【米国大統領選2016】TPP仕切り直し 対日要求は変わらず 2国間交渉で圧力強まる(2) ー明治大学商学部 柿崎繁教授2016年11月12日
明治大学商学部・柿崎繁教授
--アメリカの政治と社会は当面どんな状況になりそうですか。
アメリカ社会の分断、分裂が深まるのではないかと言われますが、それはその通りだと思います。議会がそうであるように、もともと基本的には考え方が違うと妥協もしません。アメリカには経済的後退と覇権の揺らぎとともに「ゆとり」がなくなっており、不満・軋轢・対立が鬱積しています。この状況は当面続くと思います。
民主党は大統領選挙についてはまがりなりにも総力戦で対応しましたが、トランプによりこれまでの支持基盤といわれた労働者階級を中心とした中間層が離反しており、根本的な対応が求められるでしょう。共和党は主流派が見放した異端児といわれるトランプが勝ったことで共和党内をどう糾合し再編していくが問題になりそうです。元共和党大統領ブッシュはトランプに投票しなかったと報道されているほどですから。
◆ ◇
生活が不安定になったのは海外から多くの商品を輸入し巨大企業がどんどん海外に出ていって職が奪われたからだと煽ってきましたが、その象徴がTPPやNAFTAといった通商協定です。
TPPについてトランプは絶対に反対で大統領に就任したら離脱するとまで言っています。TPP反対の下でトランプが大統領になり、その勢いで議会も共和党が多数になるので、この発言は重いです。
しかし、トランプには共和党の主流派とどう折り合いをつけるか、という問題が当然出てくる。主流派のバックについている巨大多国籍企業がいろいろと要求をしてくるでしょうから。現時点では議会選挙でも共和党が優位とのことですから、トランプの政策実現のためには共和党主流派で議会幹部との折り合いをつける必要が出てくるでしょうしね。
◆ ◇
もともとオバマは輸出を2倍にして雇用を増やすことを目標にし、その一環にTPPを位置づけて交渉に参加しました。安全保障上のリバランス政策という観点からも中国の膨張を抑えながらもアジアの成長を取り込みたいという考えもあり、あわよくば中国も巻き込んでアメリカ的なやり方を広げ巨大なアジアのマーケットをとろうと考えていたと思います。その意味では経済の活性化と安全保障が連動していたのがTPPです。
一方、安倍政権は対中国包囲という観点から安全保障を意識しTPPに参加したと思います。そしてTPPを口実にして公共投資や経済特区を創ることを通じて規制緩和を一挙に進めようとしてきました。こうしたそれぞれの思惑がトランプ当選で一旦頓挫したとおもいます。日本は先走って強行採決をして衆院も通過させましたが、TPPは仕切り直しだと思います。
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