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JAの活動:JA全農創立50年特集 なくてはならない「JA全農」を目指して

現場視点で農業守る要に 茨城県JA常陸組合長 秋山豊氏が提言【JA全農創立50年】2022年3月28日

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JA全農が今年創立50周年を迎える。そこで茨城県JA常陸の秋山豊組合長に「JA全農に望むこと」をテーマに寄稿してもらった。秋山組合長は地域で活動するJAの立場から現場視点で自給の大切さや官僚制の打破、持続可能な農業など多岐に渡る期待と要望を掲げた。

茨城県JA常陸 秋山豊組合長茨城県JA常陸 秋山豊組合長

私は、35年ほど茨城県農協中央会に勤め、退職して地元のJA常陸の組合長になって4年になる。その意味で全農については門外漢のところでもあるが、広域JAとして協同事業も行っており出筆を遠慮したが、現場からの意見をぜひにとの事で、JAの立場から2、3期待するところを述べたい。

一つ目には、輸入農産物、肥料原料の確保、国内自給である。

6年前、農協法改正を伴う農協改革の大論議があった。安倍晋三政権のもと規制改革会議からJAグループに対し、准組合員の利用規制、信用・共済事業の分離、全農改革、全中の一般社団法人化等を求められ、地方公聴会まで開く圧力があり、その後の5年間のJA自己改革につながった。

最終的にはJAを民営化する内容であったため、私もTPP反対闘争に続き、国会要請等の運動に加わった。その中で、ある国会議員から次のような回答を得た。
「今回のJA改革は、米国の穀物メジャーが全農を買収したくて始まったものだ。彼らは非遺伝子組み換え大豆、トウモロコシの買い付け等、メジャーの戦略に従わない全農グレインが邪魔でしょうがない。これを買収しようとしても全農が協同組合のため出来ない。それで日本の農協制度自体を崩壊させようとしている。しかし、この問題は国家の存続にかかわる問題であり、さすがに我々政治家も譲れない。しかし組織のキャップ外しで全中はしょうがないかもしれない」。この言葉の通り、全農は自己改革で済み、全中は監査を分離され一般社団法人化された。全農には穀物メジャーの暴挙を許さない活躍を期待したい。

私は、ベトナムに外国人実習生の事業の関係で何度か訪れた。農業用水も排水も機械もなく、公設市場も無く市民市場である。ベトナムでは米は主力の輸出品目である。米の国際相場が上がると国内の米価格が上昇し所得の低い国民は米が食べられなくなる。先進国が穀物を買い占めると低所得の国では飢餓が発生する。最近、食料の安全保障を巡って「買い負けするな」の論議もがあるが、金のある国の理屈であり途上国や最貧国にも食料が行き渡る対策を常に考えてほしい。全農グレインは世界的な視野で対応してほしい。

ご存じの様に、日本の食料自給率は37%、穀物自給率は28%、飼料自給率は25%、先進国で穀物自給率が2番目に低いイタリアが80%、次に低い英国が88%であることから異常な低さである。本来穀物だけは国際分業論ではなく国内自給論を適用すべきである。

米の自給100%を堅持し、国産大豆・小麦の振興、そして畜産の飼料について餌米、ホールクロップサイレージ、食品リサイクル、エコフィード等の取り組みを強化し、穀物自給率を向上すべきである。現場から見ると、畜産行政、水田行政、環境行政が各々予算の獲得が優先され、政策が一体化しておらず効果が上がらない。民間の大手として全農がリーダーシップを取って畜産場に飼料資源が集中して行くシステムを作ってほしい。

国産有機肥料 重点的開発を

次に、肥料の問題がある。今年の春肥料は予約でも現場に届くのが遅れている。価格も昨年来上昇している。コロナによる運輸関係の滞りの他に、干ばつで食料不足に陥った中国が肥料の原料であるリンの輸出を規制したことによる。今後の当用供給にも不安が残る。
化成肥料の原料は世界的な範囲で輸入されており、その安定供給は農家生産、所得に直結する。全農のメイン事業でもあり重点的な対応を期待する。

また、穀物と同じく肥料についても国内自給の道を開発してほしい。畜産業から発生する大量の堆肥から有機肥料を生み出す。さらに食品加工業、林業、漁業、飲食業、建設業からの廃棄物は、産業廃棄物なら有料焼却、肥料原料なら有料の原料供給となる。分別収集、拠点製造、配送・販売網の整備を行えば化成肥料に代替できる道があるのではないか。

私は、中央会時代、光合成菌(湖底で有機物を分解する菌)を活用したおから、鶏ふん、米ぬか、もみ殻くん炭を原料としてN-P-Kオール4%の有機肥料「くん炭有機」を開発した。完熟でありくん炭の持つ土壌改良効果や水分調整効果からスイカ農家やタバコ農家にも評価を得て一時供給を伸ばした。

当時成分調整した有機肥料はほとんどなく日立化成プラントの空気循環型堆肥盤により成分の均質化に成功した。ただ、価格が30リットル700円で10a当たり水稲で15袋使用となり、市販の400円発酵堆肥や水田10a当たり2袋使用の化成肥料に勝てなかった事と、カリ分が多いせいかアブラムシの被害が出てその後衰退した。
現在は、成分調整されC/N比(炭素と窒素の比率、堆肥では熟成度)が表示された有機肥料が数多く販売されているが、施肥量が多くコスト、施肥時間の面でまだ化成肥料に及ばない。

