GM農産物、農家にメリットあるのか?-米国弁護士が報告2015年12月3日
米国と韓国から弁護士や研究者を招いた国際シンポジウム「消費者が選べる遺伝子組み換え食品表示をめざして」が11月21日に東京都内で開かれた。遺伝子組み換え食品表示制度がない米国ではこれまでに33州で遺伝子組み換え原材料の表示義務化を求める法案を導入し、3州で可決したという。ただ、GM農産物の栽培で収量は増えず、農薬使用量だけが増えるなどの現実に農家にとってメリットはない、と若い農家のなかにはNONGM農産物を育てたいという動きも出ているという。
◆米国でGM表示の動きも
米国から来日したジョージ・キンブレル氏は、全米に消費者、生産者を含む70万人以上の会員がいる非営利団体・食品安全センターの上級弁護士。同センターは市民の権利向上や生産者の支援、有機農業など再生可能な農業の促進などに取り組んでいる。
キンブレル氏によると、米国での遺伝子組み換え(GM)農産物の栽培で収穫量は増えず、一方で除草剤耐性作物では、スーパー雑草が生まれ、むしろ除草剤使用量が増えるなどの実態があり「農家のベネフィットはあるのか。むしろリスクが多い技術だ」という。
米国政府(食品医薬品局)は、GM農産物には従来の農産物と比較して、食品表示に必要な「重要な差異がない」として表示を義務づけていない。
世界では64か国に遺伝子組み換え表示制度が導入されており、米国でもバーモント州、コネチカット州、メイン州で遺伝子組み換え表示を義務化する法律が可決され、バーモント州では2016年7月から法律が発効するという。こうした法案をめぐって米国では激しいメディア戦が展開されるといい、表示をすれば価格が上昇するなどと、企業は豊富な資金をもとに法案反対のCMを打つ。法案賛成を訴える農家が登場するCMもあるが資金不足で数は少ない。
一方、キンブレル氏はGMトウモロコシの栽培によって欧州市場が失われ米国農家の損失は年間3億ドル以上と指摘したほか、環境への影響懸念から6000万haの米国野生生物保護区ではGM農産物の栽培が禁止されるなど、なおも安全性が問題にされている実態にあることを報告した。
◆韓国で化粧品向けGM稲
韓国からは、遺伝子組み換え食品反対・生命運動連帯執行委員長の李宰郁(イ・ジェウク)韓国農漁村社会研究所所長が来日した。
韓国では大豆、トウモロコシ、ジャガイモなど安全性を審査された7種の農産物とそれらを使った加工食品にGM表示をしなければならない制度がある。意図的ではないGM農産物の混入率は日本の5%よりも厳しい3%だ。李氏によると日本と同じように輸入農産物が増えている韓国では、この制度のもとで約500品目が表示対象の可能性があるが、2001年の制度施行以来、表示された商品はないという。
また、日本で任意に認められている「遺伝子組み換えではない」との表示は禁止されている。一方で、表示義務が守られていないことから、2015年初めには表示義務を含量5番めまでの主要原料としていたが、これを全成分対象に変える方針が示された。ただ、これまでに具体化への進展はみられないという。制度があっても実際はどの食品にGM農産物が使われているかが分からない状態だ。
一方、韓国国内でもGM作物開発が進められようとしており、李氏は在来種を守りGM開発推進に反対する運動を展開している。政府機関が開発しようとしているGM農産物は抗酸化作用に優れるという稲で化粧品の原料用だという。李氏は消費者メリットを強調する開発が進むことを警戒する。
李氏は「日本と韓国は隣同士で仲良くGM農産物輸入国1位、2位を争っている。これは必要のない競争では。互いに情報をやり取りして連帯を」と確実な表示制度の実現をともにめざそうなどと訴えた。
このシンポジウムは食品表示を考える市民ネットワーク、たねと食とひと@フォーラム、生活クラブ生協連合会、グリーンコープ共同体、パルシステム連合会などが共催した。
(写真)シンポジウム風景
重要な記事
最新の記事
-
新品種から商品開発まで 米の新規需要広げる挑戦 農研機構とグリコ栄養食品2025年5月1日
-
米の販売数量 前年比で86.3%で減少傾向 価格高騰の影響か 3月末2025年5月1日
-
春夏野菜の病害虫防除 気候変動見逃さず(1)耕種的防除を併用【サステナ防除のすすめ2025】2025年5月1日
-
春夏野菜の病害虫防除 気候変動見逃さず(2)農薬の残効顧慮も【サステナ防除のすすめ2025】2025年5月1日
-
備蓄米 小売業へ2592t販売 3月末の6倍 農水省2025年5月1日
-
イモ掘り、イモ拾いモ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第338回2025年5月1日
-
地元木材で「香りの授業」、広島県府中明郷学園で開催 セントマティック2025年5月1日
-
大分ハウスみかんの出荷が始まる 大分県柑橘販売強化対策協議会2025年5月1日
-
Webマガジン『街角のクリエイティブ』で尾道特集 尾道と、おのみち鮮魚店「尾道産 天然真鯛の炊き込みご飯」の魅力を発信 街クリ2025年5月1日
-
5月1日「新茶の日」に狭山茶の新芽を食べる「新茶ミルクカルボナーラ」 温泉道場2025年5月1日
-
「越後姫」食育出前授業を開催 JA全農にいがた2025年5月1日
-
日本の米育ち 平田牧場 三元豚の「まんまるポークナゲット」新登場 生活クラブ2025年5月1日
-
千葉県袖ケ浦市 令和7年度「田んぼの学校」と「農作業体験」実施2025年5月1日
-
次世代アグリ・フードテックを牽引 岩手・一関高専から初代「スーパーアグリクリエーター」誕生2025年5月1日
-
プロ農家が教える3日間 田植え体験希望者を募集福井県福井市2025年5月1日
-
フィリップ モリス ジャパンとRCF「あおもり三八農業未来プロジェクト」発足 農業振興を支援2025年5月1日
-
ビオラ「ピエナ」シリーズに2種の新色追加 サカタのタネ2025年5月1日
-
北限の茶処・新潟県村上市「新茶のお茶摘み体験」参加者募集2025年5月1日
-
「健康経営優良法人2025」初認定 全農ビジネスサポート2025年5月1日
-
「スポットワーク」活用 農業の担い手確保事業を開始 富山県2025年5月1日