JAの活動:2025国際協同組合年 持続可能な社会を目指して 協同組合が地球を救う「どうする?この国の進路」
震災から1年 能登復旧遅れ 倒壊家屋なお 地域喪失 他人事でなく(2) ジャーナリスト・青木理氏【2025国際協同組合年 どうする・この国の進路】2025年1月8日
ちょうど1年前の2024年1月1日に最大震度7を記録した能登半島地震。復旧も覚めやらぬ中、9月には豪雨被害に見舞われ同地域の痛手は深い。やっと主要道路は開通したものの、多くの倒壊家屋や土砂、流木もいたるところで目に付く。多くの災害取材の経験もあり政治、経済問題などまで幅広く活躍するジャーナリストの青木理氏に震災から1年が経つ能登の問題を聞いた。(インタビュアー 「月刊日本」編集長 中村友哉氏)
見捨てられ感悲し 理不尽な「無関心」
![12d2c38428b99dfe65b97e737a86ee4c[1].jpg](https://www.jacom.or.jp/noukyo/images/12d2c38428b99dfe65b97e737a86ee4c%5B1%5D.jpg)
原発建設に反対した珠洲市
もう一つ私たちが忘れてならないのは、かつて珠洲市には原発をつくる計画があったことだ。石川県を管轄する北陸電力は単独で原発をつくる体力がないので、関西電力・中部電力と組み、それぞれ1カ所ずつ原発を建設しようとしていた。建設場所もある程度決まっており、関西電力とのプロジェクトは珠洲市の高屋地区、中部電力とのプロジェクトは寺家地区を予定地としていた。しかし、地元の人々が猛烈に抵抗したことなどによって計画は頓挫した。
実は、2024年元日に能登半島を襲った強烈な直下型地震の震源地は、高屋地区のほぼ真下だった。豪雨によって猛烈な土砂災害に襲われた大谷地区もその近くだ。そのため、もし原発がここに完成し、運転中だったら、下手をすれば福島と同じように悲惨な事故が起こっていた可能性もある。ある意味で私たちは原発建設に反対した能登の人たちに救われたのだ。
一方、もし原発が建設されていれば、これほどの豪雨災害による被害は抑えられていたかもしれない。原発立地地域には国や電力会社から潤沢な資金が投入され、周辺の河川は治水工事が実施され、道路や地区は整備されるからだ。つまり、珠洲の人々が原発建設に抵抗したおかげで私たちは救われたが、逆に珠洲の人々は豪雨災害による被害にいま苦しめられているともいえる。そう考えれば、珠洲の人々が置かれた現状はあまりに理不尽だ。私を含め原発に懐疑的な目を持つ人たちが、能登の被災者たちにもう少ししっかりとした眼差しを向けなければと思う。
能登を見捨てるのか
今回の取材でもうひとつ胸に刺さり、深く考えさせられた言葉がある。先ほど言及したNPOの方と話していたときに、「もうみんな能登のことなんてあんまり気にしていないんじゃないですか」と言われ、「なぜそう思われるのですか」と聞くと、「11月に流行語大賞が発表されたけど、ノミネートされた30の言葉の中に能登の『の』の字も入っていなかった」と言われたのだ。「ああ、そういうことですねと思いました」と。
彼自身、流行語大賞などにさほどの期待もしていなかったろうし、私も同様だが、そこにはこの国の冷たい総意のようなものが埋め込まれているようにも思われてならない。「見捨てられた」「切り捨てられた」と感じても無理はない。
実際、能登に入るボランティアの数も少ないままだ。これは震災直後に「復旧作業の邪魔になるからボランティアは能登に行くな」といったボランティアバッシングが起こった影響がいまだに尾を引いていると思う。
たしかに半島という地理的な制約は大きかった。金沢市から珠洲市や輪島市などに向かう道路は、のと里山海道と国道249号などに限られ、震災直後には車が殺到して激しい渋滞が生じた。私が震災直後に現地取材した際も、4月に取材したときも、やはり渋滞がひどい状態だった。
ただ、道路網がかなり復旧した今回は渋滞など一切なく、ボランティアの活動には支障がない。本格的な雪の冬を迎えて作業は困難な時期になるが、人手はいくらあっても足りないのが現状だ。また、能登半島と同様のことは、近い将来どこにでも起きうる。巨大地震はもちろん、温暖化に伴う豪雨災害や水害は毎年のように全国各地で起きている。だから能登の現状に真摯な視線を向けなければ、それはいずれ必ず自分たちに返ってくるだろう。
一方、この国は国力がどんどん落ち、少子高齢化に歯止めがかからず、各地で過疎化が進む中、大きな災害が起こった場合、復旧に相当時間がかかることが予想される。特に能登と同じような過疎化や高齢化が進む地方で災害が起これば、「そんなところを復旧して何の意味があるのか」といった冷淡な声があがりかねない。そういう意味では、能登の現状は日本が抱える諸問題の縮図と言っていい。こうした状況をこのまま放置していいのか、手を差し伸べて支え合うのか、私たち全員が問われている。
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