【インタビュー】ICAグアルコ会長「よりよい世界の構築へ 喜び持ち活動を」2019年8月2日
国際協同組合同盟(ICA)のアリエル・グアルコ会長が来日し7月31日にJA全中の中家徹会長を表敬訪問するともに、日本のICA会員13団体の代表と懇談やJA、生協などを訪問した。期間中、本紙のインタビューに応じたグアルコ会長は協同組合で働く人々に対して「よりよい世界に構築に貢献しているという喜びをもって活動してほしい」とメッセージを送っている。
--ICA会長として、今の世界の協同組合の現状と課題をどう考えていますか。
私は非常に楽観的な人間で協同組合についても楽観的です。もちろんそれはきちんとした根拠があってのことです。単なる夢見るユートピアを考えているわけではありません。
実際、世界の協同組合の組合員は12億人にのぼっており、その組合員は300万の協同組合に加盟しています。また、協同組合によって2億8000万人の雇用を生み出しており、全世界の就労人口の10%を占めます。これは先進国グループとされているG20の国々の企業が雇用する人々の8倍にあたります。
協同組合の課題は人類がいま直面している問題と同じです。つまり、現在の経済モデルによって富が偏って集中していると問題です。富の分配が非常に不均衡になっています。しかし、そのなかで協同組合は1つの経済モデルとして人間を基本に置き、民主的な方法で富の分配についても決定を下すことができるモデルです。その意味で誰も置き去りにしないという国連のSDGsの目標も実現できると考えています。
--日本のICA会員団体との懇談などを通じて日本の協同組合をどう思われましたか。
非常にポジティブでいい印象を持ちました。とくに日本では協同組合連携機構というものができたということですから、各協同組合間の連携が図られるようになると考えています。そこに参加しているメンバーがともに働き経験や知識を交流していくことに期待しますし、それをもとにしたビジネスが出てくると思います。
もうひとつ印象に残ったのは、それぞれの組織が責任あるかたちで会員の人々のニーズを十分に認識したうえでいろいろな活動を行っているということです。非常に素晴しい協同組合活動をしており、ICAとしても世界の協同組合が日本の協同組合と連携できればと思っています。
--総合事業を展開している日本の農協の意義や取り組むべき課題についてはどう考えますか。
日本の農協は農業者に対して総合的にいろいろな種類のソリューションを提供していると思います。これは地元の発展、そこに住む人々の環境の維持に役立っていると思いますし、それによって農村に住む人々が都市に住む人々と同じような可能性を見出せるチャンスを提供しているのだと思います。
課題はやはり技術革新への対応ではないでしょうか。技術によるさまざまな変革が起こっていますが、これについても基本となる協同組合の原則を失うべきではないと思います。たとえば、高い技術力を持っている人だけがよりよい条件になるというための技術革新であってはならないし、あるいは技術革新によって人間の労働条件が悪化するということがあってはならないと思います。
それから食料主権も大きな課題だと思います。地球上の人口は現在は70億人が将来は100億人になるといわれていますが、現在の70億人でも多くの人が飢餓状態にあります。これは十分な食料を提供できる力がないということではなく、分配の不均衡が飢餓の問題を起こしているといえます。
一方で食料をむだにするロスの問題もあります。つまり、食料が余っているところと、非常に足りないところが出てきているのが現状であり、それをなくすため生産者から消費者に届く食料品の分配チャネルの整備が重要になってくると思います。それによって品質の高い安全な食料をみんなが手が届く価格で届けることができると思います。
--ICAの当面の活動と、協同組合で働く人々にメッセージをお願いします。
2020年から30年までの協同組合の次の10年に向けた戦略計画を理事会で検討しており、今年10月にルワンダで開かれる総会で発表する予定です。そして来年はICA創立125周年を迎え韓国・ソウルで総会を開きます。
メッセージですが、今後も今までのように力強い、より責任ある活動を継続していただければと思います。また、ぜひ楽しく、喜びの感覚をもって行っていただければと思います。
なぜならその活動は全員の生活の質を向上させるものであり、ひいては社会全体、よりよい世界を構築することに資するからです。
私自身もこうした協同組合の活動をする一員であるということを認識しており、もちろん疲れるものでありますが、本当に幸福感を感じています。
(関連記事)
・日本の協同組合「力強い」-グアルコICA会長(19.07.31)
・【JCA週報】ICA世界協同組合モニター2018年版(和訳)を公開(19.07.29)
・「人間らしい仕事」を SDGsと目指すは同じ 国際協同組合デー記念集会(19.07.10)
重要な記事
最新の記事
-
たまねぎべと病 近畿、中国、四国で多発のおそれ 令和6年度病害虫発生予報第1号 農水省2024年4月18日
-
春メロン4億円の販売を目指す JAくま2024年4月18日
-
安全性検査をクリアの農業機械 農用トラクターなど1機種25型式を公表 農研機構2024年4月18日
-
JAグループのガソリンスタンドに急速充電器「DMM EV CHARGE」導入2024年4月18日
-
【スマート農業の風】(3)データ駆動型農業へ転換しよう2024年4月18日
-
入会牧野【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第287回2024年4月18日
-
チューリップ切り花が復活の兆し【花づくりの現場から 宇田明】第33回2024年4月18日
-
4月1日新事務所移転 緑の安全推進協会2024年4月18日
-
東京農大と共同研究 良食味米「コシヒカリ」で低糖質米を実現 栽培手法を確立 ジェイフロンティア2024年4月18日
-
Oisix「おいしくアップサイクル ふぞろいキウイチップス」など3種発売2024年4月18日
-
「飯縄山」からの伏流水で育つ米と玄米の直売市開催 長野県飯綱町2024年4月18日
-
「食品製造現場におけるロボット等導入及び運用時の衛生管理ガイドライン」を策定 農水省2024年4月18日
-
「みどりの食料システム法に基づく基盤確立事業」実施計画認定を取得 アイアグリ2024年4月18日
-
微粉砕加工で機能性を付与 北海道産小麦粉「CRONOS」発売 小田象製粉2024年4月18日
-
発色が早いわい性ハボタン「ローブ ホワイト」種子発売 サカタのタネ2024年4月18日
-
日本の原風景「棚田」の魅力を1枚に「棚田カード」第4弾を発行 農水省2024年4月18日
-
鳥インフル ブルガリアからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年4月18日
-
次世代へ繋がる循環型酪農・林業へ 三井住友フィナンシャルグループと協業 ホウライ2024年4月18日
-
国内最大級のドローン専門展示会「第9回JapanDrone2024」6月5日から開催2024年4月18日
-
吉田羊が情感たっぷりに 新CM「すごいよ パウダールウ」篇 エスビー食品2024年4月18日