JAの活動:農協時論
【農協時論・番外編】失われた10年 准組問題は途上 農業振興が原点 農業・農協アナリスト 福間莞爾氏2026年2月16日
「農協時論」は、新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならないのか」を、生産現場で働く方々や農協のトップ、研究者などに率直に論じてもらっている。今回は、農業・農協アナリストの福間莞爾氏の提起を受けて、「農協のあり方」をめぐって、宮城大学教授の三石誠司氏、茨城大学教授の西川邦夫氏とあわせ、三氏に相論・対論の形で寄稿してもらった。
農業・農協アナリスト 福間莞爾氏
JA運動は、およそこの10年間にわたって「自己改革」と言う名のもとに行われました。この自己改革運動の最大の問題は、JA運動を主導する全中が2015年の農協法改正という現実を受け入れていないか、もしくはそれを受け入れたくないという願望のもとに行われてきたことにあります。
全中が農協法改正を踏まえた自らの改革案を提案できなかったという意味で、農協法改正後2025年までの期間はJA運動にとって失われた10年と言ってよいでしょう。一方で、中央会制度の廃止は、間違いなく第二次大戦後におきた農協運動史上最大の問題にかかわらず、農協関係者および研究者の間で、ほとんど本格的な論評・総括が行われないのはどうしたことでしょうか。このこと自体、今後の大きな研究課題と思われます。
中央会制度が廃止され、2019年9月末をもって一般社団法人に移行したのにもかかわらず、全中では変わりなく創立71周年(2025年)の祝賀行事が行われており、否定されたJA運動としての地域組合路線も変わることなく継続中です。
JAグループは、早く意識転換を行って問題を直視していくことが何よりも重要です。意識転換の中心的課題は、農協運動の転換、つまるところ新たな農協論の確立であると考えられますが、まずはJAの准組合員問題について、その一端を述べてみます。
この問題は、2025年11月15日開催の農協研究会でも「准組合員問題にJAはどう正面から向き合うか」として取り上げられています。准組合員問題は前回の農協改革での最大のテーマであり、最終的に政府から中央会制度廃止をとるか准組合員の事業利用規制を認めるかの王手飛車取りをかけられ、当時の万歳章JA全中会長は中央会制度の廃止をのまざるを得ない立場に追い込まれました。
それにしても、2014年5月に政府の規制改革会議(農業ワーキングG)から准組合員の事業利用は正組合員の事業利用の二分の一を超えてはならないという提案が行われた時のJAグループの狼狽ぶりは尋常なものではありませんでした。
結果的には、准組合員の事業利用規制を免れるために、中央会制度の廃止がそのいけにえとして差し出されることになったのですが、それほどまでに准組合員の事業利用規制問題はJAグループにとって重たい課題でした。
その後の5年間の見直し期間において、全中は専ら政治力を頼りに准組合員制度を守ることに全力を挙げることになりますが、その考え方は既定方針としての地域組合論に基づくものであり、それを象徴するのが農協の地域生活インフラ論でした。地域インフラ論とは、JAは農業振興だけでなく信用・共済事業、購買店舗、ガソリンスタンドなどの生活事業を通じて地域振興の役割を果たしているというものです。
地域インフラ論の問題点については別に述べますが、いずれにしても見直し期間を通じて得られた結論は「准組合員の意思反映」というもので、これをもって地域組合論者の多くは、准組合員問題について決着したという見方を示しているように思われます。
だがこうした認識は、事態を大きく見誤ることになるでしょう。2015年の農協法改正では新たにJAの事業をJA以外の別組織に移管することが盛り込まれています。それ故、JAは農業振興以外の別の目的を持つという地域組合論の立場で准組合員問題に対処する限り、それはいずれ、事業利用規制はもとより農協分割につながりかねない危うさを持っています。
「喉元過ぎれば熱さ忘れる」の意識は極めて危険であり、農業振興という原点に帰った新たなJA理念に基づく准組合員対策はすべてこれからと考えるべきです。問題の核心は、准組合員に農・食・環境保全の面から農業振興の一方の主役になってもらうこと、またJAがどれだけ准組合員を信頼できるかにかかっています。
これらの取り組みは、JAにとってまさに未踏の分野への挑戦で、新たな取り組みにとって既存の優良事例は参考にならず、むしろ障害になることを関係者は認識すべきでしょう。
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