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JAの活動:消滅の危機!持続可能な農業・農村の実現と農業協同組合

【提言】農業覆う資本の影 プラネット・ローカル2023に思う 国際ジャーナリスト・堤未果氏2023年10月20日

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デジタル化が世界の農業生産の現場で進んでいる。持続可能な農業のためにも技術革新は必要だろう。だが問題はないのか。世界情勢に詳しい国際ジャーナリストの堤未果氏にデジタル技術の問題点とこれからの農業のあり方など提起してもらった。

堤未果氏国際ジャーナリスト 堤未果氏

2023年9月29日から3日間、英国郊外にある小さな街ブリストルで「プラネット・ローカル2023」が開催された。

一握りの巨大企業と金融機関があらゆる市場を支配し、効率化の名の下に画一化を進める資本主義の暴走に危機感を持ち、多様性と主権を取り戻そうと世界で立ち上がる人々の運動だ。

世界100以上の地域からの聴衆に57カ国からの代表がプレゼンし、その後多数の分科会で連日真剣な議論を重ねた。筆者は「デジタル化の光と影」および「報道されないSDGsの裏側と共同体の役割」について両日プレゼンしたが、いずれも北米、アフリカ、アジア、中東、EU、BRICSなど各地域の人々から大きな反響があったのは、こうした問題が今や世界共通の課題であることの表れだろう。

「食と農」の分科会は特に関心が高かった。巨大アグリビジネス企業等がSDGsの名の下に途上国でデジタル農業参入を進める中、現地農業者たちは、かつて〈緑の革命〉によって主権を奪われた記憶を重ね懸念を示す。

ジンバブエのアグロエコロジー学校創設者であり自身も小農のネルソン・マズィンワ氏は、巨大テック企業の参入についてこう語った。「問題は利便性よりも、小規模農業者の主権や共同体にどう影響するかをみなければならない。そしてまた、政府が企業側の利益優遇ばかりに立たぬよう、農業者自らがしっかり注視する事も必要だ」

2017年3月。同国出身でビア・カンペシーナのエリザベス・ムポフ国際調整委員長は、世界に向かってこう告発した。「多国籍企業の利益のために、世界各地の小規模農民と農村が土地を奪われ、経済的に困窮し、飢餓に苦しめられている」

輸出型農業 格差を生む

グローバルな輸出型大規模農業ビジネスが拡大させる南北格差と小農の重要性が注目され、翌年11月に国連で採択された「小農の権利宣言」を覚えているだろうか。巨大農業ビジネス推進の英、米、豪は反対、家族農家が大半を占めるにも関わらず、日本政府は「農家特有の権利については議論が未熟」などとし、大国に追従するように棄権した。

加速するテクノロジーと連携した農業ビジネスのターゲットは農村だ。2020年9月にマイクロソフト社は、AGRA(アフリカ緑の革命のための同盟)と共同で、デジタル農業用プラットフォームをアフリカ全体に拡大する計画に着手した。SNSを通じて小規模農家にアドバイスするスマホ用アプリだ。いつどこでどの種子を作付けするか、どのような農業資材をどこから購入すべきか、アプリが全て教えてくれる。そして収集された農家の情報は、マイクロソフト社によって農薬や農機具メーカー、農業コンサルタント、各種企業や研究者、保険会社、大手食品会社、NGOなどに「商品」として販売されるのだ。ケニアの小規模農業者の一人は、同国の小規模農家数百万人に提供されるサービスについて、説明してくれた。

「資材に保険、融資に至るまで、全て決済の度に英資本のボーダフォン社の子会社に手数料が入るんです」

デジタルプラットフォームは利便性をもたらす半面、農村のあり方も急速に画一化する。生産物を集め、流通させ、近隣の町で販売するという中間業務は、どの国でも協同組合や小規模事業者が担ってきた。インドで食品の小売業を営む女性は、外資によるオンライン販売展開への懸念をこう語った。「こうした技術が、生産者と中間労働者の間を円滑につなぐために使われるでしょうか? インドでは食品小売りの多くは女性達を中心とした小規模業者が担っています。便利さと引き換えに、巨大企業に価格決定力を奪われれば本末転倒です」 

インドでは公的卸売システムの民営化法案を、農民たちが反対デモで翻し、小規模小売業者たちが農産物のオンラインショッピングのボイコットを呼びかけるなど、コロナ禍でデジタル化が急速に進んだことへの危機感が増している。

協同組合は農家の知恵

世界規模で展開するテクノロジー企業と農業ビジネスの連携という新たな脅威。デジタルを介し再び囲い込まれることへの懸念を打ち破るために、農業者たちの知恵は「協同組合」だ。

アフリカでは多くの商品分野で持続可能な生産と取引を促進しつつ、現地の小規模農家の主権を維持するために、各国の協同組合が連携を決めた。2018年5月、アフリカ諸国の協同組合代表がモザンビークに結集し、協働を目的にアライアンスアフリカ農業協同組合(AAACO)を立ち上げたのだ。ケニアではデジタル化を利用して小規模農家への買いたたきを可視化するなど、農家の主権保護を重視した運用に力を入れている。 フィリピンでは協同組合が、組合員や小規模農家、そして地元消費者のニーズに合わせたオンライン市場を立ち上げた。

テクノロジーの進化は止められない。問題は誰が、どう使うかなのだ。核となるのは利益最大化と効率化を求め、あらゆるものを画一化し囲い込んでゆく多国籍企業の競争か。それとも、一人一人の生産者と農村共同体、食と環境の安心安全と、地域全体の幸福な発展を目指す協同組合なのか。どちらが手綱を握るかで、未来に広がる光景は、180度変わるだろう。

国連が2012年を「国際協同組合年」に定め、ユネスコが2016年に協同組合を無形文化遺産としたのは、それが資本主義の暴走を止める、最後の砦(とりで)だからに他ならない。全農が半世紀もの間推進してきた、米国やアルゼンチン、オーストラリアやフランスといった国々の協同組合との、海を超えた提携の最大の意義は、何よりもその価値観の共有だろう。

サミットの最終日、ナバホインディアンの女性が、会場にいる全員に向かって、歌うような声でこう言った。「私たちは皆、7世代先の子供たちからこの地を預かっているのです」

そう、今問われているのは、方法論では決してない。ずっと先の世代のために、私たちが揺らぐことなく、理念を持ち続けていられるかどうか。〈One for All, All for One(一人はみんなのために、みんなは一つの目的のために)〉それは遠く離れたブリストルの地で、世界各地からきた人々を確かにつなげ、ひと時同じ未来を見せた。テクノロジーが急速に社会を変える今だからこそ、求められているのは、守り、残したいものを支えるための、変わらぬ尊い価値なのだ。

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