JAの活動:第58回JA全国女性大会特集
【インタビュー】 「"つながっていくものを作る" それが今のテーマです」 JA鳥取中央フレッシュミズ・副会長 山田繭子さん2013年1月23日
・バイタリティーの原点
・人生観を変えた出会い
・“つながること”へのこだわり
・地域で輝く女性を育てる
・女性会活動への準備段階
フレッシュミズは組織発展のための課題などを共有しあいながら仲間同士の交流をはかるため、毎年「フレッシュミズ全国集会」を開いている。今年、その実行委員長を務めたJA鳥取中央フレッシュミズ副会長の山田繭子さん。
「フレッシュミズは誰もが主役になれるチャンス。"フレッシュミズ"とは今の自分にとってどんな存在なのか、未来のフレッシュミズに何を残すことができるのかを一緒に考えていきたい」――。
堂々としたあいさつからあふれるフレッシュミズへの思いと輝く表情が印象的だった。
フレッシュミズで積極的な活動をするようになったのはここ最近だというが、山田さんにとっては自分を輝かせる存在となった。そのフレッシュミズとの出会いについて聞いた。
私を変えたフレッシュミズとの出会い
JA鳥取中央フレッシュミズで輝く山田繭子さん
◆バイタリティーの原点
山田さんがJAの女性組織に出会ったのは11年前。専業農家の夫と結婚し、女性会に入っていた姑から「あなたも入りなさい」、そう誘われたことがきっかけだった。嫁いだ集落は合併前の旧JAとうはくのエリア、フレッシュミズ的存在のグループ活動はいまほど活発ではなかったが、隣近所にまだ知り合いがいなかった山田さんは夫の友人の奥さんに連れられ活動に出かけるようになった。
その後、JA鳥取中央への合併を機に2007年、フレッシュミズ部会が発足。山田さんは現在、約80人が在籍するフレッシュミズ部会の副部長と4ブロックあるうちのひとつ、琴浦ブロックのブロック長を務める。
家庭では小4、小1、保育園児の娘3人の母親だ。子育てに追われながら、二十世紀梨、白ネギ、ブロッコリー、芝などを主に栽培している家業の手伝いと、「品揃えが多い方がお客さんも喜ぶ」と、定休日の元旦以外は毎日、直売所に野菜や加工品を出荷している。また、地区の「学校給食グループ」に所属し学校給食への野菜の提供、PTA役員、そして「実は最近、ピアノも習い始めたんです」と多忙な日々を送っている。
山田さんのこのバイタリティーの原点はフレッシュミズ活動にあった。「フレッシュミズに入って変わったことは何ですか?」と聞くと、「いつも何かできないか、何かにつながらないかと考えるようになったことですかね。外へ外へと向かって行動するようになりました」。
◆人生観を変えた出会い
そのきっかけをつくってくれたのが同JAのフレッシュミズ部会を立ち上げた初代会長の杉川一二美さんだった。
3年前、杉川さんに当時JAえひめ南のフレッシュミズ部員だった山下由美さんがオープンした米粉パン専門店「手作りパン工房みなみ」の現場を見てみないかと誘われた。山下さんは今から9年前、「中国四国地区JA女性組織フレッシュミズ交流集会」を企画し、中四国で活動するフレッシュミズの交流基盤を築いた第一人者。杉川さんと山下さんもその実行委員を通して知り合った。
1泊2日の愛媛への視察―。山田さんにとって3人の小さな娘をおいて家を空けるということは一大決心だったが、米粉パンへの興味と、青壮年部に所属していた夫の活発な活動をどこかいいなと感じていた思いが後押しした。この出来事が「最初は小さい子どもを連れてただ楽しんでいる程度でした」という山田さんのフレッシュミズ活動に対する意識と自分の人生観にまでも大きな影響を与えることになったという。
それまでみんなで集まってやりたいことをやる―、フレッシュミズの活動はそれだけだと思っていたというが、農作業の先に加工、販売という目的をつくることで農家女性の活動の場を広げようと米粉パンの工房を始めた山下さんの話を聞き、「一つひとつのことに対して何のためにするのか、その先に何があるのかをきちんと考えて活動していく気持ちと姿勢の大切さに気づきました。それから私も『こうありたい』という自分の未来像を描いてみようと思いました」。
◆“つながること”へのこだわり
この意識の変化が現在の活動につながっている。山田さんの描く未来像は地域のなかで得意分野を発揮し、地域の元気につながるヒロインになること。それを実現するため、必ず自分のなかに「テーマ」を持っている。現在のテーマは“つながっていくものをつくる”だ。
「普段の生活でもフレッシュミズの企画を立てるときも、このテーマを軸に行動しています」。
