輸入依存からの脱却 食料安保政策大綱を決定 政府2022年12月28日
政府は12月27日、第3回食料安定供給・農林水産業基盤強化本部を食料安全保障強化政策大綱を決定した。
食料安定供給・農林水産業基盤強化本部に出席した岸田首相(官邸HPより)
大綱は食料安全保障の強化のために必要な対策と目標を示した。
重点対策は、農林水産物とともに生産資材も過度に輸入に依存する構造を改め、生産資材の国内代替転換や備蓄、輸入原材料の国産転換、麦、大豆など輸入依存度の高い作物の生産拡大を図る。
生産資材のうち肥料については、堆肥や下水汚泥資源の肥料利用の拡大、堆肥の広域流通、肥料原料の備蓄などを行う。
輸入原料に依存している化学肥料の低減は、環境負荷を低減し持続可能な生産への転換を実現することになることから、みどり戦略で掲げた目標である2030年までに化学肥料使用量の▲20%をこの大綱でも目標とした。
また、新たな目標として2030年までに堆肥・下水汚泥資源の使用量を倍増し肥料使用量(リンベース)に占める国内資源の利用割合を40%まで拡大する。
農水省によると輸入を含めたリンベースの全使用量は2021年で28.5万tで、このうち堆肥や下水汚泥、大豆油粕など国内資源は7.2万tで25%となっている。今後は化学肥料の使用量減と堆肥や下水汚泥の使用量を10万tまで増やすことで利用割合を40%とする。
飼料については稲作農家と畜産農家の耕畜連携の支援などで国産飼料の供給と利用拡大を促進する。飼料作物は生産面積を88.5万haから117万haへと32%拡大する。
その他、みどり戦略で掲げた目標や現行基本計画の生産努力目標を大綱の目標としても掲げた。
【おもな目標】
〇2030年までに化学肥料の使用量の低減 ▲20%
〇2030年までに堆肥・下水汚泥資源の使用量を倍増し肥料の使用量(リンベース)に占める国内資源の利用割合を40%まで拡大(2021年:25%)
〇2030年までに有機農業の取組面積 6.3万haに拡大(2020年:2.5万ha)
〇2030年までに農林水産分野の温室効果ガスの排出削減・吸収量 ▲3.5%
〇2030年までに飼料作物の生産面積拡大 +32%
輸入原材料の国産転換では、水田を畑地化し、麦・大豆の本作化を促進する。また、輸入小麦に代わって、国内生産が可能な米粉の生産・利用の拡大を支援するほか、食品事業者の国産原材料への切り替えを促す。
【おもな目標】
2030年までに2021比で生産面積を拡大
〇小麦+9%(22万ha→24万ha)
〇大豆+16%(14.6万ha→17.0万ha)
〇飼料作物+32%(88.5万ha→117万ha)
〇米粉用米+188%(0.8万ha→2.3万ha)
また、資材価格高騰により影響を受ける農林漁業者に対し日本政策金融公庫による資金繰り支援などを講じるほか、適正な価格形成に向けて、生産・流通コストを価格に反映しやすくするための「環境の整備を図る」ことも記した。そのために国民理解醸成に向けた情報発信と、食品ロス削減とフードバンクへの支援なども盛り込んだ。
【目標】
〇2030年度までに事業系食品ロスを2000年度比で半減(273万t)
食料安全保障強化のための財源については、構造改革を進めるものとして一時的には歳出の増加を招くとして、財政負担とのバランスを考慮したうえで「毎年の予算編成過程で食料安定供給・農林水産業基盤強化本部が責任を持って確保する」と明記した。
また、大綱と基本法見直しに向けた検討との関係については、現在進められている基本法をめぐる検討結果をふまえ、必要に応じて大綱の見直しを行っていくと位置づけている。
大綱が掲げた過度な輸入依存からの脱却に向けた構造改革について野村農相は「今までのように金さえあれば輸入する、ということではなく、可能な限り日本のなかでは使えるものは使おうという構造転換」と話し「関係省庁一体となって政策展開を力強く進めたい」と述べた。
また、基本法の見直しについて岸田総理が、来年6月をめどに食料・農業・農村政策の新たな展開方向をとりまとめるよう指示したことを受けて「大方のかたちとして6月中にとりまとめたい。本まとめになるのか、中間取りまとめになるかはまだ予測がつかない」と話した。
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