地域包括ケアの確立へ 文化連が研究会2014年9月30日
日本文化厚生連(文化連)は9月25、26日、東京で厚生連の病院と単位JAを繋ぐ医療・福祉のあり方についての研究会を開いた。今回のテーマは「地域包括ケアの実践から学ぶ?安心の地域づくりと厚生連医療・農協福祉の役割?」で、医療機関と連携し、医療と介護を包括した地域における高齢者のケアを実現している厚生連病院や社会福祉法人などの取り組みを中心に事例報告、パネルディスカッションを行った。
ネットワークで高齢者に安心を
◆信共分離で「農協経営は厳しく」
研究会では、田代洋一・大妻女子大学教授が「協同組合が担う公共性と農業・農協改革」で記念講演。現在政府が進めている農協改革について、規制改革会議の答申について、その問題点をいくつか指摘した。
特に単協の信用事業譲渡、窓口・代理店化について、「農協による農業者への貸し付けは厳しくなり、支店も従来の農協ではなくなる。営農繰越金などもできなくなると同時に、信用・共済の奨励金も、代理店に出す必要がなくなり、農協の経営も苦しくなる」と警鐘を鳴らす。
さらに共済事業も、一般の生保などと同じように、地域ごとに違う掛け金が採用され、現在の全国一律の協同組合保険に反すると指摘。結局は一般会社化され、新規商品についての郵便局のアフラック子会社化とおなじようになるのではないかと危惧する。
(写真)
講演する田代氏
◆病院と市が連携
また、広島厚生連吉田総合病院の住元一夫院長は「病院機能の分化と地域連帯・在宅医療ネットワークづくり」で報告。病院のある広島県安芸高田市の地域包括ケアシステムについて説明した。
同病院は市と連携し、[1]要介護3になっても在宅生活が継続できる地域づくり、[2]介護予防に取り組み、健やかに80歳を迎えることができる地域づくり、を目指す。つまり介護、医療、予防、住まい、生活支援を一体としてとらえたシステムづくりである。
◆地域一体でケアを
地域包括ケアは、大規模な病院を中心とするものだけではない。長野県の社会福祉法人ジェイエー長野会ローマンうえだは、小規模多機能型居宅介護を実施し、成果をあげている。上田市にある同会の「上野の家」の管理人・中村竜也氏が報告。同氏は「居宅と施設のいいとこどり」という。利用者数十人の小さな施設だが、24時間訪問で365日対応する。
近くに住む、動ける認知者、独居高齢者、老老介護、家庭の介護力が少ない人などが対象で、通常の支援のほか墓参の付き添いなど、利用者のさまざまな要望に応じる。また施設の庭木の剪定を近くの人が手伝うなど、地域の人が一体となってケアする。
中村氏は「一人ひとりに様々な生活歴があり、人とのつながりの中に生きてきた。それがその人の持つ地域資源であり、その人に向き合うことでそのつながりが見えてきて、協働することで安心して暮らせる地域が少しづつできるのではないか」と、施設と地域の関係のあり方で問題提起した。
ほかに富山県南砺市民病院前院長の南眞司氏が「農協運動がめざす地域包括ケアの姿とは」で特別講演した。
◇ ◇
なお、研究会に併せ、文化連は「農協福祉の構え直しと組合員参加」のあり方をまとめた。(要点は次の通り)
[1]介護事業は、制度改正に合せて農協の中で事業改革・運営の体制の切り分けが必要
[2]子会社等に形態変更したとしても、医療・福祉事業に「組合員参加」が塗り込められた運営が不断に追求されてこそ、協同組合の値打ちが光り、経営も拡大する
[3]単協・厚生連提携は、連合会としてのお手伝いのレベルを脱し、双方が対等に協同事業形式などで事業参画・提携し、新しい地域包括ケアの事業開発に向かうことを検討してはどうか。
(関連記事)
・【JA共済連の地域貢献活動】豊かで安心して暮らせる地域社会づくりを(2014.05.20)
・介護事業「小規模多機能立ち上げ道場」開催(2014.03.26)
・助けあい活動の活性化をめざして JA助けあい組織全国交流会・JA健康寿命100歳サミット(2012.11.05)
・病院機能の再編と介護サービス提供体制の強化をめざす JA全厚連が長期ビジョン策定(2012.10.29)
・高齢化対応で注目される「市民後見人」とは?(2012.10.26)
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