農薬:サステナ防除のすすめ2025
【サステナ防除のすすめ】IPM防除の実践(害虫防除編)自然と環境を"流用"(1)予察や天敵も力に2026年3月3日
サステナブルな防除体系の主体となるIPM防除技術であるが、化学的防除以外の防除法は、病害、虫害、雑草ごとに異なるのでそれぞれで整理しておいた方が防除戦略への活用が検討しやすくなると考え、病害編、害虫編、雑草編の三つに分けて整理を試みている。今回は害虫防除に使用するIPM防除技術を整理してみよう。
予察や天敵も力に
1.IPM防除とは(共通概念)(省略:病害編参照)
2.IPM防除と発生予察の密接な関係(省略:病害編参照)
3.害虫防除における発生予察の活用の仕方
害虫の発生量は越冬量や海外からの飛来量、あるいはその年の気候によって左右されるため、それら環境条件の変化に応じて発出される。例えば、カメムシ(特にチャバネアオカメムシ、ツヤアオカメムシなど)は、スギやヒノキの「球果(きゅうか:実)」を重要な餌として繁殖に利用しており、熟した針葉樹の球果内の種子を吸汁し山林内で増殖する。このため、スギやヒノキの結実量(豊凶)が、カメムシの大量発生を左右する要因となる。スギやヒノキなどの球果は、年次変動(豊凶)があり、年ごとの変動が大きく、気温、降水量、前年の栄養状態などが影響する。これらの樹木が資源を貯蓄し、特定の年に一斉に大量の種子を生産する「マスティング」が発生したときなどは特に量が多くなる。この球果量が多くなるとカメムシの増殖量も多くなるので、球果が多い年などはカメムシの飛来を警戒する注意報や警報が出される。
また、海外から飛来するウンカなどは、偏西風の状態などから飛来時期や量などを予想したり、実際の飛来量を計測して注意報や警報が出される。
いずれも害虫の場合は、発生量の定点観測と発生要因の分析をもとに発生予察がなされている。害虫の場合も、できるだけ「注意報」の段階で防除するようにした方がよい。
4.害虫防除に活用されるIPM防除技術
主な防除技術は以下の表のとおりだが、IPM防除では、これらを単独あるいは、複数組み合わせてより効率的な防除を目指すことになる(表)。

5.害虫防除に使用される生物的防除法
害虫防除に使用される生物農薬の有効成分には、天敵や細菌、糸状菌といったものがある。
いずれも害虫防除効果を示す有効成分は、生き物あるいは生物由来のものであるので、害虫防除効果を最大限に発揮するには、その有効成分が活動しやすい環境を整えてやる必要がある。その"活動しやすい環境"については、それぞれの商品のラベルや説明書に詳しく書かれているので事前によく読んで理解した上で使用してほしい。
以下、有効成分の分類ごとに使用上の注意点を整理してみた。
(1) 天敵を有効成分とするもの
文字通り、害虫の天敵を活用して製品化したものである。これらは生物農薬であり農薬として国の登録を受けている。これに対し、自然発生する在来天敵を利用する場合があるが、特定防除資材(むかし、特定農薬と呼ばれていたもの)として農薬とは区別されている。
両者の違いは、防除の成否が自然任せになるか、自分でコントロールできるかにある。在来天敵はその発生を自然にお任せであり、時に思うように発生してくれず、うまく害虫防除ができない場合もある。これに対して、生物農薬の天敵は、放飼時期や量を人間がコントロールすることができるので、害虫防除に適した時期に処理できて一定の防除効果を得ることができる。
もちろん天敵が一番活動しやすい環境(温度、湿度、餌となる害虫の量)を見極めてやる必要があるが、上手に使えば、化学農薬の散布回数や薬剤抵抗性害虫の発生リスクを低減できる。
主なバンカープランツと温存できる天敵
天敵も餌を食べないと生きていけないので、餌となる害虫がある程度いないと生活できない。この餌の数が少ない時に天敵の生活の場を提供するのが、バンカーシートと呼ばれるもので、利用できる天敵に限りがある(スワルスキーカブリダニなど)が、天敵を安定放飼し、防除効果も安定するので、利用できる場合は一度試してみるとよい。また、ほ場内(あるいは至近に)天敵が過ごすのに適した植物を植生して天敵の生活の場をつくるバンカープランツの植え付けといった方法もあるので適宜活用するとよい。
(2)糸状菌を有効成分にするもの
これらは、害虫に感染して発病させて殺虫効果を示すものである。基本的に糸状菌の胞子を製剤化しており、それを害虫の体に付着させ感染させないと効果が出ないので、散布の場合は、害虫の体に付着するように散布する。この際に注意することは、使用法を正しく守ることである。例えば、パイレーツ粒剤は、アザミウマが土の中で蛹になることを利用して、土中から出て作物に移動する際に感染するようにあらかじめ土壌に粒剤をまいておくと高い効果を発揮する。
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