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JAの活動:農協時論

【農協時論・番外編】失われた10年 建議権削除響く 届かぬ現場の声 茨城大学教授 西川邦夫氏2026年2月16日

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「農協時論」は、新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならないのか」を、生産現場で働く方々や農協のトップ、研究者などに率直に論じてもらっている。今回は、農業・農協アナリストの福間莞爾氏の提起を受けて、「農協のあり方」をめぐって、宮城大学教授の三石誠司氏、茨城大学教授の西川邦夫氏とあわせ、三氏に相論・対論の形で寄稿してもらった。

〇茨城大学教授 西川邦夫氏

茨城大学教授 西川邦夫氏

本対論の福間論文では、2015年の農業協同組合法(以下、「農協法」)改正にまつわる興味深い論点を提示している。中央会制度の廃止と引き換えにした准組合員制度による事業利用規制の先送りにより、農協運動の「失われた10年」が到来したことである。それに対して筆者は、准組合員規制問題と表裏一体とされた、中央会制度の廃止をもって「失われた10年」を論じてみたい。

農協運動にとって特に重要だったにもかかわらず、案外見落とされてきたことは、改正前の農協法第73条の22の②に規定されていた、行政庁への建議権(「中央会は組合に関する事項について、行政庁に建議することができる」)が削除されたことであった(注)。それまでは、中央会が農協を代表して行政庁へ政策要求することが法的に担保されていたが、改正によって失われた。同時期には、農業委員会法の改正によって、農業委員会系統組織からも建議権が削除された。行政とは法律に裏付けられて運営される。法律の裏付けのない行政への働きかけは、ただの「申し入れ」や「お願い」に過ぎない。

それ以降、農業や農協現場の声を政策に届ける、組織的かつ制度的な枠組みは失われたと言える。残されたルートは、個人的なコネを生かして政治家や官僚に直接働きかけるのみである。

2015年農協法改正によって、日本における農業政策の形成システムは、法認された職能団体がその産業を代表して政府と政策協議を行う、ヨーロッパ型のコーポラティズムから、特定の利益を代表するロビイストが政策担当者に直接働きかける、アメリカ型の利益団体政治に転換したと言えよう。

利益団体政治はアメリカのトランプ政権で露骨に体現されている。政策形成への影響力を強めているのは、家族を含むトランプの古くからの知り合いか、巨額の献金や投資ができるテック企業の関係者である。無数の「その他」の者はトランプの派手な言動に歓喜するが、実質的には政策形成から排除されることになる。日本の農業政策において現場の声が届かなくなったという嘆きが聞かれるのは、「その他」無数の農業者の声を組織化してきた、農協や農業委員会によるルートが失われたためである。

それでは、利益団体政治の時代に農協運動の効果を最大化する方法とは何か。それは、農協運動(本稿の議論は、特に農政運動が対象になる)の費用対効果を明確に示し、閉ざされた政策形成に対峙していくことだろう。農政運動に投じられた資源が政策にどれだけ反映されたか、可視化をする必要がある。例えば、アメリカでは農業団体が農業者の投票行動の参考に資するため、候補者の様々な情報をホームページ上で提供することは珍しいことではない。翻って日本では、農政運動を担う全国農業者農政運動組織連盟(全国農政連)はホームページすら設けていない。今後の農政運動には、現場と政策の適切な分析にもとづいた方向性の提示と、それに沿った政党や候補者に対する客観的な評価の確立が求められている。

(注)1 この点の重要性を当時的確に指摘していたのは、増田佳昭であった。増田佳昭「歴史的にみた日本の総合農協の特質―法制度における行政との関係を中心に―」『農業と経済』第83巻第7号、2017年8月、pp,56―67、同「「農協改革」の3つのテーマ―狙い、到達点、今後の展開方向」『食農資源経済論集』、第69巻第1号、2018年4月、pp.1―11、を参照。

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