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JAの活動:今村奈良臣のいまJAに望むこと

第49回 第16回全国農林水産物直売サミット 第5分科会における私の講演の核心部分の紹介2018年3月24日

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今村奈良臣・東京大学名誉教授

 農産物直売サミット初日は、総会の後、5つの分科会に分かれて、講演と討議を行ったが、私は第5分科会で講演(問題提起)を行った。そのすべてを紹介するのは容易ではないので私の講演の核心部分のみの紹介をおこないたい。事務局より与えられたテーマは「農産物直売所は6次産業化のトップランナー」であったが、これにこだわらず広い視野にたって問題提起を試みた。

 

<食料・農業・農村基本法の核心>

 最近の農政の動向と展開方向を見ているとどうも本来のあるべき望ましい姿から大きく逸脱しているように思われる。つまり、農政の基本として依って立つべき基本法の精神を忘れ、かつ無視した政策展開になっているのではないか、という問題提起をまず第1に取り上げた。そこで、現行の食料・農業・農村基本法の基本と核心はどこにあるか、とまず問題提起をおこなった。
 私なりに食料・農業・農村基本法の核心を明快に示せば次の5本の柱から成り立っていると考えている。

 
1.農業は生命総合産業であり、農村はその創造の場である。
2.食と農の距離を全力をあげて縮める
3.農業ほど人材を必要とする産業はない
4.トップ・ダウン農政から、ボトム・アップ農政への改革に全力をあげる
5.共益の追求を通して私益と公益の極大化をはかる
 

 この基本の5項目は私が「食料・農業・農村基本法」が制定され、初代の食料・農業・農村政策審議会の会長に就任した1999年10月にそれまでの農政のあり方の反省も込め、新たな基本法にもとづく政策展開の基本路線を示すために提起したものである(なおそれらの経緯については『農業白書』50周年の記念の特集「年次報告50年を振り返って」(平成22年度『食料・農業・農村の動向』〈『農業白書』〉394ページ)に明記されている。
 それはともかく、この私の農政の基本路線の一角を大きく支えて推進しているのが、全国各地で展開している農産物直売所ではなかろうか、という私の問題提起に、参集者の多くは首を縦に振っていたように思えた。つまり、出席されていた直売所の皆さんは「生命総合産業の担い手」であり、かつ「食と農の距離を縮める」その接点に立ち活動しているのだという自負心に充ちた顔付きをされ、「共益の追求を通して、私益と公益の極大化」に日々励んでいるという自信に充ちた表情をされていることを壇上から読みとることができたように思った。

 

<農産物直売所は地方創生の拠点になろう>

地域創生の5ポリス構想(いまJAに望むこと)(画像)地域創生の5ポリス構想

 

 「地方創生」が政府により声高に叫ばれているが、さして大きな成果をあげてはいないのが現状である。
 しかし、農産物直売所は、全国各地で、農村地域でも、都市近郊地域でも、地方創生の拠点になっていることを、私は各地での実態調査の中で高く評価してきた。
 かねてより私は地方創生の構想と実践路線を示すために、別図に示したような「5ポリス構想」を提示してきた。
 「ポリス」(Polis)とはギリシャ語源の「都市」あるいは「拠点」ということを表す言葉だが、これを援用して「5ポリス構想」を提示して、地方創生の包括的かつ具体的方向と路線を示そうと考えた。

 別図は目で追って頂ければ誰でも理解できると思うが、若干の解説を行っておこう。
 (1)まず、別図の全体を見ていただきたい。Agro Polis(アグロ・ポリス)という表現で、農業の拠点をきちんと作り上げようという提案である。そのためには、地域農業の組織化や法人化などに取り組み、農業の活性化の路線を明確に打ち出そうと提言している。そのためには「大小相補」つまり大きな経営と小さな経営とが相互に補い合う方向や、「老中青婦」、つまり高齢者、中堅、そして青年や女性が色々の場で相互に部分的でもよいその補完し結合しあう関係を通して地域の活力を高めようという提案、さらに新規参入しやすい条件を作るとか人材育成を通じて、地域農業の活力を高めようと提案している。そして、それら多彩な試みと実践を通して多彩なネットワークを作ろういう提案である。このような多様な活動を通して「農業の拠点」つまり「アグロ・ポリス」を作り上げようと提案している。

