農薬:サステナ防除のすすめ2025
【サステナ防除のすすめ】IPM防除の実践(害虫防除編)自然と環境を"流用"(2)フェロモン逆手に2026年3月3日
サステナブルな防除体系の主体となるIPM防除技術であるが、化学的防除以外の防除法は、病害、虫害、雑草ごとに異なるのでそれぞれで整理しておいた方が防除戦略への活用が検討しやすくなると考え、病害編、害虫編、雑草編の三つに分けて整理を試みている。今回は害虫防除に使用するIPM防除技術を整理してみよう。
フェロモン逆手に
(3)細菌を有効成分にするもの
細菌を使用した生物農薬には、BT剤がある。
BTとは、バチルス チューリンゲンシスという細菌の名前の頭文字を取ったもので、もともとはカイコの卒倒病の病原菌である。BT菌は、アルカリ性であるチョウ目害虫の消化管内で毒となる結晶タンパクをつくる。この結晶タンパクを食べたチョウ目害虫は食中毒を起こし、やがて死に至る。
BT剤には、死菌剤と生菌剤があり、死菌はBT菌を培養し死滅させて結晶タンパクを集めたもので、生菌は、菌自体が生きており、散布後も作物体上で生き続けて結晶タンパクを作り続ける。このため、効果の持続性と安定性で生菌に分があるようである。バチルス菌は納豆菌の仲間で、作物の表面で生きていける性質を持っていることを利用したものである。

(4)性フェロモンを有効成分とするもの
昆虫は、次世代を残すために、メスが性フェロモンを放出し、オスがそのフェロモンを頼りにメスを探し出し、交尾をする。このメスが出すフェロモンを特定し、それに似たものを人工的に作り上げ、それを利用しているのがフェロモン剤である。
主な誘因型フェロモン剤
フェロモン剤には、大きく分けて「交信かく乱型」と「誘因型」があり、それぞれで効果を示すメカニズムが異なる。
①誘因型
文字通り、特定の害虫メスのフェロモンに似た物質(「ルアー」という)を人工的に作り出し、そのルアーを粘着シートや捕殺容器などに設置し、害虫のオスをおびき寄せて殺虫するものである。結果として害虫が交尾する機会が減るため、農作物被害の大半を占める幼虫の発生が減るという仕組みである。
このため、この誘因型はもっぱら害虫発生の時期や量を観測するフェロモントラップとして予察事業に活用されることが多い。
②交信かく乱型
現在流通しているフェロモン剤の多くはこのタイプである。
交信かく乱型が防除効果を発揮するメカニズムは、メスのフェロモンに似た物質をほ場全体に漂わせることで煙幕を張り、メスの位置を特定できないようにすることである。
ただ例外もある。それは、たまに行き当たりバッタリで偶然にも本物のメスと出会うことに成功するオスがわずかながらいたり、フェロモンが設置されていない畑などで交尾を済ませたメスが、フェロモン設置の畑に飛び込んでくる場合などである。
(5)フェロモン剤の上手な使い方
①誘因型
誘因型は、前述のとおり予察に使われることが多いが、一部防除目的に使用されるフェロモン剤もある。
②交信かく乱型
交信かく乱型は、その目的から交尾阻害型とも呼ばれる。このタイプのフェロモン剤は、ロープ状かスティック状のディスペンサーと呼ばれる専用容器にフェロモン様物質が封入されており、そのディスペンサーから徐々にフェロモン様物質が放出されてほ場内を漂い効果を示す。
用法には、害虫の特性から割り出され、実地試験によって効果を確かめられた方法が示されており、具体的には単位面積あたりの設置本数・長さ、設置間隔、設置垂直位置などが定められている。フェロモンの効果を最大限発揮させるには、この用法を確実に守って使用することにつきる。ただ、10㌃に数百本のディスペンサーを設置しなければならないものもあり、設置には労力がかかることは覚悟しておいてほしい。その分、農薬散布の量や回数を大幅に減らして、害虫の被害を格段に軽減できるというメリットもある。
この交信かく乱型は、広い面積単位で一斉に使用する方が効果も安定しやすく、事例では、20~30㌶ほどのまとまった面積が必要だとされている。
また、ほ場の周囲(連続したほ場の周囲)ではどうしてもフェロモン煙幕に隙間ができやすくなるので、周囲ではディスペンサー量を多くすると良い。
主な交信かく乱剤とその使用方法
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