JAの活動:食料・農業・地域の未来を拓くJA新時代
地方創生に全力 JA全農の挑戦(2)2019年7月22日
労働力支援を核に地域農業を活性化
労働力不足は農業でも深刻な問題だ。生産者は人手が足りないために、農業を続けられなくなったり、栽培面積を拡大したいけれどできないという現象が全国で起こっている。こうした問題を解決するために、JA全農大分県本部が実施している「労働力支援」の仕組みをもとに地域・全国レベルに広がる労働力支援の仕組み作りをめざす。
図3 JA全農おおいたで実施している「労働力支援」の概略
◆働く人の条件と農作業をマッチング
大分県では、JA全農おおいたが労働力支援コーディネーターになり、生産者からの様々な作業依頼をJAがとりまとめ、農作業受託企業の「菜果野アグリ」と連携して労働力を供給するという独自のプラットフォームを作っている。ここで最も重要なのが、「菜果野アグリ」の存在で、「私はフルでOK」とか、「パートで週2回」など勤務時間や勤務地など農作業のパートやアルバイトを希望する人と労働力を求める農家の条件をマッチングするという機能を果たす。菜果野アグリは、もともと土木建築会社で工事の人割でノウハウがあるため、必要な作業やかかる日数などを農業の作業内容について勉強しながら知識を集積してきたという。
また、希望すれば通年で毎日働けるような状況も作り、労働力をつなぎとめる工夫も。そのために、大分では特産のカボスの収穫後に、キャベツの収穫を入れることで仕事を生み出した。実際、キャベツを作ったことのない農家にも所得増のために新たにキャベツを生産してもらうわけだが、仮にうまくいかなかった場合は、肥料代を最低保証するなど全農おおいたがコーディネーターとして一定のリスクを持つ。神出理事長は、「この5年やってきて農家の信頼感も得て方程式ができてきた。菜果野アグリでもパートが増えて、熟練者の中からリーダーも出てきている」という。
図4 一人一人に農業機会をマッチングし、農業をめざす方に多様な就農形態を提案
図4の左側の就農候補者は、大分県外在住者、消費者、学生、障がい者、ミッシングワーカー、農業に興味がある人、主婦・一般企業勤務者などさまざま。県外在住者や消費者、学生は、農泊しながら、菜果野アグリの手配で農業体験をするという循環が生まれている。
「障がい者やミッシングワーカーという方がもしこれで社会に復帰できたら一番安心するのは親御さんではないでしょうか。いきなり難しいオフィスワークは無理でも農業の応援なら入りやすいのではないか。やってみたが合わなくて1日で辞めたとしてもその日に現金払い。また、全県下の作業場所に送迎付きです」と神出理事長。
農業にまったく縁のない都会の人が、1日だけ働いてみたいというケースでも「農泊」が受け皿になる。また、パートタイムやアルバイトで副業的に利用するなど働く人に寄り添った労働力支援といえる。中には、この仕組みを利用して農業を学び、いずれは就農をめざす候補生も生まれているという。
◆北九州3県で共同運用へ
支援人数の増加とともにキャベツの収穫販売面積も伸びている。
図5 労働力支援による農家所得増大の事例 キャベツ生産者A氏の事例(大分県中津市)
労働力支援を利用することでキャベツを新たに作ったある農家は、年間の収入が679万円アップしたという実例もある。神出理事長は、「こうした大分のビジネスモデルを全農の各県、経済連で3か年計画でやっていこうと動いている」と話し、九州では福岡県や佐賀県が大分県の取り組みに賛同し共同で運用が始まっている。例えば、福岡の柿と大分のキャベツの収穫時期が重ならないことから、県ごとの農作業の作物の繁忙期、閑散期をうまくマッチングし、ブロック域内の農作業を効率的に動かすという取り組みだ。すでに、大分、福岡、佐賀では広域の労働力支援がスタート、今後は全県に労働力支援の拠点を設置する予定だ。
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