多様な担い手視野に 生消研がシンポ2018年3月19日
・必要な人材は自力で
人手不足が深刻になるなか、農業・農村の人材をどのように確保するか-。このテーマで食糧の生産と消費を結ぶ研究会(松本和広会長)は、3月17日、東京都内でシンポジウムを開いた。中山間地域の人材確保と、農業生産の現場での労働力不足における問題点が浮き彫りになった。
中山間地域の現状については、群馬県高崎市倉渕町の「くらぶちの会」・代表の佐藤茂氏が、新規就農支援で報告した。倉渕町は人口約3500で高齢化率は約45%。農産物販売農家が200戸を切り、農業就業人口も大幅に減少している。佐藤さんは地区の、有機野菜の出荷グループをつくり、「らでぃっしゅぼーや」や「大地を守る会」、生協などとの取引を始めた。
そこで問題になったのは野菜を栽培する農家の不足。農外に人を求めるしかないと判断し、町がクラインガルテンの事業を始めたのを契機に新規参入者の受け入れを始めた。群馬県の農場公開事業に参加するなど、参入を呼びかけるとともに、「草の会」のベテラン生産者が研修を引き受け、農地・住居の斡旋など受け入れ体制を整えた。
現在、「草の会」の会員のうち40戸が新規就農者で、年間2億円前後の売り上げがある。会員以外も含め、新規参入は40組以上に達している。とくに「草の会」の会員による1年間の研修で野菜づくりを教え、人材(農業者)を育てているところに定着のポイントがある。「今後も新規就農者を受け入れ、地域をまもっていきたい」と、佐藤さんの最終目標は地域社会を維持することにある。
一方、さまざまな研修プログラムをつくり、「地方志向者」をサポートする活動を展開している「にいがたイナカレッジ」を、Iターン留学にいがたイナカレッジの金子知也氏が紹介。中越大震災復興基金などを原資とするインターンシップで、学生や社会人を対象に、短期・長期のIターン留学を行う。修了者は就農して担い手になったり、古民家カフェを開いたり、季節仕事を組み合わせた「イナカフリーランス」になったりとさまざま。
こうした定住者は、長期(1年)インターン修了者21人の中で18人(85.7%)に達するという。金子氏は「最初に定住ありきではなく、人・コミュニティ・暮らしに共感を得て移住してもらうようにすることが大事」と指摘した。
農業経営における人手不足に関しては奈良県宇陀市の有限会社山口農園と、千葉県多古町の農事組合法人多古町旬の味産直センターが、現状と対策を報告した。約10haのハウスで有機野菜を生産する山口農園は、将来の会社幹部育成、あるいは新規独立を支援するアグリスクール(農業職業訓練学校)を運営。また将来、東南アジアで現地法人を立ち上げることを視野に海外実習生を受け入れている。
(写真)人材育成で意見交換する参加者
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