JAの活動:食料安全保障と農業協同組合
【座談会】食と農は「生きる」共通土台 新たな共存モデルけん引を(2)2026年1月15日
「食と農の安心」も含め、日本を取り巻く安全保障環境は緊迫の度を増している。「令和の米騒動」で浮き彫りになった課題は何か。食の安心を守り農の裾野を広げるため、協同組合はどのような役割を果たすのか。JA、労働者協同組合、農業経済学の論客がそれぞれの立ち位置から、「いのちを支える経済」の展望を語り合う。
農への関り 主役意識で
協同の原理と地域づくり
大金 協同組合が地域社会で果たす役割は?
岩佐 JAの「協同活動」と「総合事業」は"車の両輪"と言われますが、株式会社が営利事業の余力で社会貢献をするのとは異なり、協同組合は「暮らし」そのものがテーマです。私は組合長になって「ノルマ」をなくした。職員には日頃「組合員の負託に応えるのが仕事」であり、「総合事業で暮らしのお手伝いをしよう!」と話し、そうした仕事の仕方に変えようとしています。
生産部会を中心とする"ナショナルブランドづくり"は販売量を増やして利潤の増大を目指しますが、「地消地産」にも力を入れています。消費者が地域で出来たものを食べようとし、生産者は地域の人たちが欲しいものを作ろうと思えば、良い地域になっていく気がする。JAが土づくりや販売を担い、畑に来た消費者に「栽培と収穫」を担ってもらう「シェア農業」(仮称)を始めました。これは、「体験農園」「貸農園」「シェア農業」を経て、もっとしたい人は「農家」になるという構想なのです。
「学び」はJAの現場でも重要で、協同組合の先に立つ職員をまず変える必要がある。以前は「そんな暇あったら、共済の一つでも取って来い」という上司もいた。そうじゃないJAをめざす動きを職員たちが新たに始めてくれているので、良い方向には向かっています。
また、定年後の男性を農業でつなげる「コミュニティーづくり」をしたいと考えました。キャッチフレーズは「年金はお母ちゃんに、小遣いは農業で!」。JAの本業として地域づくりに取り組み、結果的にJAの事業も利用してもらえるというようになっていくのでは、と大いに期待しています。
大金 柔軟で、しかも原理的な取り組みですね。古村さんは?
古村 岩佐さんのお話は、農への多様な関わり方を新たに開発するということですね。私たちのやっている「小農」もそうで、農業全体から見ると「中心」ではなく「周縁」ですが、物事は「周縁」からしか変わらない。お金だけではなく、価値判断の物差しを増やさなければと思っています。
国際協同組合年(IYC)があまり盛り上がらなかったのは、日本で延べ1億人以上いる組合員が主人公になっていない、協同組合活動の中でも主役になっていないケースが少なくないからではないか。その見直しが「ポストIYC」のテーマです。

日本労働者協同組合連合会理事長 古村伸宏氏
地域再構築 農協の出番
古村 「社会的起業」で地域づくりと事業化とを組み合わせる試みをする人たちが、そこで暮らしている人たちの「主権」や「自治」がないと絶対にうまくいかないという認識から、協同組合の原理を学び始めています。協同組合の側こそもう一度、原理・原則から自分たちを見直す必要がある!
田代 「食料安全保障」も「一人一人の食料安全保障」というFTAの定義を国際標準としてうのみにするのではなく、それぞれの国の状況に応じた「食料安全保障」を考えるべきです。「一人一人」は、主として途上国の食料危機を踏まえている。それに対して現在、国際的には栄養(健康管理)や持続性の問題まで「食料安全保障」に含めようという動きもある。これは主として先進国からの主張のようです。このように、それぞれが置かれた状況によって「食料安全保障」の考え方は異なる。そのなかで日本は食料自給率の低さこそが問題です。
話が戻りますが、先ほど山口の耕作放棄地での米作りや岐阜の定年後男性の話が出ました。私も定年退職してつくづく思ったけれど、ふり返ったら「地域」に居場所がないんですね。定年後の男性が地域を見つける道筋を協同組合がつくってくれるのは大変ありがたい。先の農水省の調査では、食と農業とのつながりを「近所に田畑がある(あった)」ことで感じる人が2021年度には33%あったのに、2024年度には23%しかない。わずか3年で10ポイント減少し、このままいったら遠からずゼロになります。近所に田畑があるという環境を協同組合がつくり出していかないと、農と食とが切れちゃうなとつくづく思います。
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