【TPP】脱退も辞さずの覚悟で-与党議員ら強調2015年7月29日
7月27日に開催された「TPP閣僚会合を前に国会決議の遵守を求める全国代表者集会」では農林漁業者の意見表明のあと政府代表、与党代表からあいさつがあった。
農業者団体の集会に政府代表が出席することはあまり例がない。TPP政府対策本部の澁谷審議官は、交渉の現場で「国会決議のことを片時も忘れたことはない」と強調し、今までにないタフな交渉になるが国会で承認される内容にしなければならないと述べた。
また、自民党の森山TPP対策委員長らは「節目」の閣僚会合になることは間違いないものの、「慌てず焦らず、諦めず」の精神が大事だと政府の前のめりの姿勢を牽制した。
【政府代表あいさつ】
○内閣官房TPP政府対策本部・澁谷和久内閣審議官
みなさんの生の声を聞く貴重な機会を与えていただいた。
2年前の7月23日にわが国が正式にTPP交渉に参加して2年あまり。大変厳しい交渉を積み重ねてきた。2年前の8月ブルネイで閣僚会合に参加した甘利大臣は会合の冒頭、「この交渉はパートナーシップをめざすものだ。すべての国がウィンウィンにならなければいけない。特定の国、とくに強い国、大きな国の主張を一方的に通すということは断じてあってはならない。どの国にもどうしても譲れないセンシティビティがある。これをお互いに認め合わない限りこの交渉は絶対に合意に達しない。そのことをよく理解しなければいけない」と発言した。
その後の閣僚声明は、野心的で高い水準の協定をめざすということをずっと言っていたのが、初めてバランスのとれた協定、という文言が入った。バランスには、先進国と途上国のバランス、さらには各国のセンシティビティに配慮するという両方の意味が込められている。こうした思いで粘り強い交渉をし、わが国がどうしても守らなければならないものについて各国に粘り強く説明をしてきた。国会決議は英訳をし交渉の現場で何度も配っている。われわれは国会決議のことを交渉の現場で片時も忘れたことはない。
交渉は最終局面にある。今回の閣僚会議が大きなヤマ場であることは間違いないことだが、ただし、今回必ず合意するかといえば、文字通り交渉ごとだから分からない。そんな生易しいものではないと思っている。わが国にとって国会決議、とくに重要品目が極めてセンシティブで重要であるということと同様に、各国もそれぞれ重要な課題を持っている。ある国にとっては知的財産分野のなかの医薬品の(データ保護期間)問題がわが国の重要品目と同じくらいにどうしても譲れないものになっている。また、ある国にとっては国有企業の問題がそれになっている。ISDSについてもさまざまな意見がある。
閣僚レベルで議論される課題、最後に残っている課題というのは難しいから残っている。今回の閣僚会議は文字通り各国の国益と国益がぶつかりあう実にタフな交渉になると思う。甘利大臣はこれまでかつてないほどタフな交渉をしてきた。昨年の9月、ワシントンに出かけたときは文字通り席を蹴って帰ってきた。
どうしても守りたいものは守る、どうしても取りたいものは取るという交渉をずっと続けてきた。本日のみなさんの声、この場の雰囲気というものを必ず甘利大臣に伝え、今までにないタフな交渉をしていくことを約束したい。出発に先立ち、安倍総理から国益を最大限に実現するよう全力で交渉にあたるように、と指示を受けた。交渉結果は最終的に国会で承認してもらえるものでなければならないという思いは、これまでとまったく変わりがない。
【与党代表あいさつ】
○自民党TPP対策委員会・森山裕委員長
大筋合意ができるかどうか予断をゆるさない。ただ、間違いなく一つの節目の交渉になる。われわれは今までもそうだし、これからも違えることはないが、もっとも大事な国益とは国民に安心・安全な食料を供給し続けることであるというは間違いないし、そのことを基本にすべてのことを考えていきたいと思う。
重要5品目について議論がある。とくに米に対する意見も多くいただいている。水田フル活用という大きな柱を立てて政策を進めてきた。国内人口の減少にともない主食米の消費は毎年毎年減少を続けている。どうしても飼料用米に転換をしていかなければやむを得ない面がある。
ただ、主食用米と飼料用米で農家の所得に格差があってはいけない。その政策をしっかりつくってご理解いただくことが大事であると重々承知している。個人的に主食米に影響を与えるようなかたちで米の合意がなされてはいけない。何としても農家が水田をフル活用していただき多面的な機能をしっかり果たして畜産の振興にも貢献できる、そういう水田農業をめざさなければならないし、それができるかどうかが今回のTPP交渉のひとつの視点であることは間違いない。
