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【震災から1年・能登復旧遅れ】倒壊家屋なお 地域喪失 他人事でなく(1) ジャーナリスト・青木理氏2025年1月8日
ちょうど1年前の2024年1月1日に最大震度7を記録した能登半島地震。復旧も覚めやらぬ中、9月には豪雨被害に見舞われ同地域の痛手は深い。やっと主要道路は開通したものの、多くの倒壊家屋や土砂、流木もいたるところで目に付く。多くの災害取材の経験もあり政治、経済問題などまで幅広く活躍するジャーナリストの青木理氏に震災から1年が経つ能登の問題を聞いた。(インタビュアー 「月刊日本」編集長 中村友哉氏)
仮設建設に8カ月 豪雨被災で二重苦

ジャーナリスト・青木理氏
復旧の遅れは深刻
2024年に起こった出来事として決して忘れてはならないのは、元旦に発生した能登半島地震である。私は地震発生直後の1月中旬と4月中旬に取材に行き、12月にも再び能登に入った。いずれも駆け足で回っただけなので、能登を十分にウォッチしてきたと胸を張って言えるようなものではないが、幾度か現地取材することで見えてきたこともあった。
まず客観的に言えば、この1年で道路の復旧はかなり進んだ。道路が整備されなければ復旧作業にあたる人々もボランティアも現地に入ることができないので、最優先に対応したのだろう。しかし、倒壊した家屋の撤去やがれき処理はなかなか進んでおらず、1月に行ったときと同様、倒壊家屋などがあちこちに放置されたままになっていた。実際、昨年の11月末時点での石川県の集計をNHKが報じたところによれば、公費解体(半壊以上の住宅などの解体や撤去を自治体が所有者に代わって行う解体)の進捗(しんちょく)状況は、珠洲市で48%、能登町は36・1%、輪島市に至っては25・1%にすぎない。所有者が避難生活を送っていて困難が伴った事情などはあったろうが、それでも震災から1年経ってもまだこの程度の進捗率なのはあまりに遅く、異常と言わざるを得ない。
また、先月の取材では仮設住宅も回ったが、ショックを受けたことがあった。すべての仮設住宅を見たわけではないが、珠洲市の最先端、すなわち能登半島の最先端の狼煙地区では、道の駅の脇に仮設住宅がつくられていた。仮設住宅の入り口には入居者の名前が書かれており、ほぼ満室だった。1年も経っているのにまだ仮設住宅から移れる人がほとんどいないのかと思い、入居中の被災者らに話を聞いたところ、「この仮設住宅ができたのは8月だから」と言われた。しかも、8月に仮設住宅ができたのは狼煙地区に限った話ではなく、この辺りでは珍しくないという。被災者の支援や仮設住宅の建設、そして復旧作業の遅れには愕然(がくぜん)とさせられるしかない。
見落とされがちな水害被害
能登半島は9月の豪雨でも大変な被害を受けている。地震の被害が大きかったのでどうしても地震についてばかり報道されがちだが、水害の被害も軽視できるものではない。むしろ豪雨災害の方が深刻だった、という声さえ聞いた。
私は今回の取材で水害の被害が大きかった珠洲市の大谷地区や輪島市の南志見地区、町野地区などを回ったが、すさまじい光景が広がっていた。
たとえば、大谷地区は山に囲まれた谷間の集落なのだが、周辺の山々で片っ端から土砂崩れが起き、土砂と流木と川の泥水によって谷底が埋まってしまっているような状況だった。2021年に熱海で起こった土石流災害のように、違法な盛り土が崩れたのではなく、昔ながらの山々があちこちで崩れ落ち、風景が一変してしまうのは想像を絶する。仮設住宅で暮らしていた80代の女性に話を聞くと、人生であれほどすさまじい雨も、あれほど大規模な山崩れも見たことがない、とため息をついていた。
水害から3カ月たった12月時点でも辺りには流木がごろごろと大量に転がったままになっており、被害の大きさを物語っていた。流木と言っても木の枝が折れて流れてきた、といった程度ではない。おそらくは植林されたものだろうが、巨大な杉の木や直径数メートルに達する木の根が濁流とともに流されてきているのだ。それでも道路は通れるようになっていたが、道路の両脇に大きな泥の壁ができていた。泥を脇に寄せ、何とか道路だけは通したのだろう。
私は東日本大震災の津波をはじめ水害の取材を何度かしたことがあるが、水害による被害は、震災による家屋倒壊などとまた次元が違う厄介さがある。家屋などを埋め尽くす泥は臭いなどもきつく、ひとたび家屋が泥水に埋まってしまうと、それを掻き出して除去するのに膨大な手間がかかり、さらには壁をはがして中まで洗わなければならない。能登でも住民たちが泥をかき出していたが、本当に気が滅入る作業だ。
輪島では子ども支援のNPO活動に取り組んでいる40代の男性に話を聞いたのだが、彼の言葉が印象に残った。彼は震災で家と友人を失い、豪雨災害で職場が水にのまれてしまったが、「地震は巨大な力で思いっきり顔面を殴りつけられた感じ」で、「豪雨災害は鈍い刃物で腹にとどめを刺された感じ」だと漏らしていた。震災にとどまらず、そこにすさまじい豪雨災害までが襲いかかった事実を、私たちメディアの人間がもっと広く深く報道するべきだと痛感させられた。
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