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JAの活動:食料安全保障と農業協同組合

【座談会】食と農は「生きる」共通土台 新たな共存モデルけん引を(1)2026年1月15日

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「食と農の安心」も含め、日本を取り巻く安全保障環境は緊迫の度を増している。「令和の米騒動」で浮き彫りになった課題は何か。食の安心を守り農の裾野を広げるため、協同組合はどのような役割を果たすのか。JA、労働者協同組合、農業経済学の論客がそれぞれの立ち位置から、「いのちを支える経済」の展望を語り合う。

左から文芸アナリスト・大金義昭氏、日本労働者協同組合連合会理事長・古村伸宏氏、JAぎふ組合長・岩佐哲司氏、横浜国立大学名誉教授・田代洋一氏

米騒動から農業理解も

令和の米騒動をめぐって

大金 2026年の年頭にあたり、内外の厳しい情勢を打開していくために協同組合がどのような役割を果たしていくべきか。「食料安全保障と協同組合の役割」というテーマを念頭に存分にご議論ください。2024~25年は米不足が招いた米価高騰が「令和の米騒動」と呼ばれ、一方では私の友人や知人たちが呼びかけた「令和の百姓一揆」と銘打つトラクターデモなどが行われました。まずは直近の米問題について、岩佐さんから口火を切っていただけますか。

岩佐 JAの現場から見たこの2年半についてお話しします。米は価格弾力性が低いために、需給バランスが少し崩れるだけで価格が乱高下する。当初は何が起きているのか良く分からず、「米がどこかに眠っている」と言われ、いったいどこに隠されているのかが話題になりました。約10年前の「農協改革」の際に往時の農水事務次官が何を考え、何をしたいのか良く分からなかったように、「米騒動」もわけが分からずに始まった。次第に「米が足りない」ことがはっきりし、農水省も需給見通しの誤りを認めました。

2023年産米は、農家が売った後に価格が上がったために、もうけたのは中間流通業者でした。24年産米は農家も集荷・卸業者も収益が上がりましたが、25年産米は先安観が広がり、高く仕入れた集荷・卸がどうなるか見通せない不安定な状況が続いています。

JAぎふでは、20年から米集荷において3カ年の複数年契約を導入しています。50俵以上JAに出す担い手から買い取り方式で実施し、26年度からの3カ年は玄米60キロあたり2万7000円で提示予定です。「上が20%、下が15%の範囲内で価格を動かします!」と買い手と約束した複数年契約です。この騒動を経て、JA職員の間でも概算金への理解が進み、農家と一緒に考えることが出来るJAになったことは、結果的に良かったと思っています。

また、1年を通して玄米を同一金額で予約していただいて指定日に届ける「蔵出し米」という売り方を行っています。25年産米は価格が1・5倍に上がりましたが、早々に完売しました。生協とのコラボも進め、JA直売所と同時に生協の店頭にもJAから納品した新米が並んで喜ばれました。

大金 「時給がたったの10円」と言われた米農家の窮状が広く知れ渡り、「ピンチがチャンスに」なった!

岩佐 そう思います。「令和の米騒動」で深まった消費者理解を踏まえ、これからどのように消費者と地域農業を考えていくかが課題です。

大金 古村さんはいかがですか?

古村 労働者協同組合は「働く」という行為を協力し合って成り立たせていく協同組合なので、「介護」「子育て」などケアの分野が多いのですが、事業所の多くでこの5年ほど、事業の中に「小農活動」を採り入れ、「くらしやカルチャーとしての農的活動」に取り組んでいます。そこにまず、私たちの米や農の問題についての"当事者性"があります。

レアケースですが、山口県光市にある50人程度の労働者協同組合は、事業としてではなく、いわば福利厚生的な親睦活動として、耕作放棄地で「田んぼづくり」を15年間してきました。取れた米は関わった時間にかかわらず組合員で均等に分配し、この3年、自分たちが1年間食べるのに必要な米の全量を分配し、お金を払わずに主食が食べられる状態をつくり出してきました。米価高騰で「子ども食堂」への寄付が減ったために社協から依頼があって余剰米を寄付し、来年からは「子ども食堂」の関係者にも参加してもらい、内輪の取り組みから地域のサークル活動へと広げる予定です。

