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特集:食料・農業・地域の未来を拓くJA新時代

2019.07.22 
地方創生に全力 JA全農の挑戦(1)一覧へ

 JA全農は農業生産資材のコスト引き下げや米の買取販売など農業者の所得向上とわが国農業生産の拡大に向けた「自己改革」に取り組んできたが、2019年度からの新3か年計画では改革の成果をもとに、地域農業の振興を核にした地方創生に取り組む。柱になるのは農業労働力の支援と地域の活性化に向けた「農泊」事業だ。JAグループ内にとどまらず関係業界、行政などと広く連携して実践、地域全体の振興を通じて日本農業の発展につなげる。

◆厳しい現実から戦略を立てる

 

神出元一JA全農代表理事理事長神出元一代表理事理事長

 

 JA全農は自己改革の取り組みで、肥料の400銘柄(高度化成・NK化成の一般銘柄)を17銘柄に集約、予約数量の積み上げと入札で1~3割の価格引き下げを実現した(2017年度)。農機では生産者の声を反映した低価格トラクターをメーカーに開発要求するとともに、共同購入運動を展開して2~3割の価格引下げを実現した。
 販売事業では米の102万tの実需者への直接販売、37万tの買取販売も実施したほか、園芸でも3497億円の直接販売を達成している。
 こうした自己改革の取り組みは農業者の所得向上と農業生産の拡大をめざした取り組みであり、JA全農は引き続き取り組みを進める。
 そのうえで3か年計画では「5年後、10年後を見据えた地域農業戦略」を打ち出した。
 神出元一理事長は「生産資材コストの引き下げ、販売力強化などは重要で引き続き取り組むことに変わりはない。しかし、より本質的な問題は地域に農業者が増え、日本農業が持続的になるかどうか」と日本は厳しい現実に直面していると強調する。
 世界人口は2019年の75億人が2072年には106億人となる見込みで食料、エネルギー、環境が避けて通れない地球規模の課題となる。しかし、日本は2008年の1億3000万人をピークに、現状のまま推移すると2050年には1億人を切ることが予想されている。
 とくに食料生産を担う地方での人口減少と高齢化が深刻化している。1995年に400万人を超えていた農業就業人口は2017年には180万人と約20年で半減した。それにともなって耕作放棄地も42.3万haと福井県の面積に相当するまでに広がっている(2015年)。
 農業産出額は1990年の11.5兆円をピークに下がり続けたものの、2015年から3年連続で増加に転じ9兆円を超えたが、生産基盤が弱体化し、それにともなう生産量の減少による価格上昇が要因との指摘もある。
 ただし、明るい兆しもある。法人経営体は2005年の8700が2015年には1万8000を超え、10年間で倍増した。法人経営体の農産物販売金額に占める割合は27.3%と3割近くになっている。新規就農者数も49歳以下が2014年から2万人を超えるようになってきた。高齢化が進む一方、こうした世代交代の確実な動きもある。地域農業の大宗を担う中小農家への支援とともに、法人経営体に農地を集積するなどの取り組みも、わが国の食の確保にとって重要になっている。
 JA全農はこうした情勢のなかで地域農業振興戦略として、(1)作物別・品目別戦略策定による農業総産出額の計画的・段階的な拡大、(2)マーケットニーズをふまえた販売戦略の構築、(3)元気な地域社会づくりへの支援、(4)急変する海外動向に対応した新たな海外戦略の構築の4つを柱にしている。

 

◆一次産業の復活を

 とくに作物別・品目別の戦略策定は地域農業振興にとって重要だ。
 食料自給率の低い日本は年間に必要な食料約8700万tのうち4555万tと約半分を輸入に頼っている。しかし、品目によって状況は違う。米や生乳は100%自給だが、麦、大豆は10%前後の自給率であり果実も輸入量が多い。野菜も輸入量が増えている。

図1 日本の食料需給表~年間必要量約8730万tの半分は輸入~  地方創生に全力 JA全農の挑戦図1 日本の食料需給表~年間必要量約8730万tの半分は輸入~

 

 こうした情勢をふまえて品目別の戦略を策定し国内生産量の拡大に取り組み、食料自給率の向上を図る。
 具体的には▽米、主要野菜、生乳など国内需要を賄う生産力を有する農畜産物の完全自給、▽業務用米・野菜など国内需要が不足している農畜産物の生産拡大、▽輸入量の多い農畜産物の国産への転換、▽国際競争力のある農畜産物の輸出である。

 

図2 作物別・品目別戦略策定による農業総産出額の計画的・段階的な拡大図2 作物別・品目別戦略策定による農業総産出額の計画的・段階的な拡大

 

 これらを実現するために生産現場に投入する重点施策が▽ドローンなど生産性を向上させる新技術、▽労働力支援、▽ICTの活用の3つだ。
 このうち労働力支援は「農泊」とともに地方創生の取り組みとして重点的に展開していく。
 神出理事長は「農業のための労働力支援や農泊によって人が地域に集まり、それらがパッケージとなって仕事や雇用、所得を生む。一次産業の復活を地方創生の柱とし、われわれだけでなく関係者と力を合わせて実践する。それが自給率向上にもつながる」と意気込む。

 

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