JAの活動:食料安全保障と農業協同組合
【座談会】食と農は「生きる」共通土台 新たな共存モデルけん引を(3)2026年1月15日
「食と農の安心」も含め、日本を取り巻く安全保障環境は緊迫の度を増している。「令和の米騒動」で浮き彫りになった課題は何か。食の安心を守り農の裾野を広げるため、協同組合はどのような役割を果たすのか。JA、労働者協同組合、農業経済学の論客がそれぞれの立ち位置から、「いのちを支える経済」の展望を語り合う。
共益の体験 場づくりを
協同組合間連携と次世代に託すもの
大金 「協同組合間連携」については?
岩佐 生協の協力を得ながら「食と農の祭典」を3回実施してきました。地域で農を考えようというお祭りを、銀行や信用金庫、商工会議所も含め地域に関わる企業にも入ってもらいながら一緒につくり上げていきたい。農業が発展するためには、そういう人たちとも連携しながら"トライ&エラー"で地域づくりを進めていきたいと考えています。
古村 日本人は「八百万(やおよろず)の神」みたいな感覚をベースに持った民族なので、本来日本的な協同組合の在り方があるはずだと思っています。そこで見ておきたいのは、若い人たちの意識です。日本財団の「18歳意識調査」を見ると、日本の若者は「自分の国が良くなる」と答えた割合が最も低いのですが、大人になって重要な資質は、各国共通して第1位が「多様性を理解し、少数者を尊重する」、第2位が「他人との違いを恐れず、個性を発揮する」です。協同組合が今やるべきことは、組織間の連携よりも、組合員と組合員とが小さなことで協力し合う「協同の体験」です。今の若い世代は「競争して勝つ」よりも「協力し、シェアし合ってお互いに生き延びよう!」という志向が強く、協同組合とも「親和的」です。
田代 「協同組合間連携」で、これまでは「産直」等の"事業"で始まった提携がほとんどでしたが、岩佐さんたちや古村さんたちの取り組みのように、地域を念頭におきながら一緒に出来ることを互いに模索し合い、地域を土台に共通の課題に取り組むことが大切ですね。

横浜国立大学名誉教授 田代洋一氏
大金 異種協同組合や地域の企業などが互いに手を結び合い、それぞれの立ち位置から「積小為大」でコミュニティーの底力をどのように引き出していくか。地道なそうした取り組みの延長線上で「食料安全保障」をめぐる「この国のかたち」をどう考えるか、ご意見を聞かせてください。私は近年、野放しの防衛費拡大路線、言い換えれば外交なき「軍拡路線」や「ネットサーフィン時代のファシズム」とでも言っていいような排外主義的な時流に強い危機感を抱いています。防衛予算が農林予算のおよそ4倍にも肥大化している現状には著しい違和感がある!
岩佐 「軍拡路線」と言われるが、防衛費の増額自体が直ちに危ういのではないという気もする。問題は、戦前のように好戦的な世論が盛り上がり、当時の新聞に代わってネットであおるような流れが生まれ、多くの国民がそれに乗せられて"自国第一主義"に走ることが危ういと考えています。危ういそうした時流について一人で考えるのではなく、みんなで議論できる場が協同組合にはある。そうした「場づくり」は協同組合が得意なので、地域で協同の関係を築きながら、お互いに「考えられる市民」になっていくことが、時流に流されないためには大切なことかなと思っています。
大金 国による規制や統制が何かと強まる時代に、抵抗力を持つ若者が育っていますか?
古村 私は希望を持っていて、「若者に委ねていい!」と思っています。彼らの「抵抗」は、私たちの経験と異なる形で始まっている。たとえば「教育機会確保法」が制定されるところまでいった"不登校"です。「こんな場所に行きたくない!」という意思が、学生運動やデモじゃない形で「制度」を変えるというのはすごいことです。
「私」、すなわち"自我"は他者との交流の中で形成される。これは「生物多様性」の原理にも通じます。「生物多様性」がいちばんの核にあるという概念は、私たちの文化にある「八百万の神」と「親和性」が強いので、世界を覆う「気候危機」を解決するリーダーシップは日本の中から生まれやすいのではないか。その近いところにJAのポテンシャルがあるようにも思います。
若い人たちはネットに多くの時間を費やしていますが、その時間をちょっと削ってでも「いのちに触れている」という実感が持てるような場所をどれくらいつくれるか。それが協同組合の課題です。「いのちに触れる」ことは広義のケアに当たり、広義のケアはいのちを滅ぼす軍事とは真逆の対立軸になる!
若い人たちが車も家もシェアするというのは、まさに「共益」です。「共益」の最たる組織である協同組合の中で、いま少しずつ「公益」と重なる領域が広がり始めているのが地域づくりです。それを進めていく時の経営論や組織論、リーダーシップ論は、協同組合が頑張って開発する課題です。対立でも協調でもない「共存」という考え方を私たちは編み出していかなければなりません。日本から出てくるそんな「新しいモデル」が国際化していくという動きが、協同組合が「種」になって実現できるかもしれません。

文芸アナリスト 大金義昭氏
国消国産で自給率向上
大金 なるほど! 新しい運動に大いに期待したいのですが、古参の協同組合であるJAはいかがですか?
岩佐 素晴らしいなと思いました。JAは新しいことを始めるのが苦手ですが、協同組合に集まっている人たちは「話せば分かる」ので、議論をしながら進めていきたいですね。
大金 締めに田代さんのコメントをどうぞ!
田代 「軍拡路線」は気になりますね。国を防衛することはもちろん重要ですが、日本は「侵略に対して地上戦を通常兵器で戦う」といった歯止めを持つべきです。防衛予算と農林予算や福祉予算とのバランスをとる必要がある。
国民生活の「安全保障」にとって最も大事なのは「食料安全保障」です。その核は前にも述べたように「食料自給率の向上」です。高市早苗首相は昨年11月6日の参議院でも「100%を目指したい」とおっしゃっている。結構なことですが、自給率の1ポイントを引き上げるにも膨大な努力と予算が求められることを分かっていらっしゃるのか心配になる。「食料自給率の向上」の土台は、国民(日本の領土内に住む人びと)が国産品を食べる「国消国産」の地道な生活実践あってのことで、そのさらなる土台は、食べる消費者・生協側と、作る生産者・JA側との「地消地産」の連携です。その点が具体的な実践や考え方を通じて語られたように思います。
振り返ると、日本は明治維新から敗戦までが80年。それと同じ80年の歳月が、敗戦から今日まで流れました。その時間の流れで言えば、2026年からは「新しい時代」が始まる。この際、改めて食と農の「協同の輪」を広げていきたいですね。
【座談会を終えて】
高度に政治・経済的な課題も含め、岩佐さんと古村さんにはそれぞれの事業・活動の現場から実践的な見解を示していただいた。歯切れのよい二人の本質的な議論に絡み、田代さんからは「食料自給率の向上」を基軸にした「食料安全保障と協同組合の役割」を端的に指摘していただいた。
2026年新年号のこの座談会が5年後、10年後にどのような評価を読者の皆さんからいただけるか。「新たな80年」の始まりにあたり、確かな方向性を見定めた実践の積み重ねの先にこそ、時代の突破口があることを教えられた。拙い進行を助けていただいた出席者の皆さんには心から感謝したい。(大金)
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