野生イノシシ2頭から豚コレラ 侵入防止徹底を-農水省2018年9月19日
農林水産省は9月18日、岐阜県内のイノシシ2頭から家畜伝染病から豚コレラの感染が確認されたことを受け、農林水産省豚コレラ防疫対策本部を開催し、野生動物の農場への侵入防止など、飼養衛生管理基準の遵守に関する指導を徹底することなどを9日に決定した対応方針に追加した。
豚コレラの患畜は9月9日に岐阜県岐阜市の養豚農場で発生が確認された。同農場では繁殖79頭と肥育531頭の計610頭を飼養していた。10日に全飼養豚の殺処分と埋却が完了し、11日には農場内の消毒も実施済みとなった。
農水省は発生農場と同じと畜場と共同たい肥場を利用していた13関連農場を監視し疫学調査を継続しているが、9月18日10時現在で異状は確認されていない。
一方、14日には同県で死亡した野生イノシシから豚コレラウイルスが確認された。そのため農水省は岐阜県をはじめ全国の都道府県を通じて、消毒の徹底や野生イノシシの侵入防止など、飼養衛生管理基準を遵守徹底するよう農家に指導している。
また、岐阜県では発生農場と共同たい肥場の周辺10km圏内の死亡した野生イノシシと捕獲した野生イノシシを感染確認検査を重点的に実施することにした。全国でも、死亡した野生イノシシについての豚コレラ検査の実施を要請している。これまでに岐阜県以外で5件の死亡イノシシが検査されているが異状は見つかっていない。
こうした取り組みのなか、岐阜県で16日に2例目の野生イノシシの陽性が確認された。これを受けて追加した対応方針は▽発生農場と関連のある13農場の監視と野生動物の感染確認検査の徹底、▽農場の消毒と野生動物の農場への侵入防止等、飼養衛生管理基準の遵守についての指導徹底、▽感染経路などの究明とまん延防止のため、あらゆる可能性を想定した調査の3項目。 農水省によると、これまでに岐阜県では17日までに野生イノシシ34頭を捕獲するとともに4頭の死体を発見した。計38頭を検査しており、そのうち死体として発見された2頭からウイルスが確認されたという。
農林水産省は17日に岐阜県での野生イノシシ感染状況調査の考え方を示した。
◆捕獲は罠に限定
それによると野生イノシシの生息圏は通常2~3km四方とそれほど広くないとされており、豚コレラに感染したイノシシがいれば、その生息域内にとどめておくことが第1だとしている。そのため狩猟などで威嚇し、生息圏外へ追い出して豚コレラの拡大を招かないようにしなければならない。
農水省はこうしたことから、野生イノシシでアフリカ豚コレラが発生している欧州の専門家の意見や、アフリカ豚コレラに関するFAO(国連食料農業機関)や国内の専門家の意見をふまえ、野生イノシシを刺激しないように、捕獲は箱罠やくくり罠などで行うことにした。
検査は発生農場と共同たい肥場の周囲半径10kmの区域を優先調査区域とし、それ以外の地域でもイノシシが死体または捕獲で検体が得られた場合、優先調査区域へ直線距離が近い検体から検査を実施していく。
検査は岐阜県と国の動物検疫所で行うが、すでに岐阜県では野生イノシシに豚コレラが浸潤していることは明らかなため、県の検査段階で陽性となれば豚コレラ陽性とする 豚コレラは豚コレラウイルスが原因で豚とイノシシに感染する。急性、亜急性、慢性型など病態は多様で急性では高熱、食欲不振、元気消失などの症状を示し短期間で死亡する。人には感染しない。また、食品安全委員会によると仮に豚コレラにかかった豚やイノシシの肉を食べても人体に影響はないとしている。
わが国では平成4年の熊本県での発生が最終発生。19年4月に清浄国として認定されている。豚コレラに有効なワクチンがある。
◆アフリカ豚コレラも警戒
一方、アフリカと欧州に分布し、今年8月に中国に侵入したアフリカ豚コレラは今回発生した豚コレラとはまったく別のウイルスによる感染症だ。豚とイノシシが感染しダニによって媒介されることもある。人には感染しない。症状は豚コレラに酷似しているが病原性はより強い。
豚やイノシシの移動だけではなく肉や加工品による感染拡大が問題とされている。ワクチンや治療法はない。農水省は中国で発生していることをふまえ、▽水際での防疫、▽発生地域への旅行者への周知することにしている。
(関連記事)
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