JAの活動:農協時論
【農協時論】国を継ぐ為にー里山の風景守る施策拡充今こそ 神生賢一・JAやさと組合長2023年11月24日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を生産現場で働く方々や農協のトップなどに、胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は茨城県JAやさと組合長の神生賢一氏に寄稿してもらった。
JAやさと組合長 神生賢一氏
農は国の基である。関東平野の真ん中に位置する、東に口を開いた馬蹄形の盆地。そこが茨城県やさと農協の主な管内だ。筑波山麓に囲まれ、一戸当たり1ha程の耕地に水稲をはじめ柿、梨、栗などの果樹や野菜類などが栽培されている。酪農や養豚などの畜産はかなり少なくなった。施設園芸などは盛んで、観光イチゴ園やブドウ園なども季節にはかなりのにぎわいを見せる。いばらきフラワーパークに代表される観光施設と連携して、集客につながっている。
市外から訪れる人々が絶賛するのは里山の風景だ。平地に広がる水田や畑と丘陵地の果樹園。山すその集落とのコントラストは四季折々、装いを変えて素晴らしい。この景観をつくっているのは共存している大小の農家だが今、その存続が後継者不足や離農によって危機にある。問題は経営の維持が難しいからである。高騰する原材料に比べて生産物の価格は一向に上がらない。これでは担い手が育たないのが当然のことだ。
日本の農産物は様々な条件の下で作られている。コストも大幅に違う。それを同じシステムで市場の価格競争で値段が付けられ、それを元にスーパーマーケットなどで消費者に販売されるのが流通量の大部分を占める。生産の履歴が分かりやすく表示され、理解ある消費者が選んでくれるような仕組みづくりを農協が調整役となって早急に進めるべきである。数値化、見える化するにあたっては様々な意見を聞きたい。そして、再生産可能な価格での販売ができて農家所得が安定すれば担い手の確保は可能だと思う。
乾田化するのが難しい場所での稲作を支援して、国庫の補助金を受けた大型プロジェクトの耕作条件の良い場所ではスマート農業を推進し、できるだけコストを下げた輸出用米や飼料用米、麦、大豆の専用農地にするのが望ましい。実施している行政や団体にはポイント制で特典を与える事も必要だろう。
猫の目のように変わる水田農業対策ではなく、長期的な視野での財政措置を切望する。現在、行われている補助金制度では不十分だ。需給に応じた作付けを生産団体、流通業者、そして消費者の意思の疎通と知恵の出し合いで実現させる時期にきている。米に限らず他の農畜産物でも同様である。
地方への移住や観光と農業体験が一体化して関係人口を増やす事は活性化エネルギーとなる。第62回農林水産祭において内閣総理大臣賞をやさと農協の有機栽培部会が受賞した。25年前にまかれた1粒の種が芽を出し、葉を広げ大きな花を咲かせたのである。現在、30人となった会員の耕作面積は60haを超える。生産者の8割は県外からの移住者であり、前職も様々である。
その人たちは地域に溶け込み農協の女性理事として経営に加わったり、地区運営委員として改善のための提言をして、このやさとに新風を吹き込んでくれている。国のみどりの食料システム戦略の発表などを追い風に有機栽培が耕作放棄地の解消につながることを期待したい。
この里山の風景の中に生業があり、人々が交流して豊かな社会を築いていく事がやさと農協の目標である。「国は人なり」魅力を発信し、協力して地域の活性化に向かって努力していきたいと思う。
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