たとえば、「おいしいランチを自宅でもつくれたら!」、と企画した地元の人気レストランシェフに習う料理教室には自分たちが畑でつくった野菜を持ち込んだ。身近な野菜の新たな調理法を学べ、そのやりとりの中でシェフたちが求めている野菜を知ることもできる。主婦であり生産者であるフレッシュミズにとってメリットがたくさんつまった、地域と「つながる」いい機会になっている。
こういった「つながり」を山田さんは日常の中でも大切にしている。
「変わった野菜ひとつがお客さんとの会話に“つながる”んですよ」と、日課となっている直売所に出荷する野菜にも一工夫。ダイコンなら中国ダイコンや赤ダイコンを出荷することで「これは何?」「どうやって食べるの?」と売り場で生まれるやりとりがうれしいと話す。そんな少し目新しい野菜づくりに今、夢中だ。
また、「ニンジンなら葉っぱ付きで出荷するだけでも違います」と、ちょっとしたことで人とのつながりが生まれる商品に変身させる発想も教えてくれた。
(写真)
省エネ、節電を学びながらIHクッキングヒーターを使った料理講習会
◆地域で輝く女性を育てる
フレッシュミズに入って家と畑の往復、たまに子どもの学校行事…という生活から同じ境遇の人たちと知り合い、交流できたことが何より大きな収穫だったという山田さん。中国四国地区の交流集会をはじめ、県内外のメンバーとの出会いに刺激を受け、地域で活動の場を見つけ、広げていった。
「テーマがぶれなければ個人も組織も活動はぶれません。フレッシュミズで将来自分がなりたい像を作っておくことやテーマを決めておくことがその後の豊かな人生につながると思います」。
そのため、フレッシュミズ活動を地域のリーダー育成の場というよりも、一人ひとりが自分のなりたい姿を実現するための場にしたいという。自分自身がフレッシュミズの先輩から刺激を受けたように、“フレッシュミズに入るとこうなるんだ”という「未来像」を描くきっかけとして捉えるようなメンバーを育てていきたいと考えている。
◆女性会活動への準備段階
フレッシュミズには「概ね45歳まで」という年齢制限がある。山田さんも3年後、フレッシュミズを卒業するが、フレッシュミズを“年齢が過ぎれば終わり”ではなく、女性会という大きな組織活動に加わるための準備段階だと山田さんは位置づけている。
「地域の食と農を次世代につなぐこと」を重視している山田さんにとって「女性会」は地域の中でとても大きな存在だと感じている。
女性会の中には地域で昔から伝わる伝統食の技があるからだ。味噌づくりにしても細かな分量が書かれたレシピで伝えられたものではなく、「感覚」と「経験」で受け継がれたもの。
しかし今、地域の中で味噌づくりや郷土料理の伝承は薄れてきていて、給食でしか食べる機会がない子どもが多くなっているという。そのなかで「私たちは地域の伝統を先輩から子どもたちへつなぐ重要な役目を担っている」と、これまで女性会の先輩が守り、受け継いできた加工品や郷土料理をしっかり教わり、同じように後世に伝えられるまで技術を磨いておく、「フレッシュミズはその準備期間」だと話す。
そう考える山田さんは食、農、子育ての3つを活動の基盤としながら未来像を描くこともフレッシュミズの役割だと考えている。
「地域」は自分の子どもが育つ場所。その視点で地域をどういうふうにしたいか、どういう環境で子どもたちが育ってほしいか、そう考えながら描いた自分の未来像の実現とともに地域づくりにも関わっていきたいというエネルギーが山田さんから感じられた。
(写真)
ねんどを使ったマグネット作りに挑戦
◇ ◇
JA鳥取中央・福山巌組合長
「次代へつなぐ協同」の役割に期待
フレッシュミズは上の世代から習った地域の食文化や伝統を次世代に継承していく縦のつながりと、“子育て”という共通のキーワードによって普段JAと付き合いのない人たちとの横のつながりも持っている。まさに縦と横の重要な位置にいます。
子育てにはいろいろな課題がありますが、子どもに安全なものを食べさせたいという「食」のテーマは母親みんなに共通していることです。地域に伝わる食文化を学ぶことは、やがて家族の絆や地域の絆につながっていくことなので、フレッシュミズが果たす一番の役割はまさに「次代へつなぐ協同」だと期待しています。
大きな運動論ではなく具体的な活動を通して子どもや家族、隣近所の人に対する思いを持って活動の輪を広げていってほしいと思います。
JA鳥取中央女性会・引田安子会長
フレッシュミズの方々が持つ「子育て」を通したつながりによって、地域の若い女性や非農家世帯の人たちが毎年JAの農業祭に足を運んでくれるなど、地域の農産物やJAをPRする役割になってくれていると実感しています。
地域の伝統を受け継ぎ広めていく地域の重要な存在としてこれからも活動していただきたいです。
そしてメンバーがもっと増えることを期待したいです。
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