JAの活動:2021持続可能な社会を目指して 今こそ我らJAの出番
農協運動への結集、改めて誓う――コロナ禍で協同の意義ますます重要に 村上光雄 一般社団法人農協協会代表理事会長【特集:今こそ我らJAの出番】2021年1月1日
一般社団法人農協協会会長
会長就任にあたって
新年あけましておめでとうございます。
皆様方におかれましては、コロナ禍にもかかわらず、ご家族おそろいで清々しい新春をお迎えのことと存じ、心からお慶びを申し上げます。
また昨年も農協協会の事業活動に対してましてご支援ご協力をたまわり誠にありがとうございました。昨年は新型コロナウイルス感染症拡大により思うような事業展開ができず、まことに申し訳ありませんでしたが、本年も何卒よろしくお願いいたします。
そして私、昨年末の農協協会総会におきまして会長に選任され、就任させていただきました。長年ご苦労いただいた佐藤喜作前会長が体調を崩され、急きょ私がお引き受けすることになりました。もとよりその器ではありませんし、近年耳も遠くなりだし、皆様にご迷惑をおかけすることも多々あることと存じますが、何卒よろしくお願いいたします。
ただ農業協同組合新聞、農協協会に対する熱い思いだけは誰にも負けないものを持っていると思っております。農協人として育てていただいたご恩返し、最後のご奉公と思って、微力ではありますが誠心誠意努めてまいりますので、この上ながらのご支援ご協力たまわりますよう重ねてお願いいたします。
困難な中、智慧を出し頑張ってきた協同組合
さて昨年は、年頭で語られていた華々しいパラリンピック、オリンピックそして衆議院解散・総選挙、安倍総裁の4選のシナリオは新型コロナウイルスによって、あっという間に消し去られてしまいました。
パラリンピック、オリンピックは延期となり強権をほしいままにした安倍内閣はマスク配布のような低レベルのコロナ対策に右往左往し、ついに方向性も見いだせないまま前回と同じように政権を丸投げしてしまいました。まさしく無責任なお坊ちゃま政権といわざるを得ません。
そして想定外で誕生した菅内閣は理念なき合理主義の小型安倍内閣で、最優先で取り組まなければならないコロナ対策でまたしても後手後手に回り、混乱と感染が拡大している状況であります。
農政においても官邸農政を主導した張本人であり、規模拡大オンリーの路線変更は望むべくもありません。そして種苗法も種子の海外流出防止を盾に十分審議されないまま国会を通過してしまいました。
またコロナ禍は農業・農村・農協にも大きな影響を与えており、今からさらにどのような事態が展開するか予測できません。インバウンド壊滅、観光崩壊、消費形態の変化によりすべての農畜産物において価格低下、所得減少をきたしておりますし、地域によっては度重なる水害、鳥獣害、ウンカ被害などにより集落崩壊、農地放棄に拍車をかける事態となっていることが憂慮されます。
また農協にとっては、協同の原点である人と人のつながりが感染防止、自己責任ということで分断され、十分な対話活動が展開できませんでした。そして絆を深めるための定番のイベント、集会も開けなかったことは大きな痛手でありました。そうした状況下にあっても役職員が知恵を出し合い地域の営農と生活を守るために踏ん張ってきたことは評価されるし、生協の個別配送が再評価されたり、牛乳のもう一本運動が展開されたことは今後の協同活動を考えるうえで示唆となるできごとでありました。
21年 我らJAの出番です
こうして迎えた2021(令和3)年、コロナ感染症は依然として世界的に拡大を続け猛威をふるっています。ワクチン接種が始まったという明るい兆しも見えてはきましたが、即効薬はなく、気長にコロナと付き合わなければならないようであります。そしてこの一年も「人間とは何ものか、自然とは、宗教、科学、経済、社会、そして協同とは何か」を引き続き問い続けていかなければならない一年になりそうであります。
今回は幸いにも食料危機という事態にはなりませんでしたが、感染防止に向けて各国が一斉に鎖国状態にはいったように、いざとなれば自国本位になるのは当然であり、中家全中会長の提唱する「国消国産」が基本でなければなりません。
そして世界中の人々が手をつなぐグローバルはすばらしいことであり重要なことですが、新自由主義者の言う、関税も何もかも取り払って自由に往来しようというのは資本の論理であり世界の地域性、独自性を無視し環境破壊に拍車をかける無茶苦茶な理論にほかなりません。また無防備な自由市場がコロナ感染を拡大したと言っても過言ではないと思います。
私たちがめざすところは、国連が掲げる「持続可能な開発のための2030アジェンダ」であり「家族農業の10年」であります。そしてコロナ禍でますます拡大するあらゆる格差に向き合い、お互いに助け合って、心豊かに暮らせる地域社会づくりであり、それを推し進めていくのが協同組合運動であり我々の責務であります。
そのことをこの一年は協同組合セクターとしてしっかり理論武装し発信していかねばならないと考えます。まさに我らJAの出番です!
そしてJA全中の掲げる「農業農村の危機」「組織事業の危機」「協同組合の危機」の三つの危機の共有、共通認識の上に立ってそれぞれの組織、立場で足元から小さな一歩から行動、実践していきたいものであります。
今年は丑(うし)年、牛は農耕の神様でもあります。この一年大きな災害がなく、コロナ感染症が一日も早く終息し、農業農村そして農協にとって良き年となりますよう祈らずにはおれません。
私たち農協協会としても昨年創立90周年という節目を無事乗り越え、これから創立100年という大きな目標に向かって、新しい一歩を踏み出すこととなりました。
農協協会の定款第3条に「本協会は、農村における協同組合運動実践者の同志的結集をはかり、協同意識の高揚を通じて協同組合理念の啓発、農業生産の協同化活動を促進し、もって農村における協同組合組織の民主的発展に資することを目的とする」とあります。時代は移り、状況は変わっていますが、心意気は十分に伝わってまいります。
先輩のご苦労をしのび、その足跡を無駄にすることなく、小さな組織、小さな新聞ではありますが、堂々と天下国家の正論を語り、農協人としての本音、良心が自由に展開される貴重な存在としての役割を果たし続けていく所存であります。
なお、コロナ禍で楽しみにしていただいております「新春の集い」は中止せざるを得なくなり、今年も多難な一年になりそうであります。しかし、昨年中止した農協人文化賞はどんな形になるかわかりませんが、必ず実施していきたいと考えておりますのでご理解とご協力をいただきますようお願いいたします。
それでは、今年も農協協会役職員一同、心を新たに心を一つにして力強く前を向いて歩んでまいりますので、ご支援ご協力たまわりますようよろしくお願いいたしまして新年と就任のあいさつとさせていただきます。
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