牛肉、豚肉、甘味資源作物、麦等々についてもしっかりと守っていくという姿勢を示していかなければならないと思っている。
ただ、それだけでいいかといえばそれだけではない。北海道にとっていわゆる雑豆類は輪作体系にとってはもっとも大事な作物であることもわれわれはよく理解しているつもりだ。すべてのことを見渡して再生産可能なTPPを成就させていく、これがわれわれの目標である。
また、TPP交渉は農業分野、水産分野について守るだけの交渉ではない。輸出拡大も(大事で)重要品目である牛肉、米や水産物、お茶等については(交渉参加国に)関税撤廃をわれわれは求めていかなければならない。輸出にも果敢に挑戦していく条件を整えていかなければいけないと思っている。
再生産可能となるように、そのしっかりしたベースを守り抜く交渉でなければならない。ベースを守り抜かなければ国防を守ってもセーフガードがあっても意味がない。大事なベースはしっかり守り抜き、国内対策を含めて若い人たちが、さらにがんばろう、地域をしっかり守っていこうと思っていただける日本農業にしなければならない。そのための大事な交渉だ。みなさんの気持ちをしっかり受け止め、現場で政府交渉団の激励をしたい。
TPP交渉は慌てず、焦らず、諦めずの精神で臨まなければいけない。いつまでに妥結しなければいけない、今回の交渉で大筋合意をしなければいけないという気持ちを持ってはいけない。国益を守り抜くまでしっかりがんばる交渉をわれわれは見守りたい。
○公明党農林水産部会・石田祝稔部会長
交渉は締め切りが決まっているわけではない。あわててやって、取れるものも取れなかった、譲るべきではないものを譲ってしまったということであってはならない。すべてが国会決議に表されている。国会決議はわれわれ国会議員が決めた。自分たちが決めたことを守るのは当たり前だ。アメリカではTPA法案が通ったと言っているが、私たちは最初から委員会決議で、この枠内で交渉して、と最初から申し上げている。そして最後には国会で批准。これは国会の責任として決めていかなければならない。だからわれわれが賛成できる中身にしていただかなければならない。
米について5万トン、7万トンなどと簡単に言っているが、そんな簡単なものではない。力を合わせて最後までがんばろう。
○自民党TPP交渉における国益を守り抜く会・江藤拓会長
(同会の決議文を渡した7月23日の安倍総理との面談の際の様子について)お願いベースでものを言ったということでは決してない。よろしくお願いします、頼みますという言い方は生来できない。かなり厳しい口調で現実を申し上げた。
安倍政権発足以来、農政の大転換が行われた。農協改革もその一環、米政策の転換もその一環。食料・農業・農村基本計画も改訂され飼料用米110万トンも目標に掲げられた。今後、このTPPの結果次第では一連の政策の流れに矛盾を生じる恐れが極めて大きい。そのことをはっきり申し上げた。
そして今、安保にくらべれば、何となく(TPP)反対運動は下火になって静かになったな、何となく収まっているのではないか、もう全国では仕方がないなと飲み込んでいるのではないか、もしそう総理が思っておられるのであればそれは大きな勘違いであります、ということも申し上げた。 詳細な情報が出てこない、不確実なので怒りたくても怒りようがない、しかし、確実にストレスと怒りは蓄積されているということも申し上げた。
当初10分と言われていたが総理から質問もいただき40分近く話をした。
一度、交渉に参加した以上は合意をめざすのは致し方ない。それは認める。しかし、それは党の決議、衆参両委員会の決議を守り、そして最終的にこれは理解をいただけないということであれば席を蹴って立つという覚悟を持って交渉に望むべきであることを申し上げた。
□ □
これが最後だとは思っていない。オバマ大統領にとってはそうだろう、しかし、日本にとって合意を急がなければならない理由はそう見つからないのではないか。当選5回で閣僚経験もなく、とてもみなさんの思いを受け止められる技量を持ち合わせていないが、保身に走らず同志のみなさんと一緒に、最後まで政府に対しては厳しい姿勢で臨んでいきたいと思っている。
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