【全中・経営ビジョンセミナー】農産物流通の課題解決を 報徳思想を現代に 静岡県掛川市で最終セッション(2)2026年3月3日
JA全中・教育部は2月3~5日、静岡県掛川市で今年度の「JA経営ビジョンセミナー」の最終となる第4セッションを開催した。現地視察と講演、討議を行い、参加した11人が年間のまとめとしてそれぞれの経営ビジョンを発表した。
自分と社会のバランスをとる
続いて視察した大日本報徳社では、石野茂子専務が、二宮尊徳の報徳思想が遠州掛川から全国へ広がった経緯を説明した。また、「たらいの水」の教えを紹介。水を自分の方へかき寄せれば遠ざかり、相手の方へ押しやれば自分に戻ることにたとえ、「人のために尽くす行いが結果として自らに返る」という報徳の根本思想が、今日の協同組合精神や地域社会の助け合いにも通じることを示した。
大日本報徳社の鷲山恭彦社長
同社の鷲山恭彦社長は「報徳思想と現代の課題」をテーマに講演した。
報徳の考え方は四字熟語で説明できる。「万象具徳」は、あらゆる存在に価値や役割が備わっているという思想で、日本の八百万の神の発想にも通じる包摂的な考え方である。「以徳報徳」は、徳をもって徳に報いる、人それぞれの良さや取柄を社会に役立つ力へ高めていくことを意味する。「積小為大」は、小さな努力を積み重ねることで大きな成果につながり、人間の可能性は無限であるという人間観を示す。「一円融合」は、対立するものを排除せず、一つの円の中に入れて考えることで共通点を見いだし、矛盾を解決する発想で、社会や国際関係にも通じる考え方である。
尊徳はまた、「天道と人道」「道徳と経済」という対立も直視した。経済を伴わない道徳は現実社会では成り立たないとし、「新田の開発と心田の開発」を対にして、物の発展と心の成長の両立を説いた。これを生活の実践として示したのが「至誠・勤労・分度・推譲」であり、誠実に働き、身の丈に合った生活を守り、余剰を自分や将来、そして社会へ回すという生き方である。
報徳思想は江戸時代に多くの農村を再生した実践思想であり、その核心は「分度」にある。農民だけでなく、武士や大名にも節度ある財政運営を求め、支配する側が分度を守ることで民衆も安心して働ける社会を目指した。これは平和的な社会改革の思想とも言える。また、金融の助け合い制度である「五常講」は後の協同組合や信用組合の精神にもつながっている。
戦後復興や高度経済成長を支えた精神にも報徳の考え方があったと言えるが、近年は個人主義や市場原理の進行によって利他の精神が弱まりつつある。だからこそ、自分と社会とのバランスをどう取るのかが重要であり、報徳思想と協同組合の考え方をこれからの社会にどう生かしていくかが問われている。
セッションコーディネーターの曽根秀一静岡文化芸術大学教授
参加者が経営ビジョンを発表
ビジョン発表の様子
視察と講演後、質疑やセッションコーディネーターの曽根秀一静岡文化芸術大学教授の助言を受け、参加者がそれぞれのJA経営ビジョンを発表した。各参加者とテーマは以下の通り。
参加者の意見や質問に答える発表者
▽かながわ西湘をレモンの一大産地に~不耕作地解消、農家の所得向上を目指して~:JAかながわ西湘・星野真一常務理事
▽はだのガストロノミー宣言 JAはだのが目指すもの:JAはだの・三瓶壮文常務理事
▽大型農産物直売所「セレサモス」における地産地消ブランディング強化を目指した事業投資について:JAセレサ川崎・中山敏夫常務理事
▽協同組合における人財育成:JA相模原市・内山雅之専務理事
▽JAの活力の源泉は、「組合員の協同活動」:JA松本ハイランド・神田温躬常務理事
▽シニアサポート&コメを軸とする循環型事業展開について:JA上伊那・福澤一成常務理事
▽わが国の食と緑と水を守る!:JAみなみ魚沼・駒形正樹常務理事
▽「JA経営ビジョンセミナー」に参加して:JAぎふ・林良直常勤監事
▽協同組合理念の実現に向けて:JA兵庫南・野村隆幸組合長
▽共感と共鳴による協同組合の地域づくり~地域は社会的情緒資産に溢れている~:JAしまね・嘉本智美常務理事
▽JAしまねのイノベーション:JAしまね・和田守正則常務理事
