【クローズアップ:生乳】廃棄回避へ生乳需給正念場 カギは業界挙げコロナ対応 農政ジャーナリスト 伊本克宜2021年4月29日
生乳需給対応が正念場を迎える。新型コロナウイルス禍に伴う業務需要不振から生乳廃棄が懸念される、特に5月大型連休から北海道の生産ピークを迎える6月上旬が要注意だ。ホクレンをはじめ業界挙げての対応がカギを握る。

春休み乗り切りもGWに警戒
コロナ禍で行き場のない原料乳をつくらないよう、綱渡りの生乳需給対応が続く。まず、小中学校の春休みで学乳がなくなる事態は、乳製品増産でどうにか乗り切った。次は5月と6月の2カ月の対応だ。
今年のゴールデンウィーク(GW)は事実上、4月29日木曜日が「昭和の日」で祭日となるため、同日から入る。5月に入り5日水曜日「こどもの日」の1週間と長い。学乳がなくなり、生乳処理が課題となる。ただ、難しいのはコロナ禍で東京、大阪など大都市圏で「緊急事態宣言」が取られているため、人の流れがどうなるか読めないことだ。
東京、大阪で緊急事態宣言再び
コロナ禍で確かなのは、牛乳・乳製品の業務用の低迷は続く。外食、ホテル需要などは回復の目途が立っていない。これに東京、大阪での再び緊急事態宣言が出て、需要はさらに不透明感を増す。
一方で、外出自粛から「巣ごもり」がどの程度、牛乳・乳製品の消費増に結び付くのか。業務減と家庭増の〈両にらみ〉の中で、乳業メーカーは用途別生産をどう振り向けるか難しい判断も迫られる。
中酪は加工リスク緊急対応
中央酪農会議は、生乳廃棄を防ぐため、4、5月に一定水準を上回り加工向けになった場合に、価格差補填を行う緊急対策を実施する。指定生乳生産者団体が価格の低い加工向けに処理しても、一定の経営的負担を軽減するのが狙う。
ホクレンは「出口」対策
こうした中で、生乳需給のカギを握るのが、全国生産6割を持つ北海道のホクレンの対応だ。難航した北海道の2021年度乳価交渉は、「クローズアップ」3月8日で指摘したとおり、月内決着となった。3月下旬まで長引いたのは、生乳の完全販売をどうするかのホクレンと乳業との具体的手法の詰めに時間がかかったためだ。乳価交渉が年度末までかかったのは環太平洋連携協定(TPP)大筋合意で業界が混乱した2016年度以来、5年ぶりのことだ。
その結果、ホクレンは需給改善に向け、輸入乳製品の国産への置き換えなど総額80億円の生乳販売対策、いわゆる「出口」対策を講じる。在庫が積み上がる過剰乳製品削減とともに、道産生乳の需要を確保し生乳廃棄の発生を防ぐため、身を切って対応することになった。財源確保のため、21年度プール乳価は20年度に比べ生乳1キロ当たり2円程度下がる見込みだ。ただ、セーフティーネットとして国の加工原料乳生産者経営安定対策事業(ナラシ対策)が措置されている。同事業が発動されれば、プール乳価の下落幅は同1円程度に圧縮され、酪農家への経営的打撃も和らぐ。
21年度生産見通し
Jミルクの21年度生乳生産見通しは、年度計で750万6000トン、前年度対比100.9%の微増。このうち北海道は424万6000トン、同102.1%、都府県325万9000トン、同99.4%。新酪肉近計画でも10年後には780万トンと増産計画を示す。
生産見通しでも分かるように、6月の伸び率は高い。年間生乳生産のピークを迎えるためだ。特に北海道の6月見通しは前年度対比102.6%。5月のGWを乗り切っても、次は6月の増産をどう生乳処理するかの課題が待つ。
自由化で輸入攻勢は止まず
コロナ禍の生乳需給動向は季節別変動が大きく予測は難しい。ただ、かつての生乳過剰に伴う低能力牛整理などの減産計画は選択できない。そこで、輸入代替などの措置が取られている。一方で、輸入自由化で輸入乳製品の拡大は避けられない。酪農・乳業界一体で、国内酪農の生産基盤を守る道はこれからも困難さを増すと見ていい。
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