JAの活動:今さら聞けない営農情報
有機農業とは 4【今さら聞けない営農情報】第123回2021年10月30日
令和3(2021)年5月12日に決定された「みどりの食料システム戦略」では、有機農業の推進が大きな目標となっているようです。そこで、本稿では「有機農業とは何か」をひも解いており、その大本となる有機JAS規格について解説しています。前回までに第1条から第3条「用語の定義」まで終了し、現在、第4条「有機農産物の生産方法」を解説中です。
今回は、第4条の第1弾は、「ほ場」の続きです。
その前に、第3条の定義で示されている「ほ場」に関する詳細を把握しておく必要があります。有機のほ場では、「農業の自然循環機能」を有する必要があります。これは、農業生産活動が自然界における生物が織りなす物質の循環に依存しながら、それを促進する機能のこといい、緑肥のすき込みなどをイメージするとわかりやすいでしょう。
次に、土壌の性質に由来する農地の生産力、いわゆる地力を発揮させる必要があります。地力の補給は先の緑肥や堆肥など有機質肥料の投入などで行う必要があります。この規定があるため、水耕栽培やロックウール栽培の農産物や、れき耕栽培ワサビについては、たとえ有機栽培的管理を行っていても有機JASには適合しません。
またほ場には生産のために様々な資材が使用されますが、使用禁止資材の他、土壌にすき込むことを前提として使用されるシーダーテープや生分解性マルチ資材、融雪材も使用できません。加えて、育苗に使用されるチェーンポットなども、接着剤が使用されているものは、植え付け前に取り除かない限り使用できません。ただし、プラスチックマルチやビニールハウスに使用されるビニール、支柱、ネット、誘引テープなど使用後に取り除かれるものは使用可能です。
周辺からの使用禁止資材の飛来・流入防止措置については、防風ネットの設置や境界域での緩衝地帯の整備、ほ場の周りの溝堀りなど降雨時に慣行ほ場から雨水が流入するのを防止するといった対策が一般的です。それらが、有効に機能しているかどうかは、有機JASの認定機関が評価します。
また、有機農産物と認められるには、通算3年間以上継続して使用禁止資材等を使用せずに生産しなければなりませんので、慣行栽培を行ったほ場で有機栽培に切り替える場合は、慣行栽培を終了し有機栽培管理を開始した時点から最低3年間は有機栽培の基準に則った栽培を継続しなければなりません。
有機農産物を生産する場所としては、「ほ場」の他に「栽培場」と「採取場」があります。
「栽培場」は、きのこ類の培養場所、発生場所をいい、ほ場と同様に、周辺から使用禁止資材が飛来または流入させないための措置が必要で、栽培開始前2年以上の間、使用禁止資材が使用されていないことが求められます。
「採取場」は使用禁止資材等を3年以上使用していない休耕地や畦等を指し、そこで自生している山菜、きのこ、木イチゴなどが有機農産物になります。
(つづく)
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