【クローズアップ:生乳需給】コロナ禍中酪3カ年計画 増産へ基盤強化と需給安定『両にらみ』2021年4月7日
中央酪農会議は、2021年度からの3カ年計画を進めている。新型コロナウイルス禍で業務用需要が低迷する中、増産計画を継続する一方で生乳需給安定へのリスク回避の緊急対策も盛り込んだ
緊急事態宣言から1年
政府が初の緊急事態宣言を発してから7日で1年。コロナ禍は小中学校の一斉休校に伴う学校給食牛乳停止、そして1年前の緊急事態宣言で外食、業務需要が落ち込み、生乳需給は大混乱に陥った。
今回の中酪3カ年計画も、こうしたコロナ禍での需給安定を念頭に置いた。
都府県支援で生産増促す
中酪は21年度からの3年間は「生乳増産・維持」の中期生乳需給安定化対策を決めた。前期(18~20年度)に続き、中期的に増産を担保することで、酪農家の計画的な生乳生産と経営安定につなげていく方針だ。
農水省も2030年度までの今後10年の生産目標で、底堅い国産牛乳・乳製品の需要増から生乳生産を現行より50万トン増の780万トンまで拡大する計画を示している。
問題は地域ごとの生産不均衡だ。全国シェア6割近い北海道の増産が進む半面、都府県は後継者不足などから生産基盤の維持、強化が喫緊の課題となっている。ここ数年、国やJミルクの支援策もあり反転攻勢の体制が整いつつある。20年度の生乳生産は8年ぶりに増産も見込まれる。こうした中で、毎年拡大する夏場の需給ギャップ解消に向け、指定生乳生産者団体は補助事業を活用しながら、都府県の増頭支援など生産基盤強化の取り組み強化を目指す。
生乳廃棄リスクにも対応
ただ、増産の一方で、コロナ禍の業務用需要は引き続き低迷し、時期的には生乳需給が不均衡になる可能性が高い。生乳は、急に増産にブレーキを掛けるなどの対応ができない。そこで中酪3カ年計画では、想定外の急激な需給緩和に備えるリスク対応も盛り込んだ。
生乳廃棄を防ぐため、まず今年度は需給不均衡が大きくなる時期の春先と年末から年度末(21年4~5月、同12~22年3月)に、都府県を対象に「加工リスク平準化緊急対策」を実施する。
保存効く乳製品加工で補填
緊急対策は、需給緩和時に飲用牛乳から保存の効く乳製品に加工する場合、経費の一部を補填する仕組み。生乳廃棄に伴う酪農家の経営打撃を緩和する。財源は広域指定団体が受託乳量1キロ当たり6銭拠出し、総額は1億8300万円として、万が一の事態に備える。
期間中に、広域指定団体のバター、脱脂粉乳向け生乳が一定基準を超えた場合の経費の一部を負担する。
アクセルとブレーキ交互に
バター、脱粉に加工しても、コロナ禍で既に在庫が記録的に積み増しており、今後の全体需給に悪影響を及ぼす可能性が高い。国の支援拡充と業界挙げたコロナ禍での実効性ある「出口対策」が問われる。
いわば、増産というアクセルで生産基盤と酪農家の経営維持を図りつつ、一方でコロナ禍での需要減に応じた生乳廃棄回避への加工処理というブレーキも踏む、難しい需給対応が続く事態だ。
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