令和7年度「JA経営ビジョンセミナー」の終了に当たって:JA全中・教育部
「JA経営ビジョンセミナー」は、令和4年度の開始以来、社会課題の解決に挑む企業経営者の現場を訪問し、その実践から学びを得ながら、自JAのパーパスに基づくビジョンを構想する機会として実施してまいりました。本セミナーは、JAの未来を担う人材が組織・事業変革のヒントを得る場であるとともに、志を共有するJA経営者同士がネットワークを築く場として位置づけてきたものです。
これまでの4年間(令和4~7年度)で、延べ45JA・49名の役員の皆様にご参加いただきました。受講者からは、「JA以外のフィールドワークや経営者間のディスカッションによる学習効果が非常に高い」「参加者同士のネットワークが実務に役立つ」など、多くの高い評価をいただきました。
一方で、残念ながら本セミナーは全国的な広がりには至らず、次年度以降の参加者確保が極めて困難な状況にあります。このため誠に遺憾ではありますが、本セミナーは令和7年度をもって休止することといたしました。
これまでご参加いただいた皆様、フィールドワーク先の団体・企業の皆様、そしてセミナーの実施に多大なるご尽力を賜りました奥村昭博先生をはじめとする講師陣に、心より御礼申し上げます。
なお、JA経営人材の育成については、今後も「JA経営戦略実践プログラム」や「オンラインJAアカデミー」など、実務に資する研修を継続してまいります。引き続きのご参加・ご活用を心よりお願い申し上げます。
重要な記事
最新の記事
-
【全中・経営ビジョンセミナー】農産物流通の課題解決を 報徳思想を現代に 静岡県掛川市で最終セッション(1)2026年3月3日 -
【全中・経営ビジョンセミナー】農産物流通の課題解決を 報徳思想を現代に 静岡県掛川市で最終セッション(2)2026年3月3日 -
【サステナ防除のすすめ】IPM防除の実践(害虫防除編)自然と環境を"流用"(1)予察や天敵も力に2026年3月3日 -
【サステナ防除のすすめ】IPM防除の実践(害虫防除編)自然と環境を"流用"(2)フェロモン逆手に2026年3月3日 -
【サステナ防除のすすめ】IPM防除の実践(害虫防除編)自然と環境を"流用"(3)物理的防除で補完2026年3月3日 -
【サステナ防除のすすめ】IPM防除の実践(害虫防除編)自然と環境を"流用"(4)忌避効果も兼ねて2026年3月3日 -
飼料用米多収日本一 10a912kg 山口県の池田候男さん2026年3月3日 -
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2026年3月3日 -
コシヒカリの産地間格差に逆転現象【熊野孝文・米マーケット情報】2026年3月3日 -
飲食店の自動化・省力化ガイドブックを作成 実践的な進め方を解説 農水省2026年3月3日 -
島原雲仙の新鮮野菜や長崎和牛、デコポンなど対象商品が20%OFF JAタウン2026年3月3日 -
男爵薯のおいしさ引き継ぐ新品種「北海道産ゆめいころ」じゃがバター ファミマで発売 JA全農2026年3月3日 -
第19回日本ミックスダブルスカーリング選手権大会「ニッポンの食」で応援 JA全農2026年3月3日 -
日本香堂と初コラボ「シャインマスカット」「白桃」香る線香を新発売 JA全農2026年3月3日 -
「JA全農杯全国小学生選抜サッカー大会」関西代表チームが決定 優勝は「ヴィッセル神戸」2026年3月3日 -
【スマート農業の風】(24)営農管理にグループデータが有用2026年3月3日 -
ベランダで米づくり「バケツ稲づくり」個人申し込み受付開始 JAグループ2026年3月3日 -
【役員人事】住友化学(4月1日付)2026年3月3日 -
学生ビジネスプランコンテスト「JUMPVol.5」受賞チームが決定 あぐラボ2026年3月3日 -
三菱マヒンドラ農機が農機事業撤退 2026年度上期で生産・販売終了 会社は解散2026年3月3日


































