海外展開、HACCP、物流の共同化など課題-食品産業2017年9月12日
今年5月に設置された農林水産省の「食品産業戦略会議」が7月までの議論をふまえ9月8日に中間論点整理を公表した。今後、食品産業の海外展開のために相談窓口の設置の必要性や、付加価値を高めるためのHACCP義務化、生産性の向上に向けた物流の共同化など論点を整理した。
同会議は食料産業局長が主催し、有識者が食品産業の今後について▽付加価値の向上・新規需要開拓、▽生産性の向上、▽安定供給の確保を主要検討事項として議論してきた。
食品産業は売上高で全産業の2.9%(製造業の6.9%)、従業員数で4.2%(同11.5%)、付加価値額で3.1%(同6.5%)を占めている。地域経済の雇用と生産を支える産業であり、国産農林水産物の約6割の供給先として日本の農林水産業を支えている。
ただし人口減少にともない国内の市場規模は縮小していくことが見込まれている。1億2700万人(2015年)の人口は2050年には1億200万人へと2500万人減少する(▲20%)。一方、世界人口は73億人(2015年)が97億人(2050年)に増える(+32%)。飲食料のマーケット規模は2009年に340兆円だったが2020年には680兆円へと倍増すると見込まれている。
こうしたなか中間論点整理では食品産業は、▽国内市場では健康志向の高まり、食の簡便化・外部化、介護市場の拡大などをとらえた需要の深掘り、▽海外市場ではわが国の強み、独自性を訴求しつつ、現地の食文化や市場の成熟度に応じた需要開拓を図る必要がある、などと指摘している。
そのうえで具体的な方策として▽海外展開するための食品規制など情報を一元的に集約した相談窓口と、海外市場までのコールドチェーンを構築するインフラ整備、▽食品の安全性、品質等の海外訴求に向けた規格・認証活用のための専門人材育成と海外相互認証への取り組み、▽導入率の低い中小零細企業でのHACCP導入の促進環境の整備などを挙げた。
一方で依然として食品製造業は高コスト、低採算性が課題となっていることから、人材確保がますます困難になるなかで、とくに中小企業ではIoT、人工知能(AI)などを活用した「省人化」の取り組みや、賞味期限の見直しによる廃棄ロスの削減、商品数の合理化・重点化、さらに業種をもまたがった国全体のインフラとしての共同配送の実現を推進する枠組みづくりも重要だと指摘した。
これらの課題に加え食品の安定供給や事業継続を確保するため、災害時の安定供給確保などリスク低減、円滑な事業承継を通じた地域ブランドの維持、実需者・消費者の「食」に対する信頼向上や透明性の高いフードチェーンの構築の重要性も指摘した。
同会議は11月中の最終取りまとめに向けて検討を進めていく。
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