JAの活動:今村奈良臣のいまJAに望むこと
【今村奈良臣のいまJAに望むこと】第76回 JA-IT研究会第50回記念公開研究会の紹介と講話ならびに討議2019年2月2日
記念講演 1
「農山村からの地方創生」(そのⅢ)
明治大学農学部食料環境政策学科 小田切徳美教授
6.各地における実践
(事例1)広島県三次市青河自治振興会
地区の小学校を拠点に活躍する自治組織で公民館の機能も合わせ持っている活動をしている。その根底には、「地域のDNA」の形成は地域の拠点として存在しているある小・中学校にあるとの発想から、小学校の児童数を維持するためとの構想の実現のため、住民出資の住宅会社・㈲ブルーリバーを設立し活動を始めた。この住宅会社は、2002年に1人当り100万円で9人の出資のもとに設立され、現在、13棟(うち新築7棟、改修6棟)の住宅を作り、ここに39人の移住者が来ているという。なお2次移住を含めれば合計61名に達している。
さらに、輸送サポートにも取り組み、無償輸送で学童は安心して登下校できているという。このように、空き家改修対策なども含め地域への活力の源泉になっている。
(事例2)島根県雲南市波多コミュニティ協議会
この協議会はコンビニエンスストアを作り地域の拠点づくりとともに地域の活力を高める活動の推進母体である。
波多コミュニティ協議会というのは、この地域の15の自治体を範囲とする認可地縁団体である。
ここが主体となって「地域ビジョン」を作り、「防災」「買い物」、「交通」、「産業」「交流」の5分野に重点をおいて作成している。
その中で、地区内に唯一残っていた小売店が撤退することになり、地区の拠点となっていた「交流センター」の中に「マイクロスーパーマーケット」を開設した。
このセンターれは、全日本食品(株)と連携して豊富な品揃えを実現している。「交流センター」という地区の中の人の集まる拠点を生かし、生活必需品を供給することにより地域の活力の支えになっている。
さらに、ここに「サロン会」を作った。地区の人々が集まり会話や情報交換の場となっており、もちろん利用者には無償で利用できるし、また、老人も多いなか配達も無償で行っており、地域の拠点になっている。
(事例3)広島県安芸高田市川根地域振興会
以上のような各地区のすぐれた実践の紹介を踏まえつつ、広島県安芸高田市川根地域振興協議会の辻駒健二会長の次のような発言がこれからの地域振興にあたっては基本になると小田切教授は結ばれた。
「できることから、身の丈にあった活動を絶え間なく、コツ、コツとやっていく。その中からできたこと、始めたことへの愛着、誇り、生きがい、が少しづつ生まれてくる。私たちの活動はそれを繰り返してきたにすぎません。」
ちなみにこの川根地区は昭和47(1972)年の大水害を受け、その中からたくましく復興を遂げてきた地区であり、そういう意味でこの辻駒会長の一言は重い響きを持って聞こえるように思う。
<各地における実践―その小括>
(1)地域運営組織の課題
これについて小田切氏は次のように小括する。
地域運営組織の基本課題は「やらされ感」の発生を全力をあげて阻止することである。
そのためには次のような問題にきちんと対処することである。
〈1〉 設立段階で急がないことが重要で、「時間をじっくりかけて計画を作りあげること、関係者の意向をきちんとたしかめ熟成させていくこと
〈2〉 活動開始時の「小さな成功体験」が重要であり、そのためには、「小さな困りごと」への対応をきちんと行い、支援することから始めることである。
その典型事例は、新潟県糸魚川市「上南地域づくり協議会」の調査の中から見出したが、
〈1〉1回100円でいろいろな活動を始める。これは高齢者にとっても「遠慮」の出ない金額であることに留意したい。
〈2〉「包丁研ぎ」活動で協議会の真価が発掘された。生活必需品の包丁が研げない人々特に老人が多くなってきた中で、年間200丁もの包丁研ぎからこの組織の活動は広がっていったことを。紹介しておきたい。
本シリーズの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
今村奈良臣・東京大学名誉教授の【今村奈良臣のいまJAに望むこと】
重要な記事
最新の記事
-
【特殊報】チュウゴクアミガサハゴロモ 果樹園地で初めて確認 富山県2025年5月15日
-
【注意報】ムギ類赤かび病 多発リスクに注意 三重県2025年5月15日
-
"安心のお守り"拡充へ JA共済連 青江伯夫会長に聞く【令和6年度JA共済優績組合表彰】2025年5月15日
-
【地域を診る】観光・イベントで地域経済は潤うのか 地元外企業が利益吸収も 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年5月15日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】前回のトランプ政権との日米貿易交渉の失敗に学べるか(1)2025年5月15日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】前回のトランプ政権との日米貿易交渉の失敗に学べるか(2)2025年5月15日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】前回のトランプ政権との日米貿易交渉の失敗に学べるか(3)2025年5月15日
-
麦に赤かび病、きゅうりのアザミウマ類など多発に注意 令和7年度病害虫発生予報第2号 農水省2025年5月15日
-
パッケージサラダ7商品 を価格改定 6月1日店着分から サラダクラブ2025年5月15日
-
なぜ「ジャガイモ―ムギ―ビート」?【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第340回2025年5月15日
-
「イミダクロプリド」は農水省再評価前から自主的に制限 環境に調和した持続可能な農業へ バイエルクロップサイエンス(1)2025年5月15日
-
「イミダクロプリド」は農水省再評価前から自主的に制限 環境に調和した持続可能な農業へ バイエルクロップサイエンス(2)2025年5月15日
-
「JAグループ宮城 営農支援フェア2025」がラジオCMで告知 JA全農みやぎ2025年5月15日
-
いちごの収穫・パック詰め体験イベント開催 新規就農者研修も募集へ JA全農みやぎ2025年5月15日
-
就農希望者が日本の農業を"見つける" 2025年度の「新・農業人フェア」 農協観光と「マイナビ農業」2025年5月15日
-
JA三井リースが新中計「Sustainable Evolution2028」策定 課題解決で持続的成長目指す2025年5月15日
-
「NARO生育・収量予測ツール」にトマト糖度制御機能を追加 農研機構2025年5月15日
-
冷凍・国産オーガニックほうれん草 PB「自然派Style」から登場 コープ自然派2025年5月15日
-
独自品種でプレミアムイチゴ「SAKURA DROPS」立ち上げ 東南アジアの高級スーパーで販売 CULTA2025年5月15日
-
茨城の深作農園「日本さつまいもサミット」殿堂入り農家第1号に認定2025年5月15日