農政 クローズアップ詳細

2019.08.07 
【クローズアップ】過去最低の自給率 大きい目標との乖離一覧へ

 農林水産省は8月6日、平成30年度の食料自給率を公表した。カロリーベースの食料自給率は、前年度より1ポイント低下し、大冷害があった平成5年度の37.37%をわずかに下回り37.33%となり、過去最低を更新した。
 現行の食料・農業・農村基本計画では平成37(令和7)年度の食料自給率をカロリーベースで45%、生産額ベースで73%にするとの目標を設定しているが、今後、同計画の見直しを検討する中でどのような議論が行われるかが注目される。

◆先進国でも最低水準

耕作放棄地のイメージ 食料自給率の長期的推移を見ると、米の消費が減少する一方で、畜産物や油脂類の消費が増大するなど食生活の変化により、長期的には低下傾向が続いてきたが、2000年代に入ってからは概ね横ばい傾向で推移してきた。

 (※1)は、農水省のホームページに掲げられているさまざまな自給率の長期的推移である。
 同省は、この自給率を先進国と比較し、カロリーベース食料自給率はアメリカ130%、フランス127%、ドイツ95%、イギリス63%となっており、わが国は「先進国の中で最低の水準」だと指摘している。

食料自給率の推移のグラフ

◆生産額ベースも目標に達せず

 平成30年度の食料自給率の結果は次のとおり。
▽カロリーベース食料自給率は、米の消費が減少する中、主食用米の国内生産量が前年並みとなった一方、低温・日照不足で単収が平成23年以降で最低となった北海道の小麦や、低温・日照不足・台風などにより全国の単収が平成17年以降で最低となった大豆の国内生産量が大きく減少したことなどから、37%となった。
▽生産額ベース食料自給率は、野菜や鶏卵などの単価下落により国内生産額が減少し、魚介類の輸出増加等により国内消費仕向け額が減少したことから、66%となった。


◆不安な「自給力」水準

 農水省は食料「自給率」とともに、食料「自給力」指標も公表している。
 食料自給力指標は、農地面積の減少などにより、すべてのパターンで微減となっている。昨年と同様に、「米・小麦・大豆中心型」では推定エネルギー必要量(2143kcal)(※2)を下回るものの、「いも類中心型」ではこれを上回っている。

〇平成30年度食料自給力指標
▽パターンA(米・小麦・大豆中心、栄養バランス考慮)=1429kcal(29年度は1434kcal)
▽パターンB(米・小麦・大豆中心)=1829kcal(同1833kcal)
▽パターンC(いも類中心、栄養バランス考慮)=2303kcal(同2313kcal)
▽パターンD(いも類中心)=2633kcal(同2645kcal)

 つまり、わが国の食料自給率が極めて低水準にあるだけでなく、食料自給力についても不安を払拭できない水準にあることが分かる。


◆新基本計画での議論を

 まもなく、現行の食料・農業・農村基本計画に代わって来年3月に策定される新たな基本計画の議論が政府の食料・農業・農村政策審議会で本格化する。令和7年度の食料自給率をカロリーベースで45%、生産額ベースで73%にするとした現行の基本計画の目標と現実の数字の動きとの乖離が大きい。識者からは「食料自給率の低下は異常気象だけが理由ではない。全体的に日本の食料生産力が落ちているという問題が根本にある」との指摘がある。
 政府は法人化や農地集積による大規模化を進めてきたが、家族経営体の後継者が急速に減少していることや農村の人口減少への有効な手立てを打てずにいる。国産の小麦の品質向上など国産麦・大豆へのニーズは高まっても生産者が不足する。
 こうした課題を踏まえて、これからの日本の食料の生産はどうするのか、真剣な議論をし、国としての実現可能で具体的な戦略を示し国民の不安を払拭してもらいたい。

※1)出典は、農林水産省ホームページの「食料自給率とは」から
※2)推定エネルギー必要量とは、そのときの体重を保つ(増加も減少もしない)ために適当なエネルギーの推定値


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