有機肥料は一つの輪が切れただけで滞るため、原料の安定と運搬費の節約が重要であり適正なエリア循環が必要である。全農の人的能力、資本力、組織力により化成肥料に代わる国産有機肥料の開発を期待したい。

二つ目に期待する事は、「官僚化」の打破である。国内、国外の大資本から農家、国民を守るためには大きな組織は必要である。しかし、組織が肥大化すると、本来の目的を忘れ、現状維持が目的化し、無意識のうちに組織のための組織となる。社会学で言われる「官僚化」である。官僚化は、現場から遠い連合会に多く生じ、大規模化したJAにも現れる。注意しないと組織維持の為に組合員の利益を犠牲にする事となる。

80年代、JR、JT、NTTの3公社や電力会社、郵政において分割民営化が急速に進んだ。戦後、高度成長期に政府の補完組織として発展し膨大な組織となったが、オイルショック後の低成長、市場の自由化の中で環境の変化に対応できず組織の分割が進んだ。結果として地方や葉タバコ生産者の切り捨て、人間的なサービスの低下が進んだ半面、合理化、効率化により時代に存続できる企業へと変革している。

全農においては、昭和40年代までは戦後の食管制度を軸とした米穀の販売、生産資材の供給を軸とした体制であったが、農業基本法を起点とした農家の園芸、畜産への選択的拡大、兼業農家の拡大等に呼応し、国際業務、生活関連業務、全国ネットの販売事業等、事業の多角化が進んだ。さらに肥料の価格問題に対しヨルダン・リン鉱石を原料としたアラジンの発売等の事業改革が進んだ。そして、平成の低成長期における金融自由化、価格破壊、物流革命に対応し系統2段階が決議され、平成10年の3経済連の統合を契機に現在までに48経済連のうち40経済連が統合され全農県本部となった。

農家所得増大 常に肝に銘じ

現在の全農が官僚化しているとは言わない。6年前の農協改革後も政府から厳しい全農改革を求められ、トラクターをはじめ低コスト農機の開発、肥料、農薬の価格の引き下げ、農畜産物輸出、食品加工への取り組み等、相当な努力をしている。

激変が続く世界経済の中で官僚化に浸る余裕はないかもしれない。常に現場を歩き、生産者、JAの声に耳を傾け、本当に全農の事業が農家所得の増大に結びついているのか確認してほしい。

三つ目の期待として、環境対策への取り組み強化をお願いしたい。

国際的なSDGsの取り組み、政府のみどりの食料戦略、カーボン・ゼロエミッション、最近怒涛(どとう)のような勢いで地球温暖化対策、環境対策が打ち出されている。民間企業も企業の社会貢献、企業ブランドの維持をかけてPRに懸命である。しかし、JAグループの取り組みは決して迅速ではない。

日本の農業は、戦前からの牛馬耕、堆肥、輪作による連作障害回避、手作業による除草、天敵防除等により世界に類を見ない循環型の有機栽培を行っていた。その後高度成長以降50年間で供給された化成肥料、化学農薬、農業機械、大規模畜産、施設園芸と変革され自給性を失った。生産資材の原料は世界中から集められ、ふんだんに燃料、電気を使い簡単には後戻りできない状況にある。

しかし、土壌汚染、食品アレルギー、発がん性、鳥インフルエンザ、豚コレラ(豚熱)等、食の安全性、病原性という観点からも行き過ぎた近代農法は多くの問題点を生じており、その都度応急的な対策が取られてきた。技術の全てをつぎ込んで、環境保全型農業、さらに有機農業への方向性をJAグループとして示すべきである。
その中でJAグループの生産事業の研究機関であり新農法、新技術開発のリーダーである全農は、率先して生産から販売までの技術転換を開発すべきである。

有機栽培の道 率先垂範期待

わがJA常陸でも常陸大宮市三美地区に1haではあるが、今年から有機栽培によるカンショ、ニンジン、バレイショ、カボチャの試験ほをJA共済連の地域貢献活動を活用し、県内の有機農法指導者と契約して作付けを開始した。

経過的には行政の対応が早く3年前から常陸大宮市の学校給食の有機農産物化、そして茨城県の県北地域へのオーガニックステップアップ事業が発表された。JAは子会社アグリサポートが受託した国営畑換農地30haの一部に、有機農業の生産販売に成功した2生産法人を受け入れ、既に5haのニンジン等有機栽培が始まり、今春からはハウス1・7haで有機軟弱野菜の生産が始まる。JAもその一角に有機野菜試験ほを設置した。今後、この県北有機モデル団地を拠点に参加農家を募り学校給食への供給基盤を作り、オーガニック系の販路に挑戦する。

試験ほの作付けを通して挙がった課題は、土づくりに多大な費用が掛かることである。熟度の高い堆肥、有機専用の土壌改良材、有機認証許可農薬等、10a当たり10万円以上の費用が掛かる。そして有機認証まで早くて2年販売まで3年かかる。

また、販売先が直売所、オーガニック系企業、生協、学校給食等に限られる事と不作時、病害虫発生時の対応等、契約先とのコミュニケーションが重要である。

しかし、情勢から有機栽培に取り組むことが、TPP時代そしてSDGs時代における日本農民の生き残る道であるならば、誰かが挑戦し国民を挙げた運動にする必要がある。全農にも率先垂範的な取り組みを期待したい。

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