JAの活動:プレミアムトーク・人生一路
【プレミアムトーク・人生一路】佐久総合病院名誉院長 夏川周介氏(上)"若月イズム"目標と恩義 (2)2025年11月18日
学生運動華やかなりし頃、金沢大学医学部の学生として「政治的な季節」を体験したこともある長野県厚生連佐久総合病院名誉院長の夏川周介氏。地域包括医療に尽力し、健康な地域づくりに貢献した。「農民とともに」の旗印のもと「型破り」の歩みを文芸アナリストの大金義昭氏が聞いた。
高校の修学旅行で。阿蘇山をバックに
■地域との関係も深くなった!
それが若月先生の目的でもありました。その象徴である病院祭は1947年から始まり、年末のクリスマスパーティーにはGHQも来ていたとのことです。
■祭りごとが嫌いじゃないのは、「政(まつりごと)」にも通じる。
若月先生はどちらかというと「政」の方じゃないですか!(笑)。若月先生は酒が大好きでいくら呑んでも酔わないと思われていますが、そんなことはありません。家では呑まないですし。宴会などでは、呑んで酔ったふりをする!(笑)。酒癖が悪い私を見かねて「呑んでも酔わない方法」を教えてくれたことがあります。コップ酒を一気に呑んだふりをして、半分戻すと! せっかく教わりましたが、酒呑みの私は未だに出来ません!(笑)
■外科医長から、1994年に副院長になる。
副院長になる時が一番プレッシャーを感じました。若月先生のリタイヤと入れ替わりでした。当時48歳の私がいきなり指名され、プレッシャーを感じた私は、母に初めて泣き言を言ったのを覚えています。
■副院長になる時、若月さんから何か言われた?
全然!(笑)。「院政を敷くだろう」と見る向きもあり戦々恐々としていましたが、何も言わなくなりました。見事な引き際でした。
副院長だった9年間は一番働きました。医療ビッグバンの時代に入り、今までと同じことでは地盤沈下してしまいます。医療の明日を見越して病院運営をしなければなりません。
中心は臨床の現場です。佐久病院の運営方式は「5・3・2方式」といいますが、「5」の臨床が大きく変わろうとしている。「3」が外来で「2」が検診予防活動です。
若月先生の後、院長になった松島松翠先生は検診予防活動でずっとやってこられた方です。私と一緒に副院長になった清水茂文元院長は地域医療がメインでした。
病院医療をずっとやってきたのは私だったので、医療周りの課題が大きくふりかかってきました。それがあったから、その後の病院再構築にも役立ったと考えています。
病院機能評価の一環で診療情報管理にも取り組みました。他の病院からも参加を募って新潟の研究会で学び、2000年には長野県診療情報管理懇話会を立ち上げました。研修センターに日本のトップの講師を招いて毎年学習会を開催し知識の向上に努めました。心ある人が北海道からも沖縄からも来るような勉強会を続けてきました。国は後から「診療情報管理加算」を設けました。がん登録研究会は現在も継続しています。
救急ヘリ先駆
■病院の歴史の節目に重要な役割を果たした!
ドクターヘリを引っ張ってきたのは、他の人では無理だったでしょう。
佐久病院は長野県では地域医療のトップでした。救急隊員の教育も最初から研修センターで引き受けてきました。
救急医療へのヘリコプター利用は阪神淡路大震災の教訓でもありました。その後、病院への救急センター設置が国の方針になり、佐久病院の救命救急医療もセンターになりました。それを機に大幅な救急外来および一般外来の増改築さらに病棟増築をする中で、日帰り手術センターも立ち上げました。
また、屋上にヘリポートを作ろうと考え、まず基礎を打ちました。ほどなく、国の補正予算で「医療機関へのヘリポート設置に全額補助」となり、そこでさっと手を挙げ、ヘリポートを完成させました。
次はドクターヘリです。ついていたと思うのは、田中康夫さんが長野県知事になったことでした。田中知事は大学とか農協とかは嫌いでしたが、どういうわけか佐久病院は気に入っていました。
田中知事の下で長野県の救命救急医療を考える委員会ができ、東海大学の救命救急の教授が委員長に就きます。この委員会が「ドクターヘリは佐久病院に!」という答申を出しました。奇跡みたいな話です。
ある県で1機入れば、他のところにはドクターヘリは入りません。長野県は広いので、6年して大学病院にも入りましたが。全国の厚生連病院で入っているのは佐久病院だけです。
能登半島震災直後は富山から車で8時間近くかかりましたが、ドクターヘリなら40分でした。機動力が全然違う! 導入からちょうど20年たちます。
■副院長時代は「常在戦場」ですか?
そういう意識はあまりなかったですね。「戦場」では酒が呑めないじゃないですか!(大笑)
【略歴】
なつかわ・しゅうすけ 長野県厚生連佐久総合病院名誉院長、一財)日本農村医学研究所長、一財)農村保健研修センター長、医学博士。昭和20(1945)年8月滋賀県彦根市生まれ、昭和46(1971)年金沢大学医学部卒業、佐久総合病院研修医、昭和57(1982)年同外科医長、平成6(1994)年同副院長、平成15(2003)年同院長、平成22(2010)年同統括院長、平成25(2013)年同名誉院長。専門分野は消化器外科、健康管理、診療情報管理。
【余談閑話】
病床わずか20床の小さな病院が80年後には900床を有する巨大病院に。さらに診療所・老人保健施設・訪問看護ステーション・宅老所・ドクターヘリポート・農村医学研究所・保健研修センターなど多数の関連施設を擁する佐久総合病院グループの歴史は知られている。
病院が掲げたのは「農民とともに」という旗印であった。この旗印のもとに集まった多数の医療従事者の中心に、先達の若月俊一や松島松翠がいた。1971年7月、夏川さんは25歳でその輪に加わった。「人生一路」の夏川さんの歩みがこの夏から始まる。夏川さんの「型破り」の軌跡から、佐久総合病院の真髄に迫る物語である。(大金)
<次回につづく>
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