放射性セシウム 葉・幹から土壌表層へ移動 森林総研2017年9月21日
森林総合研究所は、東電福島第一の事故後、5年にわたる調査を行い、森林内での放射性セシウムの動きを明らかにした。
これによると、放射性セシウムは、時間の経過とともに樹木の葉や幹から林床へ移動し、その多くは土壌の表層付近にとどまっていたという。
森林総研は2011年8月から、福島県川内村・大玉村・只見町、茨城県筑波山のスギ林、ヒノキ林、アカマツ林の汚染程度の異なる9つの森林を対象に、葉・枝・樹皮・幹材・落葉層・鉱質土壌の放射性セシウムの濃度と蓄積量を調べてきた。
その結果、森林内の放射性セシウムは、2011年の事故直後には樹木に多く付着していたが、時間の経過とともに樹木の蓄積量が急激に低下。その一方で、落葉層と鉱質土壌の蓄積量が増加した。その結果、3年後の2014年以降は、森林全体の90%以上が落葉層と鉱質土壌に存在し、その多くは深さ0~5㌢㍍以内の表層土壌に止まっているという。
森林総研ではこうした知見が、今後の森林管理に利用され、森林内の放射性セシウムの移動を予測するモデルの構築や精度向上に活かされ、それによって特用林産物の出荷制限解除時期の推定や林業従事者・森林利用者の被ばく低減に役立つと期待している。
この研究は林野庁受託事業だが、放射性セシウム(セシウム137)の半減期は30年なので、森林総研では今後も観測を続けいていくことが重要だとしている。
なお、この研究成果は、東電福島第一原発事故後の放射性セシウムの動向を網羅的・長期的に解明した初めてのものであり、世界的に貴重だとして、Scientific Reports、7巻8179(2017年8月)でオンライン公開された。
そのタイトルは、Temporal changes in the radiocesium distribution in forests over the five years after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident(福島第一原発事故後5年間における森林内の放射性セシウム分布の経年変化)。著者は、森林総研の今村直広、小松雅史、大橋伸太、橋本昌司、梶本卓也、金子真司、高野勉の各氏。
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