JAの活動:シリーズ
【農協時論】みどり戦略考 具体策の加速化 環境整備重要に 八木岡努・JA茨城県中央会会長2023年7月3日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならないのか」を、生産現場で働く方々や農協のトップなどに、胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は、八木岡努・JA茨城県中央会会長に寄稿してもらった。
八木岡 努
茨城県農業協同組合中央会会長
2021年5月に『みどりの食料システム戦略(以下みどり戦略)』が策定され、翌年7月にこれを具体的に実行していくため『みどりの食料システム法』が施行されました。地方自治体もみどり戦略を進めるための基本計画を作り始め、第1号となった滋賀県をはじめ、茨城県でも今年3月に基本計画を発表しました。今後はこれらの計画に沿って具体的な動きを加速させていくことが重要になっています。
また世界を揺るがす出来事が次々に発生しています。中国は生活様式の変化により洋食需要が高まり、穀物の輸出国から輸入国に変わりました。そしてロシアによるウクライナ侵攻や地球温暖化による自然災害の多発、長引いたコロナ禍によって世界中で食料安全保障の見直しが叫ばれていることで、さらにみどり戦略の重要性が増し現実的な危機となっていきました。
こういった状況で、みどり戦略が具体化する中、いくつか気になることも出てきました。
一つは有機農業と慣行農業の対立軸が生まれる心配です。みどり戦略の目標は地球環境に配慮した持続可能な農業の実現です。有機農業を進められる環境が整備できているところはチャレンジしていくべきですし、そうでないところも全農いばらきで開発した『サステナミライZI』のような混合堆肥といった低コストで化成肥料の低減ができるような肥料を積極的に活用するなど、目標に少しでも近づける工夫をしていって欲しいと思います。また輸出作物には相手国の農薬基準に合わせる必要があり、自然由来の農薬の使い方などを含めた情報共有を進めていかなければなりません。同じ目標に向かって、相互理解を得られるコミュニケーション構築がより大事になってきます。
二つ目はスマート農業に関する誤解です。スマート農業は単にGPSを使った自動運転やドローンを活用することではなく、最終的にはデータを活用して大胆に農業を効率化していく手段です。スマート農業は高価すぎて投資の回収ができないとなれば本末転倒です。自分のほ場の特性、気候のリアルタイム変化、需要予測などをもっと活用できる技術や、有機栽培の場合は土壌微生物の活性状況を把握することがより重要になります。目的にあった土壌診断技術の開発などソフトウエア技術の開発を急ぎ、利用者には安価な格好でデータや技術を提供してほしいところです。栽培管理システム『ザルビオ』もデータ連携できる農機を増やしています。今後はできるだけ安価にデータ活用ができる環境を整えたいところです。そして一番重要なのは、効果の見える化です。自分が苦労してやっていることが、どれだけ環境に貢献しているかをきちんと数値化する技術開発を進めたいところです。やっていることの成果を実感できなければ絵に描いた餅となり、持続可能なものになりません。
最後の三つ目ですが、消費者意識を変えることの重要性です。みどり戦略の取り組みは農家だけでは達成できません。消費者側も意識を変え、食生活を見直していくことも大切です。例えば日々の食事を身近で手に入る食材中心の和食に変えれば、洋食中心の食事で28%だった自給率が、なんと63%にまで上昇するといわれています。日本人の食事がパンや肉中心になっているのに、小麦や大豆、家畜の餌などを輸入しているので食料自給率が38%でしかない。それならと言って米を作らずに麦や大豆、家畜の餌になるコーンを作る畑作に変えたら補助金を出すことで環境はよくなるでしょうか?
田んぼは生物多様性に貢献する多面的機能も有しているはずです。それなら、もっとお米を食べる工夫をしてみませんか? JAグループ茨城のYoutubeではお米を生米、米粉に変えてスイーツやパンとして食べるといった様子を多数配信しています。食事を少し変えてみるだけで、日本の農業はずっと環境にやさしいものに近づいていくはずです。そういった点で学校給食の無償オーガニック化はぜひ早期に実現していきたいと思っていますし、JAグループがこのけん引役を担っていくことが大切であると考えます。
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