故・内橋克人さんが唱えていた「FEC(Food・Energy・Care)自給圏」の事業化をめざし、ケア(C)はかなり広がったのですが、食(F)とエネルギー(E)はそう簡単に事業化できずに足踏みをしてきました。しかしいきなり事業化できなくても、「小農活動」という形で少しずつ進んでいけるかもしれないと気づきました。

私の出身は米産地の丹後で、祖父は農業をしながら大工や絵描きもするマルチワーカーでした。今の労働者協同組合にも当時の「百姓」に通じるマルチワーカーがけっこういます。米価高騰は、生きていくための基盤に関わる領域で働く人たちの仕事が総じて軽視され、何だかバブリーなところに金が吸い寄せられていく構造を明らかにしました。「令和の百姓一揆」にヘルパーの人たちも集結し、「人間を支える産業を大事にしろ!」みたいな運動になったら、もっと迫力が出るなと、「百姓一揆」の会場で思いました。

JAぎふ 岩佐組合長

JAぎふ組合長・岩佐哲司氏

効率偏重で足元に危機

岩佐 米問題では確かに、消費者理解がかなり深まりましたね。当初は「農協さん、大変やね」という同情の中に「本当は悪玉では?」という疑いも含まれていました。だんだん事情が分かってくると、「そんなに現場は疲弊していたのか」「知らなくてごめんなさい」と声をかけられるようになりました。「いくらならいいの?」とも聞かれますが、私の中での結論は「生産者には玄米1俵(60キロ)2万5000円が渡り、消費者は精米5キロ3500円で買える」という水準です。

田代 消費者が納得する価格は、もう少し安い2500円くらいでは?

岩佐 全部の米が3500円ということではなく、幅を持った価格帯の中央値が3500円ということです。米価の問題というより、購買力のベースになる賃金が上がらずに物価に追いつかない現状が基本的な問題ですね。

田代 「令和の米騒動」では「生産調整」が原因と取りざたされましたが、全国の田んぼで主食用米を作ると国内需要より大幅に過剰になるので、ある程度の「生産調整」は必要です。ただ、今回の米不足は農水省の需給見通しが外れ、「生産調整」が行き過ぎた「人災」と言えます。農水省は1971年、減反を本格化した当初から単年度需給均衡論に立ち、翌年度の消費需要分ぎりぎりしか当該年度の主食用米を生産させないようにした。いわば「ハンドルに遊びのない車」の設計です。今回は農政が、その欠陥車を運転して「信号無視」をした。2024年当初から消費者米価が上昇し、民間在庫が減って「不足」のシグナルが出ていたのに、農水省はそれを見落として「足りている」と突っ走ったのです。25年8月にようやく誤りを認め「米は不足していた」と表明しましたが、十分な原因究明には至っていません。

国民はどう見ているか。農水省の「食生活・ライフスタイル調査」(4000人対象)によれば、2024年度は米騒動前の時点の調査ですが、「日本農業の課題」は「農業従事者の減少・高齢化」が第1位で38%です。「日本農業はこれからもやっていけるの?」という構造的な危機があることをすでに見ているわけです。

岩佐 食、特に主食と医療と教育に関しては、「価格をマーケットで決める」という自由主義経済の原則とは別であるべきだと思いますね。安心して再生産できる「制度設計」を急がないと、同じような混乱が何度でも繰り返される。

古村 日本もいよいよ「経済をどう考えるか?」というところに来ています。経済を大きくするよりも、もっと循環するようにした方が豊かになる。お金だけが価値づけの道具として独走していることには強い違和感があります。

また、「工業的に考えるという発想」を分解する必要もあります。田代先生が言われた「ハンドルに遊びのない車」の話は"効率最優先"の象徴で、生きることに遊びや余白がなくなって恐ろしい。食べ物はみんな「生き物」なので、他の「生き物」と共に人間がどう生きていくのか。そこを遠くに見据え、当面何をするかを考えたいと思っています。

【座談会】食と農は「生きる」共通土台 新たな共存モデルけん引を(2)へ続く

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