JAの活動:新世紀JA研究会 課題別セミナー
マイナス金利で破綻 職員の意識改革が急務【池田正・JA土浦代表理事組合長】2017年12月14日
・代理店化の鍵は営農経済事業
JA信用事業の代理店化(信用事業分離)について、農林中金では平成31年5月を目途に組織討議を行い、この問題に対する態度を明らかにしたいとしています。そこで今回は、一段と厳しさが増す信用事業の環境の下で、JAから信用事業の現状と課題、代理店化についての意見を発表してもらいます。
先般の改正農協法、衆議院付帯決議に准組合員利用のあり方と地区重複の農協設立の再確認の文言がありました。農協の特徴は単位農協、県域連合会、全国連と連帯することで資金の半分以上の運用を任せることによって資金量の小さな農協でも経営が成り立ってきました。これが営農事業に優秀な人材を確保できる協同組合の特徴であり強みでした。
もちろん競争の原理は大切ですが、今後、同じ地域に複数の農協が存立した場合には農協同士の競争が激化して、隣の農協と研修会や情報交換などできなくなります。これでは地銀や信用金庫と変わらなくなります。
そうなると、規模は小さくて特徴のある農協でも存続できなくなる可能性が高くなります。現実に、当農協とエリアが重なっていた資金量が4倍もある信用金庫は県内1位の信用金庫に吸収されています。
全国でもコストリーダーで戦える農協は稀であり、例外的な農協です。1県1農協も進んでいますが、農林中金の資料でも明らかなように、農協の中では巨大とされる単協でさえも2兆円程度です。
なぜ今、全国でも有数な地銀が再編を急いでいるのか。関東では茨城県の常陽銀行と栃木県の足利銀行が合併してめぶきFG(総資産15兆3000億円)、横浜銀行と東日本銀行がコンコルディアFG(総資産17兆5000億円)となり、九州では福岡銀行・熊本銀行などが統合してふくおかFG(総資産16兆4000億円)など、このほかにも幾つも再編が進んでいます。マイナス金利の現況においては、メガバンクですら大胆なリストラを断行すると発表しています。10兆円以下の地銀ではコストパフォーマンスが悪く、健全な経営が厳しくなりつつあります。
先般、米の生産調整に向けた与党との対話集会がありました。多くの参加者の意見は国、政府が米政策を投げ出さずJAグループと協調して、しっかりした予算と生産調整を継続しなければ米価は下落するとの意見でした。
日本の食料自給率は38%です。世界の飢餓人口は10億人以上と言われています。地球の食料生産は限界を超えています。どの国も国際市場に影響されないように自国で安定した食料生産をしなければなりません。
さて、本セミナーのテーマである代理店化の問題ですが、われらJAグループは70年ぶりの大改革の改正農協法にどう対応するのか。政府が描くJA改革と、われわれが描く改革には大きな違いがあります。政府は専門農協として農業所得の増大を考え、われわれJAグループの多くは総合事業を維持して農業所得の増大と地域貢献を目指しています。
政府は信用事業を代理店化する施策として、当初29年1月にも予定されていた系統預け金のリスクウエートを現況20%から50%へと引き上げる可能性を示唆しました。これが導入された場合、多くの農協は立ち行かなくなります。
当JAでは体制整備を急務と考え、今年の10月に支店統合をブランチ・イン・ブランチ方式で期中に行いました。また、経営基盤の強化と安定化を図るため土浦・学園地域3JAの合併を、農協改革集中推進期間内である平成31年2月を目指しています。
農協が総合事業体として維持・発展できるか、農協改革集中推進期間は平成31年5月まで、生残りをかけた2年間になると思います。80%以上の農協は、資材や販売に対し事業見直しに取り組んでいるとの認識ですが、認定農業者アンケートでは30%しか評価されていません。
また、経営の合理化や新サービスなど経営努力が足りないなどの意見もあります。役職員の意識改革が急務です。本当に怖いのは、改革が進まず農協が組合員と地域から見放されることです。
農協が組合員の負託に応えるためには、まず強固な経営基盤の確立が急務です。それには、総合事業体を維持することが必要と考えています。総合農協を維持するには、体制整備と公認会計士監査に耐えられる内部統制、そして監査を受ける側の説明能力を高めるなど高いハードルがあります。
しかし、農協の強みは営農や経済事業を通して組合員との信頼関係、深い付き合いを持っていることで、これが貯金や共済事業に繋がっています。そして農産物直売所を利用する消費者が農協に魅力を感じて准組合員となり貯金や共済の事業にも波及しています。
組合員目線で自己改革に邁進し、総合力を生かして農業振興・農業者の所得増大に寄与したい。農協のあるべき姿は持続可能な農業と地域社会との調和、そして多様性を尊重して共に暮らし、生き、繋がる社会の創生を目指す協同主義の実践をしていくことです。
※このページは新世紀JA研究会の責任で編集しています。
新世紀JA研究会のこれまでの活動をテーマごとにまとめています。ぜひご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
第21回イタリア外国人記者協会グルメグループ(Gruppo del Gusto)賞授賞式【イタリア通信】2025年7月19日
-
【浜矩子が斬る! 日本経済】「政見放送の中に溢れる排外主義の空恐ろしさ」2025年7月18日
-
【特殊報】クビアカツヤカミキリ 県内で初めて確認 滋賀県2025年7月18日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 滋賀県2025年7月18日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 兵庫県2025年7月18日
-
『令和の米騒動』とその狙い 一般財団法人食料安全保障推進財団専務理事 久保田治己氏2025年7月18日
-
主食用10万ha増 過去5年で最大に 飼料用米は半減 水田作付意向6月末2025年7月18日
-
全農 備蓄米の出荷済数量84% 7月17日現在2025年7月18日
-
令和6年度JA共済優績LA 総合優績・特別・通算の表彰対象者 JA共済連2025年7月18日
-
「農山漁村」インパクト創出ソリューション選定 マッチング希望の自治体を募集 農水省2025年7月18日
-
(444)農業機械の「スマホ化」が引き起こす懸念【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月18日
-
【サステナ防除のすすめ2025】水稲害虫の防ぎ方「育苗箱処理と兼ねて」2025年7月18日
-
最新農機と実演を一堂に 農機展「パワフルアグリフェア」開催 JAグループ栃木2025年7月18日
-
倉敷アイビースクエアとコラボ ビアガーデンで県産夏野菜と桃太郎トマトのフェア JA全農おかやま2025年7月18日
-
「田んぼのがっこう」2025年度おむすびレンジャー茨城町会場を開催 いばらきコープとJA全農いばらき2025年7月18日
-
全国和牛能力共進会で内閣総理大臣賞を目指す 大分県推進協議会が総会 JA全農おおいた2025年7月18日
-
新潟市内の小学校と保育園でスイカの食育出前授業 JA新潟かがやきなど2025年7月18日
-
令和7年度「愛情福島」夏秋青果物販売対策会議を開催 JA全農福島2025年7月18日
-
「国産ももフェア」全農直営飲食店舗で18日から開催 JA全農2025年7月18日
-
果樹営農指導担当者情報交換会を開催 三重県園芸振興協会2025年7月18日