JAの活動:実現しよう!「協同」と「共生」の新しい世界へ
【新春座談会】健診で築く安心社会 JA山梨厚生連の挑戦(3)2022年1月11日
第29回JA全国大会では「持続可能な農業の実現」、「豊かでくらしやすい地域共生社会の実現」を決議した。コロナ禍でのこの決議に、生命を支える食料生産はもちろん、協同の力で地域を持続させる人々の「いのち」をどう守っていくか、その大切さも改めて認識したい。今回はJA山梨厚生連の飯沼全司代表理事専務とJA全厚連の中村純誠代表理事理事長に健康管理・増進活動を事業の柱とするJA山梨厚生連の取り組みを機軸にJAグループがめざすべきことを話し合ってもらった。司会は文芸アナリストの大金義昭氏。
JA山梨厚生連による"がん教育"の出前授業
ヘルスリテラシーに貢献
大金 JA山梨厚生連の職場づくりには、どのように取り組んでいますか。
飯沼 まだ若い組織で至らないところも多いと思います。女性が多い職場ですから、いろいろな委員会を設置して意見を聞きながら、できるだけ働きやすい職場をめざそうと取り組んできました。
そのほか、職員が匿名で意見を表明できる仕組みもあり、これを「プラスボイス」と呼んでいます。「目安箱」のようなもので、経営に対して、あるいは様々な事業・活動に対して若い世代からも率直な意見を聞き、悪い点は改善し、良い点は大きく伸ばしていこうという取り組みです。
また、利用者からの声を職員が職場内のネットワークで共有する「サポーターズボイス」という仕組みも作っています。良い意見も悪い意見もその日のうちに全職員が共有できる仕組みです。お褒めの言葉もクレームもすぐに声を聞いた担当者がアップします。そしてその日のうちに共有し、必ず当該部署が回答を入れることにしています。回答が遅れた場合、それをチェックするという機能も作っています。かつ、それをホームページ上に公開することにしています。
大金 小さなことを積み重ねる二宮尊徳の「積小為大」に重なるお話ですね。これから新たに力を入れたいことは何ですか。
飯沼 やはり広報活動が重要になってくると思います。SNSを中心に今までとは格段に違う速さで地域にいろいろな情報が広がります。これは私たちとしても大いに活用したい。
これまではホームページや広報誌などで活動を案内していましたが、昨年12月にホームページをスマホに対応したものにリニューアルし、オリジナルのスマホアプリも公開しました。様々な健康情報や外来の情報のほか、広報誌の内容などもスマホで見られます。イベントへの参加申し込みや体験記の応募などもできるようにしていますし、今後は人間ドックの予約や結果の表示もできるようにします。これからは、このツールを生かさないと事業は伸びないだろうと考えていますので、これを活用し、地域の健康情報発信基地としての大きな役割をさらに発揮していきたいですね。
中村 私は、女性組織ならびに青年組織がJAグループの健康増進活動を推進する有力な組織であり、JAの活動の決め手になると考えています。JA女性組織やJA青年組織との関わりはいかがですか。
飯沼 県内のJA女性組織の役員で構成する「JA女性部組合員健康づくり委員会」で、イベントの運営や意見交換会など様々な形で協力をいただいています。また、その中でいただいた提言は本会の事業に取り入れています。
家族のなかで、女性は健康づくりの柱になります。私たちは女性にやさしい施設を目指し、2010(平成22)年の健康管理センター別館建設時に「レディースフロア」を整備しました。検査技師も女性にし、「女性の、女性による、女性のためのフロア」です。そこでリラックスして検査を受けてもらいます。
これを作ったことで、人間ドック受診者の男女比がそれまでの男性6割を逆転し、女性が半数以上を占めるようになりました。こうした取り組みも健診全体の受診率を上げていった一因だと思います。
大金 山梨県は果樹をはじめ農業が盛んです。「医食同源」といった言葉があるように、農業に直接結びついたかたちの健康管理・増進活動の新たな展開も期待したいです。
飯沼 たしかに、「身土不二」という言葉もありますね。人間の身体と土地は切り離せないという考え方。私たちも食育から始まって、先ほどのがん教育につなげていくといった考え方が必要だと思っています。
結局、私たちの役割とは、事業を通して様々な情報発信をしていくことで、人々が「ヘルスリテラシー」(健康情報を調べ、理解し活用する力)を向上させることに少しでも貢献することかも知れません。先ほど女性を中心に、家族・地域・職場へという情報や知識の広がりが期待できるという話をしましたが、その中で私たちはきちんとした正しい情報が伝わることに貢献できればと思っています。そこが、病院を持たないJA厚生連としての大きな役割ではないかと考えています。
大金 第29回JA全国大会では「持続可能な農業の実現」「豊かでくらしやすい地域共生社会の実現」などを決議しました。これに対してJA厚生連はどんな役割を果たしていきますか。
飯沼 これらの決議を実現する源流や根底には「健康」があると思います。私たちは単に健康診断という決まった枠の中で活動し続けるのではなく、地域の組合員や住民の皆さんの健康維持・増進に関して、様々なツールや情報を提供したり、新しい活動への参加機会をつくったりといった時代やニーズに合わせた役割を担っていければと思っています。
中村 JAが地域にとってどういう存在なのかということが、改めて問われる時代ですね。多くのJAトップの方々が言われているように、「なくてはならないJA」になる必要があります。地域にとって必要不可欠な組織だと組合員や地域住民の皆さんから思っていただくことが大事だと思います。
そのために経済事業や信用・共済事業でたゆまぬ努力をしているわけですが、これらに加えて健康維持・増進活動をもっと大きな柱に位置づけたいと思っています。そのためには各JAにおいて健康増進活動にかかる目標値を定めていただくことが必要ではないかと考えています。協同組合の力で「災害の世紀」と言われるこの時代を乗り越えていくことが大きなテーマです。
コロナ禍で地域の方々の健康や助け合いの大切さが顕在化しましたが、これを機に、JAが地域のなかでどんな役割を果たすべきかを考える必要があると認識しています。JA厚生連としては組合員・JAグループ関係者・地域住民の方々に健康維持・増進活動の重要性をしっかりとアピールしたいと考えています。JA山梨厚生連は、その大きな役割を果たしています。この事例を全国に広げていきたいと思います。
大金 「つなげる、やさしさ。」が熱く伝わってきました。ありがとうございました。
文芸アナリスト 大金義昭氏
【座談会を終えて】
甲府盆地を守るようにそびえる高い山波を見上げながら、清々しい気分に包まれた。その気分は、JA山梨厚生連の事業・活動を支える役職員の皆さんの爽やかで慎ましい姿勢に触れ、いっそう強くなった。雪を頂く山々に、皆さんの「ホスピタリティーと穏やかなコミュニケーション力」が重なった。『武田節』に「人は石垣 人は城」というくだりがある。人びとの健康を守るJA厚生連の気高い心意気こそ、有形・無形の「社会的共通資本」 ではないか。
(大金)
【新春座談会】健診で築く安心社会 JA山梨厚生連の挑戦(1)
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