JAの活動:今さら聞けない営農情報
有機農業とは24【今さら聞けない営農情報】第143回2022年3月26日
令和3年5月12日に決定された「みどりの食料システム戦略」では、有機農業の推進が大きな目標となっています。有機農業に取り組むあるいは拡大するためには、有機農業についてよく理解する必要があり、本稿では、その大元となる有機JAS規格について解説しています。過去3回(N0.137、No.138、No.139)に渡り、別表2の有機栽培で使用できる農薬等資材の概略をご紹介しました。現在、別表2で示された資材を使用する際の留意点を、別表2に掲載されている順番に沿って連番で紹介しています。
8.硫黄くん煙剤
硫黄といえば温泉街の硫黄臭を思い出しますが、あれは硫化水素(H2S)と呼ばれる水素との化合物の臭いであり、硫黄単体では淡黄色の固体で無味無臭の物質です。この硫黄は、うどんこ病やハダニ類に効果のある無機成分であり、その硫黄単体を作物に効果的に処理するためにいくつかの製剤が作られています。
その1つが硫黄くん煙剤で、商品名は「硫黄粒剤」です。硫黄は、熱を加えると成分が蒸散して空気中を漂い、うどんこ病やハダニ類に作用します。この蒸散させるための最適な温度が145℃であり、硫黄粒剤を使用する際には、周囲の温度に影響を受けずに安定的に最適温度を保ち続ける必要があります。このため、通常は本剤を使用する場合には、専用の電熱器を使用し、ほ場の面積に合わせて指定の台数(目安25坪に1台程度)を設置します(設置個数、硫黄粒剤使用量等は使用する資材の説明書や農薬ラベルを良く読んで決められた用法、用量を守ってご使用願います)。
電熱器を設置する手間はかかりますが、いったん設置後はスイッチのオンオフと硫黄粒剤の補給だけで施設内に入らずに防除が完了するので、省力化に役立ちます。ただし、使用時には電源供給のための100V電源の防水対策やくん煙時に硫化水素等の有毒ガスが発生する可能性があることから使用時や使用前後の入室方法などに注意が必要ですので、使用上の注意事項をよく守って下さい。
9.硫黄粉剤
有効成分の硫黄は、できるだけ細かくして作物に散布した方が効果も安定します。このため、細かく粉砕した有効成分の硫黄をクレイ粉末などの補助材にまぶした硫黄粉剤があります。製品には、硫黄が50%の「硫黄粉剤50」と硫黄が80%の「硫黄粉剤80」があります。それぞれで登録病害虫、作物が異なりますので、農薬ラベルを良く読んで正しく使用して下さい。ただし、散布中は粉立ちがひどく、粉剤が空気中を一定時間漂いますので、散布時には防護服・メガネの着用と飛散(ドリフト)対策が必須になりますのでご注意下さい。
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