JAの活動:新春特別講演会
農協リーダーが描く等身大の農業・農協再編戦略2020年2月4日
八木岡努JA水戸代表理事組合長、岩佐哲司JAぎふ代表理事専務
新春特別講演会は、末松広行・農水事務次官と作家の佐藤優氏の対談を受け、「農協リーダーが描く等身大の農業・農協の再編戦略」のテーマで参加者によるディスカッションを行った。八木岡努・JA水戸代表理事組合長と岩佐哲司・JAぎふ代表理事専務が基調報告した、両JAとも県庁所在地にありながら、農業者の高齢化と農家人口の減少が激しい中山間地域を抱えており、特に支店や店舗の統廃合など事業の再編が求められるなかで、農業・地域の立て直しに努めている。
新春特別講演会で報告する左から八木岡JA水戸組合長、岩佐JAぎふ専務
一番右が司会の谷口東大名誉教授
JAぎふは組合員10万2000人、うち正組合員が2万9000人(2020年4月1日)で、JAの販売取扱高は約78億円ある。一方のJA水戸は組合員2万4000人(19年1月末)で、うち正組合員は1万2000人となっており、販売取扱高は約74億円。農業生産の規模では共通点がある。
農家人口が減るなかで、JA水戸は大規模農家と家族農業の棲み分けを進め、支援する方針。八木岡組合長は「特に今後は多様な担い手と言われる定年農業者等へのアプローチや市場出荷だけではない販売チャネルの提案が必要になる」とみている。
なかでも大規模農家には、今後も農協を継続して利用してもらうように、販売力強化や資材コスト低減をはかる必要がある。同組合長は具体的な支援として、(1)産地としてのブランド力の向上、(2)販路拡大、(3)契約栽培等をあげた。
◆規模より所得向上 JAぎふ
一方、JAぎふは管内の耕地面積1万2000ha余り。うち集積農地は2018年で2890ha。集積率は23.9%。岐阜県全体の34.9%に比べ10ポイント余り低い。その理由は、同JAが取り組んでいる地域ぐるみの「営農ビジョン」づくりにある。
「地域農業振興戦略」と銘打った営農ビジョンは、地域農業の維持発展にむけた「農地・農業者・農産物」の方針で、JAの支店長を中心に、行政の示す方針や計画、地域農業者の意向や期待を取り込み、地域性を重視した具体的な取り組みを策定した。
JAの具体的な支援としては、(1)労働力の確保、(2)農福連携への取り組み、(3)無農薬・有機米への挑戦、(4)生産資材コストの低減、(5)農業経営支援積立金などがある。特に、農業経営支援積立金は農産物市場価格が下落したときや、資材価格高騰の際に支援する。
こうしたきめ細かい支援策が農業所得の向上につながっており、岩佐専務は「面積拡大より、所得のアップが大事。それが農協の役割だ。面積拡大から単価向上へ」と言う。具体的に准組合員を中心に地域の消費者に「食べて応援してもらう」ため"農業の応援団"として位置付け、直売所を中心に地産地消の取り組みを強めている。
地産地消に関して、JA水戸は学校給食への地場農産物の供給拡大に力を入れている。学校給食への供給は、契約栽培同様の安定取引ができ、流通コストも削減できる。また、大型経営でなくても、定年就農者や小規模農家でも取り組める。
八木岡組合長は「地域の子ども達が食べる食材を供給することで、農業にやりがいを感じてもらい、地域農業を維持できれば」と期待する。水戸市とも連携し、2013年42.1%だった地場産率が18年には56.0%に向上した。
◆商系と共同で店舗 JA水戸
金融環境の厳しさから、両JAとも支店再編成を喫緊の課題として取り組んでいる。JA水戸は、現在の13店舗を6店舗に、資材センター機能をもつ10事業所を4拠点に再編する。「これによって専門性を高め、多様化する利用者ニーズに対応するほか、事業を集約することで販売力や生産性の向上を進める」と八木岡組合長は言う。
一方でJA水戸は商系と連携した新たな店舗づくりに取り組んでいる。商系のアイアグリ(株)との共同店では、系統と商系の資材が並んで陳列されており、農家は商品を比較できる。これによってJAだけでは1800~2000アイテムだった商品が2万アイテムに増えた。商系の経営ノウハウを取り入れ、360日の営業日で多様な担い手のニーズに応えている。
支店再編について、JAぎふは、総合事業を展開しない店舗を、高齢者も、組合員の部会も学童も含めたみんなが気楽に集える地域の拠点として活用する計画を立てている。
× × ×
なお組合員資格で耕作農地の要件をなくしているJAが少なくないが、意見交換では農業者の性格付けが話題になり、「農業への共感者」「農業を自分のこととして考えている」人は、組合員と考えるべきだなどの意見があった。
また、信用事業について「投網を掛けるようなキャンペーンのような推進活動でなく、総合事業を生かし、組合員個々に対応する仕組みをつくる必要がある」など、JA事業の根幹にかかわるような問題提起があった。
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