輸入頼みで農業弱体 農地不足なのに放棄地増 基本法検証部会2022年10月21日
食料・農業・農村審議会の第1回基本法検証部会が10月18日に開かれ現行基本法の検証作業が始まった。
基本法検証部会の初会合
この日は「食料の輸入リスク」をテーマに有識者からのヒアリングと農水省からの論点提示が行われた。
丸紅の寺川彰代表取締役副社長は、穀物輸入における中国のシェア増大や、わが国の物流効率化の遅れ、肥料原料とともに牛肉の輸入も難しくなっている世界情勢などを指摘した。
農林中金総研の平澤明彦執行役員基礎研究部長は「輸入自由化とともに国内生産基盤の脆弱化が進んでいることが大きな問題」と指摘した。日本の基礎的な条件は農地の少なさ。人口1億人以上の国では世界でもっとも1人当たり耕地が少なく、現在の食生活には3倍の農地が必要で輸入は不可避だ。しかし、安価の輸入品で国内農業が打撃を受け、農地不足にも関わらず耕作放棄地が発生している。こうした現状では輸入が不足した場合に頼るべき生産基盤もないことになる。今後は人口が減少し国内需要が減少する見込みだが、そのなかでさらに輸入が拡大すれば「国内生産の縮小に直結する可能性」があると平澤氏は指摘し、土地利用型農業の立て直しと、自給力指標の向上のためのマクロの施策が必要だと強調した。
農林水産省は、食料のみならず生産資材の輸入リスクも考える必要があるとして、輸入に依存する食料の国産化と肥料についてたい肥などの国内資源の有効活用と、輸入の安定に関する施策を検討する必要があるのではないかと提起した。
委員の中家徹JA全中会長は「輸入が増大し生産基盤が弱体化しているのは基本法に反しているのではないか」と指摘した。現行基本法では「国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせ」ることと規定しているからだ(第二条2項)。
輸入に頼ることで生産基盤の弱体化を招くいう負のスパイラルに陥っているとの指摘だ。そのうえでかつて違って世界で食の争奪戦が起きていることを前提とし、さらに「フードマイレージの観点」からも輸入を減らし可能な限り国内で生産する必要があると強調した。
齋藤一志日本農業法人協会副会長は「農地は足りないのに耕作放棄地が出てくるのはなぜか。作っても売れないから」と20年前とくらべて機械代は4倍になったのに米価は半分になったと「瀬戸際」と現状を話す。耕作放棄地で麦作を始めたといい、「本当に必要なものを作ることに補助し生産を刺激する政策が必要。若い人を育成することもできるはず」と話した。
耕作放棄地の解消が重要との指摘は多くの委員から出て、農地再生のためにも直接支払いも含めた支援や、バイオ燃料用の作物生産も検討すべきとの意見もあった。また、農村や生産者の現状について「消費者が実情を知るべき」で「社会的に議論することが大事」との意見も相次いだ。そのため自給率を上げた諸外国の農業基本法などの紹介や、農産物価格のあり方についても議論すべきという意見もあった。
基本法検証部会は月に2回程度のペースで開催し年内は有識者ヒアリングと施策の検証などを行う。年明けからは基本法見直しに向けた議論をする。次回は「国内市場の将来展望と輸出の役割」をテーマに有識者ヒアリングと意見交換を行う。
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