 (2)次は「フード・ポリス」(Food Polis)であり「食の拠点」である。これは、言い換えれば「農産物直売所」あるいはそれに併設されている「農産物加工施設」「農家レストラン」などを指している。
 農産物直売所はとれたての新鮮な野菜、果物類、さらに米などの穀物類あるいは条件によっては鮮魚、肉類、あるいはそれらの加工品、惣菜類など多彩な食料品、さらには花卉類など、地域の特産品の数々を販売し、それを求めて消費者が訪ねてくる地域の拠点になっている。さらにそれらにとどまらず、飲食店、レストランなどを併設している直売所も近年非常に増えてきている。そこは単に地域の伝統食などを楽しむだけでなく、多彩な調理を通じて消費者家庭の食事の改善に寄与しているだけでなく、楽しい地域の人々の交流の場、情報交換の場にもなっているのである。
 つまり、私がかつて今から26年前に初めて世の中の皆さんに提起した「農業の6次産業化」の拠点になってきているのである。
 多くの方々はもう知っているとは思うが、「農業の6次産業化」ということについて改めて簡潔に紹介しておこう。
 大分県の日田市からさらに山の中に入ったところに大分大山町農協というのがある。この農協は農協創立以来、今日まで未だに一度も合併したことのない組合員700人弱の実に小さい農協であるが、「梅栗植えてハワイへ行こう」というようなスローガンを組合員皆が大唱したような貧しい山村であったが、そこで、全国で初めてと思われる農産物直売所「このはなガルテン」(木の花がるてん)を立ち上げたのである。「このはなガルテン」の「このはな」は古事記に出てくる「コノハナサクヤヒメ」からとったものだったし(コノハナサクヤヒメは絶世の美人で子だくさんだったらしい)、「ガルテン」とはドイツ語で、ドイツの都市ではやっていた「市民農園」をつぶさに見てきた大山町農協青年部の皆さんが、都市の消費者に来てもらおうとの発想のもとに、「コノハナサクヤヒメ」と「ガルテン」を勝手に結びつけて命名したのが農産物直売所「木の花ガルテン」であった。
 この創設間もない直売所を私は1週間農家に泊めてもらい、出荷する農家の方々、そして買いにくる消費者の皆さんの活動と行動をつぶさに調査するなかから、「農業の6次産業化」という理論が産み出されてきたのである。

 当初は

1次産業 + 2次産業 + 3次産業 = 6次産業

 

と定式化していたが、2年半後に

 

1次産業 × 2次産業 × 3次産業 = 6次産業

に変えた。
 その理由は農業が消えて無くなれば、
0×2×3=0、つまり、6次産業という図式は成り立たないということを強調したかったのである。あわせて、掛け算にすることにより、より多くの付加価値、つまり手取りをふやそうという意味合いもこめて掛け算にしたのである。
 このように、「食の拠点」を作り、それを核にして「地産・地消」、「地産・地食」から近年ではさらに、「地産・都消」、「地産・都商」へと展開するだけでなく、農村では古くから伝えられてきた「伝統食」や「祝い膳」などのすぐれた「食文化」を地域にだけではなく、都市地域へも広げてもらいたいと考えている。つまり、先祖から受け継がれた英知に充ちた伝統食や祝い膳を都市へも拡げ、新しい地域の拠点になってほしいと考えている。
 これらの総体を含めてFood Polisを地域創生の拠点につくりあげて欲しいと考えている。
 (以下、次回へつづく)

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