水田域の豪雨被害リスクの評価手法を開発 農研機構2018年7月11日
農研機構(久間和生理事長)はこのほど、水田中心地域(水田域)などで将来起こり得るさまざまな豪雨パターン(雨量と降り方の組み合わせ)のシミュレーション手法を開発するとともに、その豪雨パターンにより、未経験の水田冠水を含む被害を予測し、水稲減収のリスクを評価する手法を新たに開発した。
(写真)2015年9月に発生した茨城県・小貝川付近で発生した内水(水田)氾濫と
被害を受けた水稲の様子
2015年の鬼怒川決壊や17年の九州北部豪雨、さらには今回の平成30年7月豪雨のように、豪雨水害はさまざまな地域で発生し、それは農業分野にも大きな被害をもたらす。わが国農業の根幹ともいえる水田では、年間平均43万haの水害が発生し、多い年では減収などによる被害金額が数十億円にも達するなど、豪雨による冠水被害が主な減収要因の一つとなっている。今後も気候変動により、豪雨のリスクは増大すると見込まれいる。
水田の冠水被害を低減するには、早めの排水が効果的であるため、将来のリスクに応じた規模の排水施設の整備や排水計画の策定が重要となる。しかし、将来の気候を正確に予測することは困難であることから、精度の良いリスク予測と、それにもとづいた適切な対策をとることも難しいのが現状だ。
そこで農研機構は、現在や将来、特定の地域で発生し得る豪雨の強度と発生頻度を推定する方法の開発と、その結果を用いて対象となる水田域の冠水被害を予測し、さらにその結果を水稲減収の量(t)や割合(%)でわかりやすく評価する方法の開発した。複数の気候変動の予測結果をもとに統計的な検討を加えることで、その水田域で起こり得る平均的な被害や最大規模の被害を定量的に推定する。
たとえば、石川県加賀三湖地区(低平部の水田面積、約4000ha)の場合だと、最大規模の被害量は現在の2381tに対しても21世紀末には3047tと、現在の1.28倍になると予測する。
農研機構の説明によればこの手法は全国の水田域に適用できるので、農地排水や農村防災に関わる行政部局や民間コンサルタント、土地改良区などが将来的にも安全性の高い排水計画を検討する上でも役立つという。また、特定の地域で豪雨の強度と発生頻度を予測できるため、水稲被害リスクの推定だけでなく、農地浸水ハザードマップの作成などにも役立つとしている。
(関連記事)
・ため池決壊7か所 1名死亡-西日本の豪雨(18.07.09)
・ため池が下流の被害軽減に貢献 農研機構(17.08.03)
・耐震不足ため池2400超-農水省の点検結果(16.09.05)
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】水稲の斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 山口県2025年7月8日
-
なぜ米がないのか? なぜ誰も怒らないのか? 令和の米騒動を考える2025年7月8日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【立憲民主党】「食農支払」で農地と農業者を守る 野田佳彦代表2025年7月8日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【自由民主党】別枠予算で農業を成長産業に 宮下一郎総合農林政策調査会長2025年7月8日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【日本共産党】価格保障・所得補償で家族農業守る 田村貴昭衆議院議員2025年7月8日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【れいわ新選組】農業予算倍増で所得補償・備蓄増を やはた愛議員2025年7月8日
-
【第46回農協人文化賞】集落と農地 地域の要 営農事業部門・広島市農協組合長、広島県農協中央会会長 吉川清二氏2025年7月8日
-
【第46回農協人文化賞】若者を育てる農協に 営農事業部門・北海道農協中央会前会長、常呂町農協前会長 小野寺俊幸氏2025年7月8日
-
小泉農相 随契米放出に「政策効果」 市場落ち着けば備蓄水準戻す2025年7月8日
-
トランプ政権の移民摘発 収穫できず腐る野菜「農家に大きな打撃」2025年7月8日
-
【第46回農協人文化賞】常に農協、農家のため 営農事業部門・全農鳥取県本部上席主管 尾崎博章氏2025年7月8日
-
150年間受渡し不履行がなかった堂島米市場【熊野孝文・米マーケット情報】2025年7月8日
-
2025参院選・各党の農政公約まとめ2025年7月8日
-
米価 6週連続低下 3600円台に2025年7月8日
-
【JA人事】JA秋田しんせい(秋田県)佐藤茂良組合長を再任(6月27日)2025年7月8日
-
【JA人事】JA北九(福岡県) 新組合長に織田孝文氏(6月27日)2025年7月8日
-
【JA人事】JAかながわ西湘(神奈川県)天野信一組合長を再任(6月26日)2025年7月8日
-
【JA人事】JAえひめ中央(愛媛県)新理事長に武市佳久氏(6月24日)2025年7月8日
-
宇都宮市に刈払機を寄贈 みずほの自然の森公園へ感謝と地域貢献の一環 JA全農とちぎ2025年7月8日
-
岡山の農業を楽しく学ぶ 夏休み特別企画「食の学校2025」 JA全農おかやま2025年7月8日