自給率低下、生産者減に危機感-農政審企画部会2018年1月17日
農水省は1月16日、食料・農業・農村政策審議会企画部会を開き、平成29年度の食料・農業・農村白書について委員からの意見を聞いた。農水省は白書の特集で次世代を担う若手農業者に焦点を当て、トピックスとして海外を意識した農業の必要性や、日EU・EPA交渉の合意とその対策、「農泊」の推進なども取り上げる方針を説明した。
会合では生産者委員を中心に、農業者が減少しているなか「輸出余力があるのか。農業の厳しい現状も国民に伝えるべき」など日本農業の現状と課題を伝え国民理解を深める内容に力点を置くべきとの意見が相次いだ。
農林水産省は29年度「白書」の作成方針について「攻めの農林水産業への転換」に向けた取り組み状況や課題について分析し明らかにすると説明。また、特集では、若手の新規就農者が増えていることなどから、独自のアンケート調査などで若手農業者の確保策や経営発展の方向性を考察するほか、人口減少の日本の農業は海外を意識した展開が必要であることなどをトピックスで取り上げる構成案も示した。
委員からの意見では、経団連の農業委員担当の十倉雅和住友化学代表取締社長が「農業の成長産業化」の重要性を強調し。そのためには「努力したものが報われる仕組み」とともに、人口減少社会をふまえて海外を視野に農産物の付加価値を高めるイノベーションの必要性などを指摘した。
一方、生産者委員からは農業者の減少など生産基盤の弱体化を懸念する意見が相次いだ。
静岡県のいちご生産者で9年前に新規就農した栗本めぐみ委員は、地域では200人いた生産者が150人を下回る状況だといい、「人口減少より農業者減少のほうが早いのではないか」と国内需要に対応できる生産力の維持が懸念されると指摘した。また、輸出や6次産業化を進めるなかで、農産物が利益を生み出すための「ただのモノ」として扱われ、「農業なき経済になってしまうのではないか」との表現で、生産現場の不安を述べた。
日本農業法人協会副会長の近藤一海委員は「輸出の余力があるのか。生産人口が減少していくなど、農業の厳しい現状も国民に伝える必要がある」と強調した。また、千葉県の柏染谷農場代表の染谷茂委員も「国内で消費するものを国内で生産できるか心配。質だけではなく量の安全も重要。農業の理解者を増やす努力が大事」と述べた。
JA全中会長の中家徹委員はカロリーベース自給率が38%台に落ちたことに「非常に危機感を持っている」と述べ、「担い手は育っているが生産基盤は弱体化しているのではないか。(カロリーベース自給率)45%に向けてどうしていくのか、(白書は)もっとスペースを割くべき」と訴えた。また、産業生産と地域政策は「車の両輪」といいながらも「農村は疲弊が進んでいる気がしてならない。農村、集落をどうするのかという視点も必要」と指摘した。
これらの意見に対して農水省は「担い手が減少している一方、担い手が育ってもいる。同時並行的に起きていること点に着目していきたい」などと回答し、3月に予定されている次回企画部会では白書の概要、本文案を示す方針を示した。
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