト
続いて代理店で期待される効果と留意点について説明します。代理店で期待される主な効果については、(1)信用事業運営にともなう金融規制や貸し倒れリスク等の軽減、(2)信用事業から営農経済事業への人員シフト等が可能となること、(3)引続きJA店舗が顧客窓口となり利用者の利便性が維持できること、(4)連合会からの代理店手数料により相応の収支確保が見込まれることなどがあげられます。
主な留意点としては、(1)事業性貸出などの一部貸し出しは代理店での取り扱いが認められていないこと、(2)代理店となっても顧客保護等のために必要な規制等については自ら信用事業を運営する場合と同様の規則が定められていること、(3)代理事業特有の規制遵守のための態勢整備が必要となること、(4)代理事業の収支は貸し倒れリスクなどが連合会に移転することからリスク見合いで得られていた収益部分は減少すること、(5)JA自身の設備資金や運転資金の調達は連合会等からの借り入れが必要となること、などがあげられます。
代理店手数料の水準ばかりがとりあげられますが、組合員に対するサービスがどうなるかも重要なポイントであり、メリット・デメリットを総合的に検討し、判断すべきものと考えます。なお代理店手数料については、各連合会から個別にJAに提示されるものであり、具体的な水準等については説明を割愛させていただきます。
各JAに対しては、信連または農林中金から、代理店スキームの詳細説明と代理店手数料の提示を行っています。今後の経営環境なども踏まえたうえで、代理店を選択するか否かを含めて信用事業の運営体制のあり方について検討し、農協改革集中推進期間である平成31年5月までに結論を得ることをお願いしています。
※このページは新世紀JA研究会の責任で編集しています。
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