JAの活動:未来視座 JAトップインタビュー
"つながり"糧に地域創造(2)JAぎふ組合長 岩佐哲司氏【未来視座 JAトップインタビュー】2024年3月25日
昨年、「農協運動」の発展に寄与した功績者を表彰する第44回農協人文化賞を受賞したJAぎふの岩佐哲司組合長。「協同組合らしいJAをいかに作り上げるか」に腐心してきた。「協同活動が人をつくる」という考えの原点を文芸アナリストの大金義昭氏が聞いた。
"つながり"糧に地域創造(1)JAぎふ組合長 岩佐哲司氏【未来視座 JAトップインタビュー】
コミュ力を育て 農の多様性発信
大金 「事業そのものが活動であり、数字は活動の到達点(成果)だ」とも。
岩佐 そのように整理してはいますが、なかなか思うようには進みません。そこで職員のよりどころに「フレームワーク」を作りました。6JAが合併し、事業実績(数字)で早めにベクトルを合わせて「一つのJA」になれたのですが、副作用で「数字を達成すればいいんでしょ!」みたいな風潮になった。
ちょっと待てよと。私たちは何のために仕事をしているんだろう。お願い推進するだけのJAには、みんな飽き飽きしている。そうじゃないJAを創ろう。そんな風にみんなで議論して「フレームワーク」を作り、「私たちは組合員の期待に応えるために、支店が中心となり、総合的なサービスをもって、組合員の財産活用と暮らしのお手伝いをします」と取りまとめました。
大金 その成果は?
岩佐 なかなか。(笑)
大金 それで「恕」なんですか。(笑)
岩佐 楽天的なんです。常に「上段の構え」で脇が甘く、嫌なこともたいてい1日で忘れます。(笑)
大金 だから親しみやすく、近づきやすい!(笑)。「自分で考え行動できる職員」を求めていますが、要はコミュニケーション力でしょ!? 自己や他者(役職員・組合員・地域住民・死者など)との対話が求められる。死者との対話は「歴史を振り返る」ことかなと。
フレームワーク大切に
岩佐 おっしゃる通りなので、今度使わせてもらいます(笑)。うれしいことに、コミュニケーション力のある職員がだんだん増えています。「フレームワーク」が共通語になってきた。
大金 ご苦労も多いと思いますが、趣味とかは?
岩佐 寝ることくらいかなあ! 無趣味なんです。愛読誌『致知』に載っているいい話を読んで泣けると、心が浄化される。(笑)
大金 「草の根」の協同活動に重きを置くJAとして、「JAは構成員の一人ひとりが力をつけて支えるエンパワーメント組織」とも言っていますね。的を射ている!
岩佐 若い頃は難しいことを書いたり言ったりしてたんですけど、自分に酔っとるだけで相手には届かない。なので、なるだけ分かりやすく話すように心掛けています。「組合長の話は何言っとるかわからん!」とか言われるので。(笑)
大金 新設した「支援部長」はどういうポジショニングですか。
岩佐 JA界でいうと「地区本部長」です。4地区あるので4人います。「本店が命令を下す」のではなく「支店を中心に事業展開していく」と決めたので、本店と支店との双方向のパイプ役がいるじゃないですか。
全国組織や県連から単協に期待される目標を支店に割り振り、支店長は職員に割り振る。達成できないと再割りし、できると「よかった」。これだと結局、職員が一人で仕事をするわけですよ。
そういうあり方を変えたい。支店みんなで一人の組合員のことを考え、提案していきましょうと。「相談業務」を横軸に、JAの総合事業を通じて問題解決を図る。その具体的な検討の場が「提案ミーティング」なんです。試行錯誤しながら進めています。
大金 理詰めでも堅苦しくない感じですね。他の施策については?
岩佐 まずは、支店を改装した「ふれあいプラザ」です。統廃合に絡むケースが多いなかで、JAぎふでは本当に組合員さんに利用してもらうために作っていますので「本気度」が違う。
(一社)JAサポートセンターぎふは、地域で暮らす高齢者の「見守り活動」から「法定後見」まで一人ひとりの権利や財産などを守る活動の受け皿になっています。普通は「任意後見」で何年か実績を積まないと、裁判所が「法定後見」を認めませんが、「JAさんなら」とすぐに認めてくれました。
お互いさま いつも心に
「(株)はっぴぃまるけ」は障がい者に働く場を提供する特例子会社です。姉が小児まひだったこともあり、JAの役割ではないかと考えました。みそを製造・販売する本社は本店内に、農業部門はほ場の近くにあります。
障がい者の方とは、当初こそお互いにあいさつもぎこちなかったのですが、今は親身のあいさつを交わし合う仲になっています。障がいは「個性」や「特性」だから、多様な人との出会いは職員にも大きなプラスになっています。同じ効果はバレーボールチーム「リオレーナ」を運営し、選手たちが職場で一緒に働いている点にも言えます。
大金 いわゆる「ダイバーシティ」(多様性)効果ですね。生協などとの連携も積極的です。
岩佐 生協(コープぎふ)との包括連携協定は「協同組合間協同」です。理事会では異論もありました(笑)。しかし、JAの小さな産直店を廃止してコープ店の一角に出荷し、「おんさい広場」というんですけど消費者にも生産者にも喜んでもらえて、消費者の皆さんと組むのは間違いじゃないなと再認識しました。ゆくゆくは弁当作りも考えています。
行政の山県市とも連携協定を結び、今年は幼稚園の給食に有機米を提供します。地元では「山県ばすけっと」という食と農の拠点(店舗)も評判で、生産者やメーカーがそれぞれの思いを込めて地域の魅力を発信し、喜ばれています。
大金 ところで、尊敬する人物は?
岩佐 これがけっこう多いんです。政治家ならネルソン・マンデラ、思想家ならマハトマ・ガンジー、経営者なら稲盛和夫、生活の仕方なら土光敏夫です。欲張りですよね!(笑)
【インタビューを終えて】
みずから「新人類」の世代と称する1960年生まれ。軽妙・洒脱な言葉の背後から、揺るぎない信念の研鑽を惜しまない日々が垣間見える。「なくては困るJA」を目ざし、斬新なアイデア(着想)を果敢に実行して定評のある「異能の人」だ。
信長が「楽市・楽座」を発した城下。居城の金華山からは長良川や西は伊吹山から東は名古屋市街までの広大な眺望が息をのむ。「天下分け目」の要衝にあって、「みんなであの星に向かっていく」JAの「アップ・トゥ・デイト」に挑む自在で飄然(ひょうぜん)とした人柄が周囲を魅了する。
孟子が説く「強恕して行う。仁を求むること、これより近きはなし」を彷彿とさせる心髄に触れ、時を忘れそうになった。「孟母三遷」の故事に類似するような少年時代の逸話などについては、紙幅が足りず残念だ。(大金)
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