【クローズアップ】「内憂外患」2021年展望 米中、総選挙、JA全国大会など目白押し 農政ジャーナリスト・伊本克宜2021年1月5日
2021年はどんな年になるだろう。分断から協調へと言いたいところだが、新型コロナウイルス禍での政治と経済の混乱は長引く。やはり「内憂外患」の四字が浮かぶ。

バイデン新政権の行方
まず国内外、さらには系統組織の主な日程を見てみよう。以下、簡単な日程表を参考にしてほしい。
外政は1月20日のバイデン米大統領の就任式を境に、〈ポスト・トランプ〉の動きがどうなるのか。まずは年明け早々5日の米ジョージア州上院2議席の決選投票の行方が焦点だ。上院は与野党の議席が拮抗しており、ここを与党・民主党が押さえなければ、バイデン新政権は出足からつまずく。
◎外政
・1月5日米上院選決選投票
・1月20日バイデン大統領就任式
・1月下旬ダボス会議(※テーマは「グレート・リセット」)
・3月11日WHOパンデミック宣言1年
・3月中旬米主催の気候変動サミット(予定)
・7月1日中国共産党創設100年
・10月30日G20首脳会議
・11月1日気候変動COP26
◎内政
・1月18日通常国会開会
・3月11日東日本大震災10年
・4月25日衆参補選
・7月22日東京都議任期満了
・7月23日東京五輪開会式(8月8日閉会式)
・8月24日東京パラリンピック開会式(9月5日閉会式)
・9月30日菅首相の自民総裁任期満了
・10月21日衆院議員任期満了
◎系統組織
・3月末准組利用規制「5年後条項」期限
・9月米需給問題深刻化も
・10月中旬ごろJA全国大会(東京都内)
米中激突の今後
世界は米中〈G2〉からどの国も統率しない〈Gゼロ〉に。こんなトランプ時代の〈分断政治〉から脱することができるのか。今年は米国が政権交代の一方で、中国は習近平主席がますます独裁を強める。自由vs独裁の構図でもある。
中国は国威発揚の仕掛けがいくつもある。3月5日からの全人代は、WHOパンデミック宣言1年から日時が接近していることもある、中国の〈コロナ勝利宣言〉もあり得る。7月には中国共産党創建100年。2022年2月からの北京冬季五輪も近づく。こうした中国の攻勢を、バイデン新政権の米国と日欧同盟国がどう受け止め、対応するのか。2020年代の今後を占う政治・経済の攻防が続くだろう。
3・11二つの歴史的出来事
3月11日は災害と疫病の歴史的出来事が二つ重なる。
まずは、大惨事・東日本大震災から10年と大きな節目を迎える。大地震・巨大津波・原発事故が連動した世界初の〈三重苦〉の大災害だ。被災地の復興は大きな格差が生じている。農業を中心とした地域再生も課題だ。福島原発事故をきっかけに、今後のエネルギー政策の総見直しが問われる。バイデン新政権は3月中旬に気候変動サミットを呼びかける見込みで、環境、気候変動、脱原発、再生エネルギーと経済振興の関わりなども議論される。
もう一つは国連世界保健機関(WHO)の新型コロナ世界的大流行(パンデミック)宣言から1年。ワクチンの有効性も具体的な議論に登るだろう。パンデミックとなる中で、1月20日過ぎには世界の経済人がスイスに一堂に会すダボス会議。今回のテーマ「グレート・リセット」に、コロナ禍での世界のあらゆる仕組みに迫る〈大転換〉の危機感が募る。
内政の焦点は総選挙
内政の最大関心事は解散・総選挙がいつか。10月21日の衆院議員任期満了まで10カ月を切った。しかし、内政の日程でも見たとおり、今年は五輪イヤーと〈第2国政選挙〉と称される東京都議選が7月に重なるなど、政治日程が過密だ。
一方、コロナ対策で後手に回る菅政権の内閣支持率は下落傾向が続く。インサイダー雑誌『選択』1月号は〈五輪と共に尽きる菅の「命運」〉で、政界でささやかれる〈菅9月6日退陣説の信憑性〉を取り上げた。なぜ9月6日なのか。先述の日程を見れば前日の9月5日は東京五輪パラリンピック閉会式。57年前の秋、東京五輪閉幕直後の池田勇人首相(当時)の辞意表明を思い出す。今週発売の各週刊誌も菅短命政権の特集を組み始めた。
それにしても菅政権発足からまだ3カ月あまり。たかが雑誌の見通し記事に言及するのも何だが、〈退陣〉の2文字がメディアに出ること自体が今の政権の現状を表す。
系統組織は自己改革真価問う
系統組織は3月末に「准組5年後条項」の期限を迎える。JAグループは准組合員への働きかけも着実に成果を収めており、新年度をもって准組利用規制が変わることは考えにくい。問題は、さらなるフォローアップ期間の延長が濃厚なことだ。つまりは、政権の意向でいつでもJA事業に規制強化の〈手綱〉を握られていることになる。
10月中旬には第29回JA全国大会が開催予定だ。大きなテーマは創造的自己改革の〈深化〉だろう。コロナ禍で時代は激変する。DX(デジタル・トランスフォーメーション)も待ったなしだ。気候変動への対応、国連の持続可能な開発目標(SDGs)などで、JAらしい具体策を出すことも問われる。
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