【23年を振り返って】気候危機!温暖化から沸騰化へ③ドカ雪と豪雨が心配 立花義裕三重大教授×谷口信和東大名誉教授2023年12月20日
今年の「酷暑」は農業にも大きな被害をもたらし、国連のグテーレス事務総長は地球は「沸騰化」の時代に入ったと警鐘を鳴らした。気候危機は、食料生産への打撃は言うまでもなく、災害や地域紛争の要因ともなる。2023年を振り返る対談企画は「今、地球では何が起きているのか」を話し合ってもらった。
ドカ雪と豪雨が心配
立花 一見、無関係に思えることが実は遠いところ同士でも関係していることを理論的に説明していくことが科学なんだと思います。一人の科学者で全部できませんから、いろいろな人の研究をまとめたものを発信する人もいる。私もその一人かなと思います。研究者は自分の話はするけど、なかなか全体のことは言いにくいですが。
三重大学教授 立花義裕氏
谷口 専門分化していますから、なかなか総合的なことは言いにくい。
立花 お互い足引っ張りますから(笑)。
知り合いに気象庁関係者がいます。彼は、自分が立場上言えないことを、「立花さんは自由だから言えるじゃないですか」という。だから私は、マスコミなどで、なるべくわかりやすく言うように心がけているんです。
谷口 大事なことですね、それは。
食と農に投げかける課題
谷口 日本では干ばつはあまり起きませんが、海外では深刻で山火事も起きる。この差は何でしょうか。
立花 日本は海に囲まれているので、偏西風の蛇行で猛暑になりますが、ちょっとした低気圧が来ると雨が降ります。地域にもよりますが干ばつは少ない。逆に豪雨が多いのです。大陸は逆に豪雨が降りにくいので猛暑になったら乾燥化し火が付いたら火事になる。
谷口 みどり戦略にあたっても日本が海に囲まれていることを踏まえるべきで、水田をつぶすのはどうかと私は警鐘を鳴らしてきました。ちょっとつながったかなと思います。
立花 日本やアジアはモンスーン地域で、アジア以外の大陸はモンスーン地域ではないですから、異常気象も違う。線状降水帯も欧米にはない。アジアだけですが、どうしても日本という国は欧米に従うので......(笑)。
谷口 変ですよね(笑)。温暖化というと「北の地方でもミカンが取れる」とか、のほほんと捉えがちですが。
立花 そうじゃない。温暖化すると異常気象が起きやすくなります。爆弾低気圧が発生し、農業でいうとハウスが吹き飛ばされたりします。
東京大学名誉教授 谷口信和氏
谷口 だから「温暖化ではなく沸騰化」なんですね。
立花 そうです。欧州では気候危機、クライシスと呼んでいます。
谷口 気候問題が熊被害にも拍車をかけていますか。
立花 要因は複合的でしょうが、こんな急に増えた一因には気候変動があるでしょう。
谷口 雪があまり降らなくなってきたのはなぜでしょう。
立花 雪が降らないのも温暖化です。雪になるところが雨になる。ただし温暖化で降水量は増えています。昔と同じように発達低気圧が日本を通過すると、水蒸気が多いからドカ雪が降る。冬の気象も極端化しているのです。
谷口 猛暑で新潟などの米にも深刻な影響が出ました。
立花 今年、日本で一番、平年との気温差が大きかったのは新潟です。日本海の海水温が高かったのと、山が多くフェーン現象が起きたためです。暑さ対応を考えると、コシヒカリ一辺倒から転換した方がいいのではと思います。消費者の好みもあって難しいですが。
谷口 大切なのは教育というか、きちんと知ることですかね。
立花 教育というと上から目線ぽいですが、自然現象って面白いですから、面白がってもらえる雰囲気を作りたい。
谷口 そこで改めて整理していただきたいのですが、エルニーニョと地球温暖化とは、構造が違いますよね。
立花 エルニーニョというのは、太古の昔からある自然現象です。50年以上前は熱帯地方に観察網はなかったのですが、世界の海を制覇した英国が世界中で気象観測をしたら、気圧が高いところと低いところがあった。それが4~5年で入れ替わり、異常気象を引き起こすことがわかりました。海水温も上がっていました。
今起こっているエルニーニョは「自然現象+温暖化」ですから、これからどういう異常気象を起こすかわからない。地球温暖化でエルニーニョが増えるか減るかもまだわかっていません。増えそうに思えますが、計算機のシミュレーションでは、「増える」「減る」両方出てきます。
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